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家事壊滅な7人姉妹のお世話係になりました  作者: 三日月
第二部①:新春! 炬燵と雪と、七人姉妹の冬休み
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第57話:大寒の風と、二人のぬくもり

一月下旬、一年で最も寒さが厳しくなる『大寒』の時期を迎えた、ある放課後——。


ビューッ、と凍てつくような冬のからっ風が校庭を吹き抜けていく。


「うぅぅ……っ! 今日の風、痛いくらい冷たいわね……っ!」


彩咲(あやさき)月菜(るな)が校門の影で、首元のマフラーに顔を深く埋めながら体を縮こまらせていた。

放課後、生徒会の仕事を終えた彼女と待ち合わせをした僕は、ポケットからあらかじめ温めておいた使い捨てカイロを取り出し、彼女の小さくて冷たくなった手にそっと握らせた。


「月菜、お疲れ様。すごく寒かったでしょ? はい、温かいカイロだよ」


「っ……! 誠……! ありがと……っ」


月菜はカイロを両手で包み込むと、嬉しそうに吐息を白く染めた。

周囲に誰もいないのを確認すると、彼女はカイロを持ったまま、僕の手をぎゅっと握りしめてきた。


「ねえ、誠……。この前の手編みマフラーのお返し……ってわけじゃないんだけど……これ、受け取ってほしいの」


月菜が自身の鞄から取り出したのは、落ち着いたダークグレーの『手編みのニット手袋』だった。


「これって……手袋……? もしかして、月菜が編んでくれたの!?」


「っ……! う、うん……。マフラーの余った毛糸と新しい毛糸で……夜な夜な練習して編んだのよ……っ。指先が出せるデザインにしたから、買い出しのメモを書く時も外さなくていいでしょう……?」


照れくさそうに上目遣いで僕を見つめてくる月菜。

手袋に手を差し込むと、信じられないほど温かく、手首まで優しく包み込まれる。月菜が僕の使い勝手を考えて、心を込めて一針一針編んでくれたことが伝わってきて、胸の奥が熱くなった。


「月菜……すごく温かいよ。指先が出るのも完璧だ! 本当にありがとう……!」


僕が手袋をはめた手で彼女の手を包み込むと、月菜はポッと頬を朱に染め、僕の腕にそっと体を寄せてきた。


「……ふふ、良かった。誠の手を温めるのは……私の役目だもの……っ」


寒風が吹き荒れる帰り道。けれど、二人の繋いだ手と手袋のぬくもりが、冬の寒さを完全に吹き飛ばしてくれていた。


◇


「ただいまーっ! うひゃぁぁぁっ! 外、寒すぎて顔の感覚がないよ〜〜〜っ!」


屋敷の玄関を開けると、三女の彩咲(あやさき)灯華(とうか)と六女の彩咲(あやさき)絢金(aやか)が鼻を真っ赤にして飛び込んできた。


「お帰りなさい、みんな! すごい寒波が来てるみたいだね。すぐ温まれるように、特製の『大鍋染み染みおでん』を仕込んであるよ!」


僕がリビングの土鍋のフタを開けると、ふわりと出汁の香ばしい湯気が立ち上り、妹たちから「「「「「「「きゃあーっ!!!!」」」」」」」と大歓声が上がった。


「すごーいっ! 大根が綺麗なべっこう色に染まってる! 玉子に、ちくわに、牛すじまで入ってる〜〜〜っ!」


灯華が目を輝かせてお皿を差し出す。


「……おでんの大根。味が芯まで染み込んでいて、箸がスッと通ります。誠さんの下ごしらえ、完璧です」


四女の彩咲(あやさき)水樹(みずき)が静かに感嘆の息を漏らす。


「おでんの具材は、下茹でと『冷ます工程』を入れることで、浸透圧の作用で味が劇的に染み込むのよ。科学的にも理にかなった最高の一品ね」


五女の彩咲(あやさき)木乃香(このか)が眼鏡を光らせて解説し、末っ子の彩咲(あやさき)土和(とわ)も「とわも、はんぺんさんたべるー!」と大はしゃぎだ。


「ふぅ……! 身体の芯から温まるわね〜……。誠くんのおでんは、本当にお出汁が優しくて、心がホッとするわ〜」


長女の彩咲(あやさき)陽葵(ひまり)さんが、胸元の開いた暖かそうなピンクのニット姿でお出汁を美味しそうに啜る。


「はい! かつおと昆布のベースに、練り物と牛すじの旨味が溶け出していますから、いくらでも食べてくださいね!」


◇


賑やかな食卓の中、月菜がお椀を抱えながら僕の隣にそっと腰掛けた。


「……誠」


「ん? 月菜、おでん美味しい?」


「ええ……すごく美味しいわ。お出汁が染み込んでいて……なんだか、この家みたいね」


「この家みたい……?」


僕が首をかしげると、月菜はふっと柔らかい笑みを浮かべた。


「はじめはバラバラだった私たちが……誠の温かさに包まれて、じっくり時間をかけて……こんなにひとつにまとまって、温かい家族になれた。……このおでんの具材みたいにね」


月菜の優しい言葉に、僕の胸がじーんと熱くなる。


「……そうだね。月菜やみんなが居てくれるから、僕も毎日がすごく温かいよ」


僕が囁くと、月菜はこたつの下で、僕の手袋をはめた手に自分の素手をそっと重ね合わせてきた。


「……大寒の寒さなんて、全然怖くないわ。……誠が側にいてくれれば、私はずっと温かいんだから……っ」


可憐に微笑む月菜。

みんなの賑やかな笑い声と、土鍋から立ち上る温かな湯気。

氷点下の冬の夜、彩咲家の屋敷は、どこよりも温かく、甘い愛に包まれていたのだった。


---


【本日のお世話係メモ:家庭で役立つ豆知識 57】

『大寒の寒さを吹き飛ばす!おでんの大根に超短時間で味が染み込む「冷凍×米のとぎ汁」ハック』

冬の定番「おでん」。大根に味を染み込ませようと何時間も煮込むと、煮崩れてしまったり光熱費がかさんだりしませんか?

わずか15分の煮込みで料亭級の「染み染みべっこう色大根」になる裏ワザをご紹介します!


① 厚切りにした大根の皮を厚めにむき、隠し包丁を入れたら「一度冷凍庫でカチコチに凍らせる」!

★凍らせることで大根の水分が膨張して細胞壁が破壊され、解凍時に一気に出汁を吸い込む隙間ができます!


② 凍ったままの大根を「米のとぎ汁」で10分ほど下茹でし、水でサッと洗う!

★とぎ汁のデンプン質が大根のアクを取り除き、透明感と甘みを引き出します!


③ 温かい出汁に入れて15分煮込んだ後、一度火を止めて「冷ます」!

★ここが最大ポイント!:味は大根を「煮ている時」ではなく「冷めていく過程(浸透圧)」で中まで染み込みます!


これで大寒の夜も、最高に美味しいおでんが味わえますよ!

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