道化は嗤う
時計を見ると朝の四時。
いつのまにか寝てたらしい。
変な夢を見ていた気がする。
起きて何をするでもなく、すぐにヘッドギアを装着してy.pを起動する。
すうっと呑み込まれるような感覚。
幾度も体験したその感覚は何回体験しても気分がいい。
目を開けるといつもの景色が待ってるはずだった。
「え。」
目の前には人、人、人。
真っ白な空間に溢れんばかりの人間がいた。
いつも目を覚ますのは、宿屋の部屋のはず。
前回はシダの町でセーブしてたはずだ。
ここはどこだ?
体を確認する。
間違いない。
この体はy.pの世界の僕だ。
故障か?
今までそんなこと一度もなかったはずだけど。
そんなことを考えながら近くにいた人に話しかける。
「バグかなんかですか?」
「ああ、そうみたいだね。
気づいたらここにいて、みんなログアウトできないんだ。」
言われて気づいた。
確かにログアウトの文字が灰色に染まっている。
「まあ、ニント社がすぐ対応するだろうけどね。」
そう言って他の人と談笑を始めた。
「それにしてもとんでもない量いるな。」
見渡せば見渡すほど、その人数に驚かされる。
この白い空間はどこまでも広がっており、その地平線まで人で溢れかえっている。
プレイヤースキルは使えるようで、自由に飛び回っている人や魔法を打っている人もチラホラ見受けられる。
...やることないし、寝てるか。
***
ざわざわと、慌ただしい物音に目を覚ますと口論が繰り広げられていた。
早くここから出せだの、運営は何やってるだのなんだかいい雰囲気ではない。
時間を確認してみれば、なるほど。
僕が眠って丸一日が経っていた。
どんだけ寝てたんだよ。
「あの、まだ何もないんですか?」
先ほどとは違う人に尋ねてみると、困ったような顔をして首を振る。
さすがにおかしい。
そう思った瞬間。
《やっほー。
元気にしてるかな?》
そんな間の抜けた声が届いた。
その声の主は奇妙なお面をかぶり、真っ赤な服を着ていた。
まるでピエロだ。
突然現れた変化に周りの人間も注意を向ける。
《やあやあ。
待たせてしまって申し訳ない。》
言葉ではそう言いながら、悪びれたそぶりを見せず、手をプラプラさせておどけている。
遠くを見渡せば、至る所にピエロもどきが出現しているようで動きがシンクロしている。
おそらく全く同じことを言っているんだろう。
「ふざけるな!
早くここから出しやがれ!」
そう言って派手に魔法をぶっ放す大男。
その魔法は呆気なくピエロを貫通し消散した。
《はーいはい。
怒っちゃやーよ。》
そう言っておどけるピエロ。
《本題に入りますよー。》
そう言って嬉しそうに手を叩く。
《君達の肉体は今頃死んでいることでしょう。》
しんと、白い空間が静まり返った。




