↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/10

現実と仮想の狭間で


目を覚ますと目の前には自分がいた。


「うあっ!」


そこにはヘッドギアを着けたまま横たわっている自分がいて、周りはゴミだらけ。


自分の体を確認してみればy.pでのキャラクターだった。


どうやら夢ではなかったらしい。


「きゃあああ!」


そんな叫び声が聞こえ、自分の体を確認するのをやめ窓から外を見る。


そこには煙の上がった家や、窓ガラスが散乱した道路、走り回る人型の何か、それに追われる女の子。


壮絶な外の景色に呆然としていた僕は、走っている女の子と目が合ってとりあえず考えるのをやめた。


僕の家はマンションの4階。


この体なら飛び降りても問題ないはず。


はずなのだが。


ゲームの体と現実の世界の歪なズレに恐怖心がジワリと滲む。


「あっ!」


そんな葛藤に苛まれていると、女の子が足を引っ掛け転んでしまった。


後ろから追っていた影は人型のファントム。


あれくらいなら僕にとっては敵じゃない。


敵じゃないのだけど。


「くそっ!」


女の子の縋るような目を見て窓から飛び降りる。



念のため浮遊の魔法を使って滑空する。



「お、おお!」


ゲームでは何度も体験したその感覚はこの世界ではもちろん初めてで、変な声を出してしまう。


そのままファントムに飛びかかる。


「寝とけ。」


綺麗にかかと落としを決めるとファントムは消失。


魔石をポップした。


しっかりと拾ってアイテムボックスへ。


うん、ゲーム内となんら変わらず使える。


ログアウトの操作だけできないで、それ以外は使用可能だ。


そんな考えを纏めながら振り向く。


「大丈夫?」


「す。」


「す?」


「すごい!」


そう言ってキラキラとした目で僕の手をブンブンと振る。


その顔を見てギョッとする。


さっきまで気づかなかったが、僕はこの子を知っている。


近くのコンビニバイトの子だ。


「い、いえ。」


僕はこの子が苦手だ。


僕が買い物に行くと決まって嫌な顔をする。


最初に会った時は可愛い子だなと思っていたのだけど、その態度を見て僕は。


「じゃ、じゃあ。」


「あ、あの!

お名前はなんて言うんですか!?

どうやったんですか!?」


舞い上がっているのか、こんな僕にも笑顔を振りまく彼女。


僕の顔を忘れたのだろうか。


あ、いや今は違うのか。


僕はy.pの姿なのか。


そりゃあんな冴えないやつとは思えないよな。


こんな見た目じゃ無理もない。


そうだ、僕のキャラクターの説明をしておこう。


僕はハイエルフとドワーフのハーフだ。


y.pの自由度は犬猿の仲とも言うべきドワーフとハイエルフのハーフすらも設定によって生み出すことができる。


y.pの中でも結構レアな種族になっている。


自由とは言ってもキャラクタークリエイト時に選べる種族は運で決まるのだが。


実際に確認された種族は数百にも及ぶが実際に僕自身キャラクタークリエイト時に選択できた種族は十数種類のみ。


その中でもハイエルフですら稀であるのにそのハーフしかもドワーフともなればそうそう存在しないだろう。


現に僕以外に見たことがない。


それもy.pのゲームシステムが要因となっており、ハーフという機能は存在はするのだが実際に使う人は少ない。


というのも、ハーフというものは成功すれば両方の種族の特性を得られるが、失敗してしまうと両方の種族の特性が消えてしまう。


つまり、博打である。


ハーフ機能もうまく使えばリスクを少なくできるのだが、僕の場合は真逆の特性を持った種族のハーフ。


片や魔法適性の高いハイエルフに片や器用な武人であるドワーフ。


ドワーフと巨人族、エルフと精霊なんていうハーフは少なくないのだが、僕のような大博打に出る人間もそうはいないだろう。


その中でも成功した人間はどれほどいるのだろうか。


普通の人であったなら、ハイエルフなんてレア種族があったなら真っ先にそれを選ぶだろう。


けど、僕はどうせゲームなのだからと思い切ってみたのである。


非常に優れた魔法適正に屈強な肉体と死角なしだ。


灰色の髪に筋肉質な細身の長身、尖った耳に白い肌。


こんな見た目日本に存在するだろうか。


まるで外国人だ。


いや、外国にもいるかどうか。


見た目はある程度自由に設定でき、なかなかの美形になっている。


年齢は900歳としており、y.pの世界のエルフ、それもハーフがどれだけ生きられるのかは知らないが無茶苦茶高く設定してみた。


これはただの僕の遊び心である。


これらの要因が合わさって、今の僕は結構名の知れたソロプレイヤーである。


現実世界でぼっちだった人間が現実と遜色ないゲーム内で友達ができるはずもなく、単独での行動が多い。


ドワーフの血のお陰で自分の武器や防具も自前である。


ファーストジョブは錬金術師。


セカンドジョブは魔法闘士。


サードジョブは狂人。


今のところ最大のジョブ数である。


全てレアなジョブであり、レアだから選んだ節がある。


サードジョブの狂人なんかはレアすぎて出現方法が未だに確定していない。


僕はログイン時間が関係しているんじゃないかと睨んでいるのだが。



「...一週間前から変なやつらが街をうろついていて、まともに外出もできないのに。」


ずっと僕に向かってなにやら話しかけていたその子の言葉に少しだけ耳を傾ける。


どうやらモンスターが現れ始めたのは一週間前らしい。


なんとか自衛隊が出動して市民の安全を確保しているのだとか。


人々は一箇所に集まって国からの支援を受けているらしいが、それもいつまで保つのか。


「そうだ!

ちょっとついてきて!」


そう言って僕の手を引っ張る彼女。


そのままされるがままついて行くこと数分。


地下に続く階段に差し掛かった。


「ここはね、特別避難所で地下にシェルターがあるの。

私たちはここで生活しているのよ。」


そう言って案内される。


階段の前には自衛隊なのだろう、銃を持った人間が五人周囲を警戒している。


銃でなんとかできるということはこの近くにはさほど強力なモンスターはいないのだろう。


そんなことをぼんやり考えていると、遠くの方から身の丈が四メートルほどある巨人が歩いてきた。


歩くたびにドシンドシンと地面が揺れる。


「あっ、あっ。」


僕の手を握っていた彼女は口を震わせその巨人を見つめる。


「早くシェルターへ避難を!」


そう言って僕たちの体を押す自衛隊員。


そのまま通信機器を手に取り応援を要請している。


うん?


どうしたんだろうか。


そのまま通信を切った自衛隊員はおもむろに巨人に向けて銃を構える。


って、おい。


「ま、まて!」


僕の言葉は間に合わず、一斉に射撃が巨人を襲った。


「ばかやろう!」


僕はそう叫んで自衛隊員と巨人の間に体を滑り込ませる。


「壁よ!」


地面から巨人を覆うほどの壁が生まれる。


銃弾なんかものともしない重厚な壁である。


その様子に銃を撃っていた彼らの手が止まり、口をあんぐり開けて固まる。


「な、な、な。」


「落ち着いてください。」


取り敢えず正気に戻るのを待つ。


「ば、化け物を庇うってことはあんたもあいつの味方か!?」


ああ、確かに化け物っちゃ化け物か。


これはややこしいぞ。


「おい、化け物さんよ。

頑張って誤解を解いてやれ。」


僕はその化け物に語りかける。


「お、おお。

そうか、俺は化け物か。

ちょっとショックだな。」


そう言って本当に落ち込む巨人。


「ば、化け物が言葉を喋った!?」


そんな驚きの叫び声に僕は頭を抱えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。