体でかい友達
「あー、えっと。
取り敢えず落ち着いて話しましょう?」
「お、落ち着いてられるか!
なんださっきの壁は!?
なんで化け物が言葉を発する!?」
「化け物、頑張って。」
そう言って化け物らしい巨人族のプレイヤーに丸投げする。
「化け物かあ。」
そう言って遠い目をする巨人さん。
まあ、多分大丈夫だろ。
さっきは急だったもんな。
一拍空いた今ならちゃんと会話もできるだろう。
少なくとも問答無用で銃殺は免れたようだ。
この問題は巨人さんに任せるとして、僕はメニューバーを広げる。
その中の機能の一つ、チャットを開く。
これはy.pの世界にいるプレイヤーが自由に見ることのできる掲示板で、一人が複数のプレイヤーに情報を発する際に使うものである。
現実世界で使えるのかどうかわからないが、やらないよりはましだろうと、チャットに書き込む。
《人外の見た目をしたプレイヤーへ。》
【ノンプレイヤーの人々はモンスターに対する警戒心が強いため、人間の見た目を大きくかけ離れたプレイヤーは姿を隠してください。
それ以外の比較的まともな見た目のプレイヤーはノンプレイヤーとの接触を図り、事態の収拾、情報の伝達
につとめてください。
ノンプレイヤーへの情報伝達が済んだ際追記します。
追記を待ってノンプレイヤーとの接触を図ってください。】
1、把握
2、了解です。
3、おk
4、おk
5、了解しました。
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・
・
どうやらチャット機能はうまく作動するらしい。
書き込んだ瞬間に返信が結構きた。
僕と同じ考えの人間もいるらしく、同じような掲示板が複数建てられている。
人間同士で殺し合うなんてことにならなければいいのだが。
「で?
どう?」
「一応納得はしてくれたみたい。
すっげえ警戒されてるけど。」
そう言って苦笑いする巨人さん。
指差す先には未だに銃を構えた自衛隊員。
これはしばらくこのままかもしれない。
「それはそうと、あんたランカーのドルフさんじゃない?」
「ん?
ああ、そうだけど。」
うん、僕のプレイヤーネームはドルフ。
ドワーフとエルフでドルフなんていう単純な名前である。
ランカーというのはy.pの世界に存在するランキング上位者のことで、上位20位までがランカーと呼ばれ称号を獲得できる。
レアな種族と職業に異常なプレイ時間が合わさって僕もランカーである。
因みに順位は八位だ。
「へー、やっぱすげえな。
『Mr.万能』の名は伊達じゃないな。」
「やめろよ。
恥ずかしい。」
ランカーにはいわゆる通り名と言われるものがつけられる。
非公式だが、みんな影で呼んでいるのだ。
他にも『孤独な錬金術師』だとか『孤高の狂人』だとか、もはやバカにされているようなものも存在する。
ぼっちを強調しないでくれ。
「いや、本当に助かった。
銃弾なんか食らったことねえけど、やばかったわ。」
その異常な筋肉なら案外傷一つ負わなかったかもなんて言葉は飲み込んだ。
「で、どうするって?」
「ああ、なんか上の人間に報告するってよ。
俺みたいなやつたくさん居るだろうから、早く広めたほうがいいって訴えたら結構すぐ動いてくれたよ。」
意外と立ち直りの早い自衛隊員だったようだ。
まあ、そうする他ないっていうのが大きいんだろうけど。
「どこまで話してどこまで聞いてくれた?」
「ああ、一応全部話したんだが、恐らくほとんど信用されてないだろうな。
俺が人間ってのも未だに飲み込めてないぜきっと。」
まあ、無理ないか。
ゲームでこうなったんですなんてな。
頭おかしいんじゃないかと思われるだけだ。
ギリギリ聞いてもらえたのは常識はずれな見た目と状況のお陰だろう。
「ね、ねえ?」
「ん?」
呼ばれて振り返ればさっき助けた女の子。
そういえば放置してた。
「あなたは敵なの?味方なの?」
おずおずと質問する彼女。
この状況で敵ですって言われたらどうするのか。
「味方だよ。
少なくともそっちが敵対しない限りはね。」
うん、お前らも化け物だなんて言われて黙って殺される気はない。
「そ、そうなんだ。」
ぎこちなく笑う彼女。
取り敢えず笑い返しておく。
「そう言えば自己紹介がまだだったな。
俺の名前はガノン。
見ての通り巨人族だ。
ファーストは拳闘士、セカンドはタンク。
よろしく。」
そう言って笑うガノン。
「ああ、僕はドルフ。
種族はハイエルフとドワーフのハーフ。
ファーストは錬金術師、セカンドは魔法闘士、サードは狂人。
って言っても知ってるかな?
よろしく。」
お互いに握手を交わす。
手の大きさが違いすぎて全然握手じゃないが、まあいいだろう。
世界がこうなってしまった以上、プレイヤーがソロプレイだなんて言ってられないだろう。
協力せねば。
巨人族のガノン。
歪で異常なこの世界の中で初めてできた友人との出会いの瞬間である。




