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家事壊滅な7人姉妹のお世話係になりました  作者: 三日月
第二部②:甘いチョコと、素直になれないホワイトデー
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第64話:二月十四日、世界で一番甘い約束

二月十四日——バレンタイン当日。


澄み渡る冬の朝の光が彩咲(あやさき)家のリビングに差し込む中、朝食を終えたテーブルの上には、カラフルで可愛らしいラッピングに包まれた小箱や袋がずらりと並べられていた。


「誠お兄ちゃん! はいっ! アタシからのバレンタインチョコなのだー!」


三女の彩咲(あやさき)灯華(とうか)が、昨夜必死に作った特製デコレーションクッキーの袋を真っ先に差し出してきた。


「ウチからも! 誠お兄ちゃん、いつも美味しいご飯作ってくれてありがとー!」


六女の彩咲(あやさき)絢金(あやか)も大はしゃぎで、手作りのチョコクランチが入った袋を僕の手の中に押し込んでくる。


「……誠さん。日頃の感謝を込めて作りました。疲れた時に食べてください」


「カカオポリフェノールの抗酸化作用で、誠さんの毎日の健康をサポートする効果も実証済みよ」


四女の彩咲(あやさき)水樹(みずき)と五女の彩咲(あやさき)木乃香(このか)も、それぞれ上品なラッピングが施された抹茶生チョコとトリュフを照れくさそうに手渡してくれた。


「とわもー! まことおにいちゃん、だいすきー!」


末っ子の彩咲(あやさき)土和(とわ)が、小さな両手で一生懸命作ったいちごチョコの小袋を差し出してくる。その可愛らしさに僕の頬がゆるみっぱなしだ。


「あらあら〜、誠くん大人気ね〜。……ふふ、私からも、いつも家事を頑張ってくれている誠くんに感謝を込めて」


長女の彩咲(あやさき)陽葵(ひまり)さんが、ふんわりとした笑顔で綺麗なリボンのかかった小箱を手渡してくれた。


「みんな……本当にありがとう! こんなにたくさんもらえるなんて、僕、世界一幸せなお世話係だよ。大事に味わって食べるね!」


僕——浅比 誠(あさひ まこと)が満面の笑みで両手いっぱいのチョコを抱え込むと、妹たちは嬉しそうに顔を見合わせ、楽しそうに笑い合った。


そんな賑やかな家族の輪の中——。

次女の彩咲(あやさき)月菜(るな)だけは、澄ました生徒会副会長の顔で、少し小さめの小箱を僕に差し出してきた。


「はい、誠。私からも……日頃の感謝として、普通のチョコをあげるわ。しっかり味わいなさい」


「あ、ありがとう、月菜」


表面上は「ただの妹からの感謝チョコ」という体裁。

けれど、小箱を受け取る瞬間、月菜の小指が僕の指先にそっと触れ、小さな微振動が伝わってきた。


(放課後……旧校舎の裏庭で待ってるわ……)


声には出さない、月菜の目線からの甘いメッセージ。

僕の心臓がどきりと大きく跳ね上がった。


◇


放課後——。


夕暮れ時の赤橙色の光が校舎を染め上げる頃、僕は生徒会の仕事を終えた月菜との約束を果たすため、静まり返った旧校舎の裏庭へと足を運んだ。


冬の冷たい風が吹き抜ける中、枯れ木の下にポツンと立つ一人の少女の姿があった。


「月菜……!」


「……誠」


僕の声に振り返った月菜は、マフラーに顔を半分埋め、両手で大切そうに包み込むようにして「本物の小箱」を胸元に抱きかかえていた。


夕日に照らされた彼女の瞳は潤んでいて、頬は林檎のように真っ赤に染まっている。


「……寒くなかった? 待たせちゃってごめんね」


「ううん……ううん、全然……っ。私……誠が来るのを待ってる間……ずっと心臓がうるさくて……っ」


月菜はトコトコと僕の前まで歩み寄ると、震える両手で胸元に抱えていた小箱を僕へと差し出した。


それは、朝もらった箱とは比べものにならないほど、愛らしく丁寧なリボンで飾られた、世界で一つだけの特別なお重だった。


「……これ……私からの……本当の『本命チョコ』……受け取ってください……っ」


可憐な声が、静かな裏庭に響き渡る。


「……朝あげたのは……みんなの前だから……。でも、これが……これが私の……誠への、本当の気持ち……っ」


月菜の目から、ポロポロと大きな涙が零れ落ちた。


「深夜に二人で試作した時より……もっともっと美味しくなるように……誠の顔を思い浮かべながら……私の愛を……全部詰めたんだから……っ!」


溢れ出る一途でまっすぐな恋心。

その愛おしさに、僕の胸は破裂しそうなほど熱くなった。


僕は差し出された小箱をしっかりと両手で受け取ると、そのまま月菜の華奢な肩を引き寄せ、彼女の小さな身体を力いっぱい胸の中に抱きしめた。


「っ……! ま、誠……っ!?」


「月菜……! ありがとう……! 泣かないで、月菜……僕、すごく……すごく嬉しいよ……っ!」


「だって……っ、誠が他の妹たちからたくさんチョコもらってて……私、朝からずっと嫉妬で狂いそうだったんだもん……っ! 私だけの誠なのに……私だけの恋人なのに……っ!」


僕の胸に顔をうずめ、ぽろぽろと涙を流しながら叫ぶ月菜。

そのウブで激しい独占欲と、僕への溢れんばかりの愛。


僕は月菜の頭を優しく撫で、耳元でそっと囁いた。


「月菜……僕にとって、みんなからのチョコは大切な感謝の気持ちだけど……月菜からのこのチョコは、僕の命よりも大切な『愛する恋人からの本命チョコ』だよ」


「っ……!」


「僕の心も、僕の身体も、全部……最初から月菜だけのものなんだから」


僕が優しく微笑みながら月菜の涙を指先で拭うと、月菜はハッと息をのび、潤んだ瞳で僕をまっすぐに見つめ返してきた。


「……バカ誠……急にそんなカッコいいこと言わないでよ……っ」


月菜はポッと顔を赤くし、僕の服の襟ぐりを両手でギュッと掴むと、背伸びをして僕の頬にそっと柔らかい唇を寄せた。


——チュッ。


甘く可憐な触感が、僕の頬に残る。


「……覚えておきなさい。私の恋人は……世界で一番カッコよくて、世界で一番愛おしい……浅比誠だけなんだからね……っ」


赤くなった顔をマフラーに埋めながら、上目遣いで僕を睨みつける月菜。

その姿は、どんな高級なチョコレートよりも甘く、世界で一番可憐に輝いていた。


「うん……僕の恋人も、世界で一番可愛くて大好きな彩咲月菜だけだよ」


夕暮れの旧校舎の裏庭で、二人だけの特別なバレンタイン。

甘く溶け合う吐息と絆は、春の足音とともに、どこまでも深く、愛おしく紡がれていくのだった。


---


【本日のお世話係メモ:家庭で役立つ豆知識 64】

『バレンタインで貰った大切なチョコを傷めない!持ち帰り&カバン保存の型崩れ防止ハック』

せっかく貰った手作りチョコや高級チョコレート。カバンに入れて持ち帰る間に「箱が潰れたり中のチョコが偏ったりしてガッカリ……」という経験はありませんか?

大切なチョコを綺麗な状態のまま持ち帰るコツをご紹介します!


① カバンの中では「底面に近い平らな場所」に配置する!

★カバンの上部に置くと、歩行時の揺れで箱が傾き、中のチョコが寄ってしまいます。カバンの底に教科書などを敷いて平らな土台を作り、その上に水平に置きましょう!


② 箱の周囲を「タオルやハンカチ」で優しく固定する!

★カバンの中に隙間があると箱自体がゴロゴロ動いてしまいます。柔らかいタオルなどで隙間を埋めてあげることで、歩行のクッション代わりになり衝撃を吸収してくれます!


③ 直射日光の当たる場所や体温が直接伝わるポケットには入れない!

★コートのポケットや暖房の風が当たる場所は厳禁です。カバンの内側など、涼しい温度が保たれる場所で大切に持ち帰ってくださいね!


大切に持ち帰って、作ってくれた人の想いと一緒に美味しく味わいましょう!

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