きっと、人はそれを『運命』と呼ぶ
新宿――アルタ前。
ボロボロになったマシンと澪は、何とかそこにたどり着く。
達成感などはなかった。
初めから、そのつもりだったのからと、澪は諦める。
最初からそのつもりだったのだ。
歩美の弔いではない。
ケジメをつけるために、歩美を殺した者を使ったに過ぎないのだ。
「分かってた。分かってたんだ」
フルフェイスのヘルメットを外し、空を仰ぐ。
都心では、煌びやかな光が空を照らし、星空は見えなかった。
それでも、澪は空を見ていた。
「こんなことをしたって、君が戻ってこないことくらい、分かってた」
それでも、走った。
走りきったのには、理由がある。
強く変わった自分を見せるためだ。
愛していたからこそ、恋していたからこそ、
合う度に、どんどんいいところを見つけてしまって
欠点など、些細なものでしかないと思わせてくれて
そんな人に、お別れをするために。
君がいなくなっても、大丈夫。
君が好きになってくれた男は、すごい奴なんだ。
君に出会って、こんなに強くなれたんだよ――と。
その姿を、見てもらうためだったのだから。
「お前も、ありがとうな」
事切れ、焼き切れてしまったであろうバイクは、もう、うんともすんとも言わなくなってしまった。
出会わせてくれたこと、付き合ってくれたことへの感謝を、澪は口にする。
澪の両目は、既に潤んでいた。
堪え切れず、声も震えていた。
澪は思うのだ。
歩美、俺、変われたよ。
君のお陰で、色んな人達に助けられて、一人じゃ無理だったろうけど、ちゃんと最後まで走りぬくことができた。
見ててくれたかな――と。
だから、別れの決意をする。
言いたくはない。
けれど、言わなければ前に進めない。
止まっている自分と、前に歩こうとする自分。
どちらが、君の好きな俺なのか、分かってるから。
そう思うからこそ、澪は口にした。
「さようなら。歩美。俺は、きっと君のことを忘れない。絶対に――忘れないよ」
澪は思ったのだ――
その人は、俺を強くしてくれた。
大切なことを教えてくれた。
多分、こうやって、
大切にしたいとか、好きだとか、悲しいとか。
苦しいとか、切ないとか。
もちろん、後悔もあるけど……
一人では無理でも、二人ならできるようになること。
二人なら、強くなれること。
誰かのために、強くなりたいと願うこと。
変わりたいと思うこと。
そんな人との出会い。
きっと、人はそれを『運命』と呼ぶんだね――と。
「君に会えて本当に良かった」
澪は言い切ったのだった。
星すらも見えない夜空を眺め、涙を零さないように、下唇を噛みしめながら。
稚拙な作品ながら、最後までお読み下さりありがとうございました。
緋風 希望




