道化は何想う
なんて言ったのかいまいち飲み込めず、次の言葉にみんな耳を傾ける。
みんな異常な事態の説明が欲しいのだろう。
《いまこの空間にはy.pのプレイヤー全員がいます。》
見渡す。
確かにそれぐらい大量の人々がいる。
一概に嘘とは言えないだろう。
《全員がログインしたため、私があなた達に状況を説明してあげているのです。
あんだすたん?》
そう言っておどけるピエロ。
遠くの方で罵声が聞こえる。
早く説明しろ。
《そして、そのためにこの世界の時間を少し弄らせてもらいました。》
一斉に罵声が飛ぶ。
ふざけるなとか、いいから早く家に返せとか。
僕はそれもまたいいなとか場違いなことを考えていた。
僕以外にもそういう人はいるだろう。
証拠に笑っている人や、異常に落ち着いている人がちらほら見受けられる。
《しゃあらっっっぷ!》
大きな声でピエロは口にばつ印を作りながら怒鳴る。
わあわあ言っていた人々が一斉に黙る。
うん、すごく怖かった。
《がやがやとうるさい人たちですね。
いいですか?
とりあえずあなた方の肉体はしんでいるんです。》
もう誰も叫ぶ人はいない。
先ほどのピエロの叫びが堪えたのだろう。
確かに怖かったもの。
いや、意味のわからない言い分に呆れて何も言えないだけかもしれないが。
《しかし、そのまま死んでしまうのももったいないでしょう?
なので私から皆さんにプレゼントです。》
なんだなんだとざわつく人々。
正直展開が急過ぎてついていけない。
《あなた方の肉体としてこの世界のキャラクターを使わせて差し上げましょう。
うん、私ってば天才。》
そう言って満足気に頷くピエロ。
意味がわからない。
《ああ、私としたことが申し訳ない。
説明が急でしたね。》
そう言って頭を下げるピエロ。
もう何を言っても無駄だとばかりに黙る人々。
《アンケートを取ったのです。
あなた方のいる世界が必要かどうか、と。》
どきりと心臓が脈打った。
何か大変なことをしてしまったような。
《その人は言いました。
糞食らえと、ね?》
そう言ったピエロと目が合った、気がした。
《だから私はプレゼントを用意してあげたのですよ。
あなた方のつまらない世界をこっちの世界のようにしてあげようと。》
あちこちでざわめきが生まれる。
僕は何も言えない。
《ほらほら、お静かに。
今頃向こうの世界はモンスターで溢れていることでしょう。
早くしないとあなた方の大切な人々がモンスターに食い殺されてしまうかもしれない。》
そう言って大げさに項垂れる。
《いいですか?
静かに私の話を聞いて大切な誰かをモンスターから救うか、わあわあと説明を無視して殺されるか。
どっちにします?》
楽しそうに告げるそのピエロに人々は何も言えず黙り込む。
《よろしい。
では説明しますね。》
そう言ってお辞儀するピエロ。
《あなた達を元いた場所に返します。
そこはここy.pと同じく、モンスターや亜人などといった存在に溢れていることでしょう。》
わざとらしく嘆く。
《y.pプレイヤー以外の人間、そうですね。
ノンプレイヤーとでも言いましょうか。
そのノンプレイヤーの人々はきっと何もできずに殺されることでしょうねえ。》
本当に楽しそうに演説する。
《ノンプレイヤーの方々を救う、あなた達はさながらヒーローでしょうね。
ああ、なんと頼もしいことでしょう。》
いかれてやがる。
《いま、あなた方の世界とy.pの世界は同期し、ぐちゃぐちゃに混ざり合って溶けています。
まあ、口で言うより体験していただく方が早いでしょう。》
《あ、そうそう。
鍵は魔王です。》
そう言って俯く。
《いいですか?
あなた達はノンプレイヤーを救うのですよ?》
酷く優しい声でピエロは呟いた。
そのまま意識は歪んで消えた。




