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家事壊滅な7人姉妹のお世話係になりました  作者: 三日月
第二部②:甘いチョコと、素直になれないホワイトデー
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第63話:前夜の甘い熱気と、秘められた決意

二月十三日——バレンタイン前夜。


夕暮れ時の彩咲(あやさき)家のキッチンは、いつにも増して甘いカカオの香りと、湯せんの熱気に包み込まれていた。


「ギャーッ! 灯華お姉ちゃん! チョコの型から溶けたヤツがあふれ出てるよ〜っ!」


六女の彩咲(あやさき)絢金(あやか)がエプロン姿で大はしゃぎしながら、ボウルからあふれそうになるチョコレートを指さす。


「フフ〜ン、大丈夫なのだ! これくらい豪快なほうが、誠お兄ちゃんへの感謝の気持ちがデカいって証拠なのだー! アタシ特製の超巨大ハートクッキー、焼き上がりが楽しみなのだ!」


三女の彩咲(あやさき)灯華(とうか)が、鼻の頭に白い粉砂糖をつけたまま高らかに胸を張る。


「灯華お姉ちゃん、温度管理(テンパリング)が甘いわ。温度が上がりすぎると、カカオバターと固形分が分離して表面にブルーム現象が起きてしまうわよ。ほら、一度冷水につけて温度を27度まで下げて」


五女の彩咲(あやさき)木乃香(このか)が眼鏡のフレームを指先でクイッと押し上げ、温度計を手に的確な指示を出す。


「……私は、抹茶の粉末を均一に振るう作業に入ります。誠さんが一口食べた瞬間に、ほろ苦さと甘みが絶妙なハーモニーを奏でるように」


四女の彩咲(あやさき)水樹(みずき)が静かに、職人のような真剣な眼差しで抹茶生チョコを型へと整えていく。


「とわもー! いちごのちょこ、ぺったんするー!」


末っ子の彩咲(あやさき)土和(とわ)も、小さな手でいちごチョコにトッピングのチョコスプレーを飾っていた。


「あらあら〜、みんな本当に上手に出来てきたわね〜。誠くん、台所がカオスになっちゃってごめんなさいね〜」


長女の彩咲(あやさき)陽葵(ひまり)さんが、胸元の開いた暖かそうなピンクベージュのニット姿でふわりと微笑みかける。


「いえいえ! みんなすごく上手ですよ! 道具の後片付けや湯せんのお湯の準備なら、僕に任せてください!」


僕——浅比 誠(あさひ まこと)はお世話係として、妹たちが怪我をしないよう見守りながら、洗い物をテキパキとこなしていた。


妹たち全員が、僕のために一生懸命チョコを作ってくれている。

その暖かく愛おしい家族の光景に、胸の奥がじんわりと温かくなるのを実感していた。


だが——その賑やかな調理場の片隅で、ただ一人、静かに恐ろしいほどの集中力を発揮している人物がいた。


次女の、彩咲(あやさき)月菜(るな)だ。


◇


「……絶対に……失敗できない……っ」


月菜はエプロン姿でボウルに向かい、細かく刻んだ最高級の製菓用チョコレートを慎重に湯せんにかけていた。


その瞳は真剣そのもの。周囲の妹たちの賑やかな声すら耳に入っていないかのように、絶妙な手つきでゴムベラを動かし、理想的なツヤと滑らかさを追求している。


(みんなは……『誠お兄ちゃんへの感謝』……。でも……私のは違う……っ。私は……誠の『恋人』として……世界で一番甘くて、世界で一番深い愛を込めたチョコを作るんだから……っ!)


深夜に二人きりで試作した生チョコ。

あの時の誠の「すごく美味しいよ、月菜」という言葉と、優しい笑顔が脳裏に蘇る。


本番の明日は、あの試作を遥かに超える極上のチョコレートを完成させなければならない。

月菜の小さな手には、誠への溢れんばかりの恋心が込められていた。


「月菜お姉ちゃん、すごく綺麗なツヤが出てる〜! さすが副会長!」


絢金が覗き込むと、月菜はハッと肩を跳ね上げ、慌てて澄ました顔を作った。


「っ……! べ、別に普通よっ。生徒会の業務に比べたら、これくらいの温度管理なんてどうってことないわっ」


「ふふ、月菜ちゃんたら相変わらず素直じゃないんだから〜」


陽葵さんがクスッと微笑むと、月菜は顔をポッと赤くして作業に戻った。


◇


夜も更け、妹たちが作り終えたチョコを大切にラッピングして自室へと戻っていった後——。


静まり返ったリビングで、僕は台所の最後の拭き掃除をしていた。


「ふぅ……みんなの情熱がすごくて、一時はどうなるかと思ったけど、無事に終わって良かったな」


そう呟いた時、後ろから「すっ」と気配が近づいてきた。


振り返ると、エプロンを外した月菜が、自分の二の腕をキュッと抱きかかえながら立っていた。


「月菜? どうしたの? もうみんな寝ちゃったよ?」


「……誠」


月菜はトコトコと歩み寄ると、僕の服の裾をそっと掴み、上目遣いで僕を見つめてきた。


「……明日のことなんだけど」


「うん?」


「明日の放映……じゃなくて、放課後。……生徒会の仕事が終わったら……二人きりで、いつものあの場所(旧校舎の裏庭)に来てほしいの」


月菜の小さな声が、静かな部屋に可憐に響く。

ほんのりと朱に染まった頬と、潤んだ瞳。明日を迎えるのが待ちきれないような、甘い切なさが彼女の全身から溢れ出ていた。


「……みんなの前では、ちゃんと『彩咲家の次女』としてチョコを渡すわ。でも……その後……二人きりになったら……」


月菜はポッと顔を真っ赤にして、僕の胸元にそっとおでこを押し当ててきた。


「……私だけの……私だけの誠に……本物の『本命チョコ』……受け取ってほしいの……っ」


その愛おしすぎる言葉に、僕は胸がぎゅっと締め付けられた。


僕のポケットの中で、月菜の華奢な手をそっと優しく包み込む。


「……うん、分かったよ、月菜。明日の放課後……絶対に二人きりになろうね」


「……ええ。約束よ……バカ誠」


二人だけの密やかな前夜の約束。

甘いカカオの香りに包まれた屋敷で、僕たちの恋のカウントダウンはついにあと一日——バレンタイン当日へと向かっていくのだった。


---


【本日のお世話係メモ:家庭で役立つ豆知識 63】

『バレンタイン手作りチョコのラッピングで「失敗しない&プロ級に見せる」リボンと包装ハック』

せっかく綺麗に作った手作りチョコ。ラッピングの時に崩れてしまったり、安っぽく見えてしまったりしていませんか?

100均の材料でもプロのお店のような高級感を演出できるWrappingテクニックをご紹介します!


① 手作りチョコは「ワックスペーパー」で包んでから箱に入れる!

★チョコが直接箱や透明袋に触れると、脂分がついて汚く見えてしまいます。オシャレな柄のワックスペーパーを一枚挟むだけで、お店の売り物のような清潔感と高級感が出ます!


② リボンを結ぶ時は「クロス結び+指一本挟む」!

★箱にリボンをかける時、きつく結びすぎると箱が潰れ、ゆるいと解けてしまいます。結び目の下に指を一本挟んで結び、最後に指を抜いて引っ張ると、緩まずピッタリ美しいリボン結びが完成します!


③ 箱の隙間には「クッションペーパー(紙パッキン)」を優しく詰める!

★箱の中でチョコが動いてぶつかると、角が欠けたり削れたりしてしまいます。紙パッキンで隙間を優しく埋めることで、持ち運びの衝撃から大切なチョコを守ることができますよ!


素敵なラッピングで、大切な人へ想いを届けてくださいね!

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