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家事壊滅な7人姉妹のお世話係になりました  作者: 三日月
第二部①:新春! 炬燵と雪と、七人姉妹の冬休み
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第59話:隣の青年の影と、節分の足音

二月上旬——。

立春を過ぎたとはいえ、なお冷え込みの厳しい朝、彩咲(あやさき)家の庭先にはうっすらと昨夜の雪が残っていた。


「よし! 朝ご飯の準備の前に、玄関先とアプローチの雪かきをしちゃおう」


僕——浅比 誠(あさひ まこと)は、防寒着を着込んでスコップを手に取り、屋敷の門の前へ出た。

ザクっ、ザクっ、と雪を退かしていると、隣の家の敷地からも同じように雪をかくシャベルの音が聞こえてきた。


「あ、おはよう、浅比くん」


声をかけてくれたのは、彩咲家の隣の家に住む二十歳の男子大学生——三日月(みかづき)さんだ。

少しボサボサの黒髪に大きめのダウンジャケットを羽織った、気さくで頼れるお兄さんだ。


「三日月さん! おはようございます! 早朝から雪かきですか?」


「うん。大学の講義前についでね。……あ、そういえば浅比くん、この前頼まれてた『みりん』と『料理酒』、ちゃんと料理に使えた? 浅比くんまだ高校生で未成年だから、お店で年齢確認かかっちゃうもんね」


そう、僕が料理でお酒類が必要な時、未成年で買えない僕の代わりに快くお使いを引き受けてくれたのが、この三日月さんなのだ。


「はい! 三日月さんのおかげで、最高の煮物が作れました! 本当にいつも助けられてばかりで……月菜とのことも、いつも親身に相談に乗ってくれてありがとうございます」


「はは、いいってことだよ。僕にとっても、一生懸命でまっすぐな浅比くんの相談に乗るのは楽しいしね。……それに、君の作るご飯の匂いが隣まで漂ってくると、一人暮らしの僕にはご馳走に見えてさ」


「本当ですか!? 今日の夜、節分の恵方巻と温かい汁物、三日月さんの分も作ってお持ちしますね!」


「えっ、本当!? 助かるなぁ……! 浅比くんは本当に出来たお隣さんだよ」


三日月さんが嬉しそうに目を細めた、その時——。


「あら〜、三日月くん? おはよう〜」


屋敷から出てきた長女の彩咲(あやさき)陽葵(ひまり)さんが、ふんわりとしたカーディガン姿で首を傾げた。

同い年である二十歳の二人。陽葵さんが少し首をかしげて微笑むと、三日月さんは一瞬ハッとしたように頬をほんのり赤く染め、慌ててダウンの襟を立てた。


「あ、陽葵さん……! おはようございます。今日もお綺麗ですね……あ、いや、朝からお寒いですね!」


「ふふ、三日月くんたら相変わらず可愛いわね〜。いつも誠くんのお使いや相談に乗ってくれてありがとう〜。今度、私もお礼に何か差し入れさせてもらうわね〜?」


「えっ、い、陽葵さんの差し入れ!? は、はい! 楽しみに待ってます……っ!」


露骨にドギマギする三日月さん。その様子を横で見つめながら、僕は(三日月さん、やっぱり陽葵さんのこと……)と心の中でニヤリとしてしまった。


◇


「……ちょっと、誠? 朝から何をニヤニヤしてるのよ」


玄関からバッグを手にした彩咲(あやさき)月菜(るな)が顔を覗かせた。

僕の隣で鼻の下を伸ばしている三日月さんを見て、月菜は呆れたように息を吐きつつも、しっかり挨拶を交わす。


「三日月さん、おはようございます。いつも誠がお世話になっています」


「やあ、月菜ちゃんもおはよ。相変わらず生徒会のお仕事忙しそうだね。浅比くん、君たちのこと本当に大切にしてるからさ、あんまりイジメちゃダメだよ?」


「っ……! イジメてなんていませんっ! ……ただ、誠が他のことに夢中になってると、ちょっと困るだけです……っ」


月菜は顔をポッと赤くして知らん顔を決める。

三日月さんは僕と月菜の空気を察し、「じゃあ僕、そろそろ大学行くね! 浅比くん、陽葵さん、また!」と爽やかに手を振って去っていった。


三日月さんが見えなくなると、月菜は急に僕の服の袖口をキュッと引っ張ってきた。


「……誠」


「ん? どうしたの、月菜?」


「……三日月さんには、私のこと……どこまで相談してるのよ……っ?」


「え? えーっと……『月菜が可愛すぎて胸が苦しい』とか……『どうしたらもっと喜んでもらえるか』とか……」


「っ〜〜〜〜っ! バカっ! なんでそんなことまで話してるのよ〜〜〜っ!」


顔を真っ赤にして僕の胸をぽかぽかと叩く月菜。

けれど、僕の手を握る力は、愛おしそうに一層強くなっていた。


◇


「——よーし! 明日は節分だー! みんなで恵方巻作りの下準備をするぞー!」


夕方、リビングに彩咲家全員が集まると、三女の彩咲(あやさき)灯華(とうか)と六女の彩咲(あやさき)絢金(あやか)が大はしゃぎで鬼のお面をかぶって暴れ出した。


「アタシが青鬼! 絢金が赤鬼だー!」


「三日月お兄ちゃんの分も、ウチが豆イッパイ投げてあげるー!」


「こらっ、三日月さんに豆を投げちゃダメでしょ! あの人にはいつもお世話になってるんだから!」


僕が笑いながら制すと、四女の彩咲(あやさき)水樹(みずき)と五女の彩咲(あやさき)木乃香(このか)、末っ子の彩咲(あやさき)土和(とわ)も楽しそうに恵方巻の具材を並べ始めた。


「三日月さん。誠さんの料理酒のお使いや、お姉ちゃんの相談に乗ってくれる優しいお隣さんです。恵方巻、一番大きな一本を届けるべきです」


水樹が静かに頷き、木乃香も眼鏡を光らせる。


「栄養バランスの取れた恵方巻は、一人暮らしの大学生の偏りがちな食生活に最高の栄養補給になるわね!」


「三日月おにいちゃんにも、あーんするー!」


土和も大はしゃぎだ。


◇


夜、妹たちが自室へ戻り、リビングに二人きりになると、月菜がそっと僕の隣へ歩み寄ってきた。


「……誠」


「月菜? どうしたの?」


月菜はエプロンのポケットから、小さく折りたたまれたメモ用紙を取り出した。そこには、びっしりと書かれたチョコレートのレシピと、可愛い手書きのイラストが描かれていた。


「三日月さんに相談するのもいいけど……バレンタインの本番のチョコは、私だけの秘密にしてね」


「月菜……」


「深夜に試作した時……誠が『美味しい』って言ってくれたから……本番はもっと……世界で一番甘くて、世界で一番誠を幸せにするチョコを作るんだから……っ」


月菜は僕の胸元にそっとおでこを押し当て、上目遣いで僕を見つめてきた。


「覚悟しておきなさい……私の、たった一人のお世話係さん……ううん、愛しい誠」


照れくさそうに囁かれた僕の名前。

頼れるお隣・三日月さんとの男子同士の絆と陽葵さんとの甘い気配、彩咲家の賑やかな節分、そして一歩ずつ近づく月菜との甘いバレンタイン。


季節は着実に春へと向かい、僕たちの物語はますます賑やかに、愛おしく輝きを増していくのだった。


---


【本日のお世話係メモ:家庭で役立つ豆知識 59】

『節分の恵方巻に使える!具材が崩れずお店級に美しく巻ける「手前1/3×海苔の向き」ハック』

明日は節分! 家で恵方巻を作る時、ご飯を欲張りすぎて具材がはみ出したり、巻き寿司が崩れてしまったりしませんか?

誰でも一発で綺麗な太巻きが作れる裏ワザをご紹介します!


① 海苔は「ザラザラした面を上」にして、巻きすの上にセットする!

★ザラザラした面に酢飯がしっかり密着し、崩れにくくなります!


② 酢飯は「奥側2cm」を空け、全体に均一に広げる!

★奥に空けを作っておくことで、巻いた時にご飯が押し出されずピッタリ綺麗に閉じることができます!


③ 具材は中央ではなく「手前から1/3の位置」に集めて並べる!

★巻き始める時に具材を指で抑えながら一気に「手前のご飯を奥のご飯の端に合わせる」ように巻き込むと、中心に綺麗な具材が収まった極上の恵方巻になりますよ!

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