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家事壊滅な7人姉妹のお世話係になりました  作者: 三日月
第二部②:甘いチョコと、素直になれないホワイトデー
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第65話:甘い余韻と、放課後のアフタヌーン

バレンタイン本番の感動的な放課後から一夜が明けた、二月十五日——。


昨日の甘い熱気が嘘のように、冬の空は澄み渡り、彩咲家の屋敷には穏やかな日曜日の光が差し込んでいた。


「よし! 昨日みんなから貰ったたくさんの愛情と感謝に、僕なりの最高の形で『ありがとう』を返さなくちゃね!」


僕——浅比 誠(あさひ まこと)は早朝からエプロンを身につけ、台所でテキパキと腕を振るっていた。


昨日、妹たち全員とお隣の三日月さん、そして何より愛しい月菜から貰ったバレンタインのチョコレート。

そのどれもが心尽くしの宝物で、お世話係として、そして一人の男として、最高の形で感謝を表現したかったのだ。


僕が用意したのは、英国風の「特製アフタヌーンティーセット」。

3段のティースタンドに見立てた大皿には、サクサクの自家製スコーン、甘さ控えめの苺のミニタルト、そして香ばしいクロックムッシュがぎっしりと並べられていた。


「わぁぁぁ〜っ! 誠お兄ちゃん、これなぁに〜!? めっちゃオシャレでお店みたい〜!」


リビングに降りてきた六女の彩咲(あやさき)絢金(あやか)が、目を輝かせて大はしゃぎする。


「フフ〜ン! 昨日のお礼に、誠お兄ちゃんが特製おやつパーティーを開いてくれたのだ! アタシ、スコーンにジャムたっぷりのっけて食べちゃうもんね〜!」


三女の彩咲(あやさき)灯華(とうか)が身を乗り出し、四女の彩咲(あやさき)水樹(みずき)と五女の彩咲(あやさき)木乃香(このか)も感心したように頷いた。


「……スコーンの香ばしい小麦の香りと、自家製クロテッドクリームのコク。素晴らしい完成度です」


「紅茶に含まれるテアニンのリラックス効果と、スコーンの適度な糖質。昨日のチョコ作りの疲れを癒やすのに最高の栄養学的設計ね」


「とわもー! いちごのタルト、あーんするー!」


末っ子の彩咲(あやさき)土和(とわ)が小さな手でお皿を指差し、長女の彩咲(あやさき)陽葵(ひまり)さんがふんわりとした笑顔でお茶を注ぎ分けてくれた。


「あらあら〜、誠くんたら本当に気遣い上手ね〜。三日月くんにも、後でお裾分け持って行ってあげましょうね〜」


「はい! 陽葵さん、ぜひ持って行ってあげてください!」


妹たちの弾けるような笑顔と楽しげな歓声。

僕が作ったおやつを嬉しそうに頬張る家族の姿を見ているだけで、胸の奥がじんわりと温かくなっていく。


だが——その賑やかなテーブルの片隅で、次女の彩咲(あやさき)月菜(るな)だけは、紅茶のカップを両手で包み込みながら、どこか落ち着かない様子で僕を盗み見していた。


◇


(誠……昨日私があげた本命チョコ……いつ食べてくれるのかな……っ?)


月菜は甘い紅茶を口に含みながら、胸の奥をキュッと締め付けられるような甘い焦燥感に包まれていた。


昨日の放課後、旧校舎の裏庭で渡した本物の本命チョコ。

自分の溢れる恋心を全部詰め込んだあの生チョコを、誠がどんな顔で食べてくれるのか。それが気になって、昨夜は一晩中ベッドの中で悶々と過ごしてしまったのだ。


「……誠」


妹たちがスコーン夢中になっている隙を突き、月菜はそっと僕の服の裾を引っ張ってきた。


「ん? どうしたの、月菜?」


「……あとで、二人きりで……私のお部屋に来なさい……っ」


顔をポッと朱に染め、マフラーならぬニットの襟元に顔を埋める月菜。

そのウブで愛おしすぎる密やかな呼び出しに、僕の心臓がどきりと跳ね上がった。


◇


「——トントン」


妹たちが満足して自室へ戻った昼下がり。

僕は月菜の部屋のドアを静かにノックし、そっと足を踏み入れた。


部屋の中には、昨日月菜から受け取った「特別なお重の小箱」を大切に抱えた僕と、ベッドの端で膝を抱えて待っていた月菜の二人だけ。


「月菜……お待たせ。昨日貰ったチョコ……今、月菜の目の前で食べてもいい?」


僕は月菜の隣に腰を下ろし、小箱の綺麗なリボンを丁寧に解いていく。


「っ……! う、うん……っ。ちょっと……緊張するけど……食べて……っ」


月菜は両手を胸の前でギュッと握りしめ、生唾をゴクリと飲み込んで僕の手元を見つめていた。


蓋を開けると、そこには宝石のように美しくココアパウダーが塗された、ツヤツヤの特製生チョコレートが並んでいた。

一つピックで摘まみ上げ、口の中へと運ぶ。


——とろり。


舌の上に載せた瞬間、最高級のカカオの芳醇な香りと、濃厚で滑らかな甘みが、お口いっぱいにフワッと広がった。

試作の時を遥かに超える、極上の口溶けと深い愛の味。


「……美味しい……っ! 美味しすぎるよ、月菜……っ!」


僕は思わず瞳を見開き、月菜をまっすぐに見つめた。


「本当……!? 誠……本当に……美味し……かった……っ!?」


「うん! 舌の上でとろけて、すごく甘くて……月菜の愛が、身体中に染み渡っていくみたいだよ……! 僕、こんなに美味しいチョコ、生まれて初めて食べた!」


僕が心の底からの称賛を伝えると、月菜の瞳からぽろぽろと大粒の涙が零れ落ちた。


「ふえっ……っ、よかったぁぁ……っ! 誠が『美味しい』って言ってくれなかったらどうしようって……私……私っ……っ!」


安堵と嬉しさが爆発し、ぽろぽろと涙を流す月菜。

そのがあまりにも愛おしくて、僕はたまらず手繰り寄せ、彼女の小さな身体を胸の中にすっぽりと抱きしめた。


「月菜……ありがとう。こんなに素晴らしいチョコを作ってくれて……僕をこんなに愛してくれて……っ」


「っ……! 当たり前じゃない……っ! 私の恋人は……誠だけなんだから……っ!」


月菜は僕の胸に顔をうずめ、背中に回した両手で力いっぱい僕を抱きしめ返してきた。


「……誠」


「なぁに、月菜?」


「……チョコの甘さ……まだ残ってる……?」


月菜が胸元から顔を上げ、潤んだ瞳で上目遣いに僕を見つめてくる。

ほんのりと朱に染まった可憐な唇。


「……ん、残ってるよ」


「……じゃあ……私にも……分わけて……っ」


甘いおねだり。

僕は静かに目を閉じ、月菜の柔らかい唇へと、ゆっくりと自分の唇を重ね合わせた。


——ん。


カカオの芳醇な香りと、甘い吐息が二人の間で溶け合っていく。

何度も、何度も、互いの存在を確かめ合うように重ねられる甘い口づけ。


「……誠……大好き……っ」


「僕も……大好きだよ、月菜」


バレンタインの甘い余韻と、深まり続ける二人だけの恋の絆。

春の足音が少しずつ近づく中で、僕たちの愛おしい日々は、どこまでもどこまでも甘く輝き続けるのだった。


---


【本日のお世話係メモ:家庭で役立つ豆知識 65】

『バレンタインで貰った手作りチョコの「賞味期限&安全な美味しさ」ハック』

バレンタインで貰った大切な手作りチョコ。「勿体なくて食べられない!」と大切にとっておいていませんか?

手作りスイーツは保存料が入っていないため、美味しく安全に食べるための期間の目安をご紹介します!


① 「生チョコ・トリュフ・生クリーム使用」=【2日〜3日以内】に食べる!

★生クリームや水分を多く含む生チョコは傷みやすいため、貰ったら早めに冷蔵庫(野菜室)で保管し、2〜3日以内に味わいましょう!


② 「クッキー・焼き菓子・ドーナツ」=【5日〜1週間以内】に食べる!

★焼き菓子は比較的長持ちしますが、バターの酸化を防ぐため、乾燥剤と一緒に密閉容器に入れて保管するのが長持ちのコツです!


③ 「市販の板チョコを溶かして固めただけのチョコ」=【1週間前後】!

★水分が入っていない固いチョコレートは比較的長持ちします。冷暗所で保管し、美味しくいただきましょう!


作ってくれた人の想いが詰まったチョコ、一番美味しい時期に味わって感謝を伝えましょうね!

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