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257.出ないもんは出ない

 今日は待ちに待った新弾パック発売日!

 新テーマ登場に加えて、既存テーマも強化されるぞ!

 緑文明と青文明による自然の驚異を体感せよ!


「最後の1枚が出ません」


 カードショップの机の前で、頭を抱えていた。

 嘘やん中々無いレベルの不運だぞおい。


 開店前、新弾カードのシングル販売の為にパック開封をしている最中。

 最後の1種が24箱開けても出て来ないのだ。


「おかしいだろ! 確かに一番確率が低いシークレット仕様のカードとはいえ、何で24箱開けて1枚も出ないんだよ!」


 このままでは品揃えの悪いカドショの烙印を押されてしまう。

 チョキチョキと無言でハサミを動かし、パック開封を手伝うインペリアルガード。

 アルトリウスやダンタリオンも開封作業を手伝ってくれているが、俺含めて誰も出ない。


「裁断したやつ持ってきましょうか?」

「それは、違うだろ」


 マティアスの提案を一刀両断、拒否する。


「いいか、カードショップは卸される側で卸す側じゃない。裁断直後のカードそのものを手に入れたら、それはカードショップじゃなくて企業側だろ」


 カードの精巧なコピーを印刷する機械を後ろで動かしてるから、確かに印刷しようと思えば出来る。

 だがカードショップは、開封されたパックから出て来たカードを取り扱うモノだ。

 直で印刷機から出て来たカードを店頭に並べるのは、違うだろ。


「どう考えても、無駄ですね」

「何故中身が分からない状態に梱包して、改めて開けるのか。やっぱり主人(マスター)って突然非合理的になるよね、普段は効率重視の塊みたいな行動するのに」


 またアルトリウスとダンタリオンがマジレスで突き刺して来る。

 だが、コレだけは譲れない。


「それはそれとして、俺もパック開封するか」


 発売日前日、開店前にパック開封。

 こればっかりは経営者(カードショップ)側に立ってる奴だけの特権だな。

 この日の為に5箱分のポイントを貯めておいたのだ。

 これでバッチリカードを揃えてヘンリエッタにリベンジだ!!


「目当てのカードだけ出ません」


 ばっ、馬鹿な!

 5箱だぞ!? 5箱も開けたんだぞ!?

 今回の目玉、トップレアは4枚全部揃ったのに、デッキのキーパーツとなる部分だけ(・・)引けてない!


「そのカードならここにあるじゃないですか」

「それは店頭に並べる用のカードだから駄目です」


 ダンタリオンがそこから取れば良いと、開封済みカードの山を指差しながら言う。

 店売りのカードと、俺個人が運用するカードは別なんです。

 それを混ぜたら、公平(フェア)じゃない。


「また旦那様(マスター)が非合理的な事を……」


 アルトリウスが何か言っとりますが、それはそれ、これはこれ。

 カード資産の条件をイーブンにしなきゃ、やりくりしてデッキ構築する楽しみが無くなるでしょ。


 しかし、キーパーツ欠損してたらそもそも新デッキが組めないじゃないか。

 でもパックを買う為のポイントはもう無い、その事実はもう覆しようが無い。

 ……何か理由を付けて、全員にポイント支給するか?

 俺だけ有利になるのが駄目なんだ、だったら全員にポイント配分すればイーブンってやつだ。

 そうだ、新パック発売記念で全員に1ボックス分のポイントプレゼント! みたいな感じで。

 大会開催記念……は、流石に前の大会から期間開き過ぎてて不自然か。

 しかし今までパック発売を理由にポイント配布なんてしてないし、これも結局不自然だし……

 だけどこのままじゃポイントが足りない……!

 何か、俺がパックを開けられる理由があれば――!!



 ――良いじゃあありませんか、ポイント配布、ババーンとやっちゃいましょうよ。



 いやいや、だって急にポイント配布したらおかしいとか思われるじゃん。


「グフフ! 何を躊躇(ためら)う必要があるのですか! 配布したいのであらばすれば良いじゃありませんか! 何故欲望を否定する必要があるのですか? 欲とは人の活力そのものじゃありませんか!」


 そう耳元で、持論を述べられながら、肩をポンと叩かれた。

 後ろを振り向くと、そこには異形の姿。

 目は細く、鼻は潰れ、肌にはいくつもの出来物が浮かぶ、美形とは言えぬ顔立ち。

 口元からは人とは思えぬ牙が2本、下唇部分から突き出しており、肌は緑色。

 シルエットこそ人型で、人の言葉を話してはいるが、その見た目は……ゴブリンやオークと呼ばれるような、異形の種族。

 首や手首には金銀宝石で作られた高そうなアクセサリーがぶら下がっており、少し動く度にジャラジャラと音を立てる。

 身に着けた衣服も、成金趣味が溢れる、趣味の悪い服装ではあるが、金が掛かっている事だけは分かるような、豪華な装束で全身を覆っている。


「欲しいなら! 手に入れる! そうあるべきではありませんかご友人(マスター)!」

「うわっ、グリードじゃん。戻って来なくて良いのに」


 露骨に嫌そうな表情を浮かべながら、吐き捨てるダンタリオン。


 強欲の化身 グリード。

 七つの大罪の一つ、『貪欲』を司る存在であり、その効果は豪快にして強烈。

 強欲の名の通り、欲望を隠しもしない効果をこれでもかと詰め込んだ性能をしている。

 だが、欲望は身を滅ぼすとも言いますよね。


「グホホ! 相変わらず見目麗しい女性達だ! どうだね、ワガハイの女になる気にはなったかね?」


 アルトリウス達に向けて、ネットリとした目線を送るグリード。

 欲望の体現者とでも言うべき存在だけあり、見目麗しい異性に対しても、その溢れる欲望を隠しもしない。


「失せろゴブリン風情が」

「男は主人(マスター)で間に合ってるのよ」

「わたくしめが仕える相手は、御主人様(マスター)のみですので」

「グフフ、相変わらず手厳しい事だ。気が変わったら何時でも言うと良いぞ」


 速攻でお祈りメールを出されるが、全くめげる様子の無いグリード。


 ……強欲、強欲かあ。

 そうかそうか、やっぱこの発想は強欲なんですね。

 過ぎた欲望は、よろしくないですよねえ。





「あれ? 店長さん、パック開けないんですか? あんなにポイント貯めてたのに」

「サンドラさん。人にはね、触れてはいけない痛みがあるんですよ?」


 翌日。

 爆死を察したサンドラから憐みの目線を送られた。

 ちくしょう。


「お、早速シークレット(シク)レアが出た。でも緑文明は私のデッキだと使わないんだよねー」


 それ!!!

 欲しかったやつ!!!

 ちくしょう!!!

「それ……交換して下さい……」

「いいよー」


 わーい!

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― 新着の感想 ―
ええ。 狙ってるカードって、出ないですよね……。 そして、トレードはカードゲームの醍醐味の一つでもありますよね。
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