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家事壊滅な7人姉妹のお世話係になりました  作者: 三日月
第二部①:新春! 炬燵と雪と、七人姉妹の冬休み
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第56話:割られた鏡餅と、甘い思惑

一月十五日、小正月——。

新年の松飾りが外れ、寒さが本格的な厳しさを見せる夕暮れ時、彩咲(あやさき)家の屋敷には甘くて香ばしいお出汁とあずきの匂いが充満していた。


「よーし! 今日は一月十五日、小正月で『鏡開き』の日だ! お正月に飾っておいた神聖な鏡餅を割って、特製のぜんざいとお煎餅を作ろう!」


僕——浅比 誠(あさひ まこと)が台所で腕まくりをすると、リビングからワイワイと賑やかな足音が押し寄せてきた。


「やったぁぁぁっ! 誠お兄ちゃん、待ってましたー! アタシ、鏡餅割るのやってみたい!」


三女の彩咲(ayasaki)灯華(とうか)が袖を捲り上げ、やる気満々で木槌を手に取る。


「ちょっと灯華、刃物や木槌で力任せに叩いちゃダメよ。鏡餅は神様が宿っていた縁起物だから『包丁で切る』のは切腹を連想させてタブーだし、乾燥したお餅を力任せに叩くと飛び散って危ないんだから」


五女の彩咲(あやさき)木乃香(このか)が眼鏡を指先でクイッと上げながら制止した。


「え〜っ! じゃあどうやって割るのさ、木乃香お姉ちゃん?」


「ふふ、ここで裏ワザ! 固くなった鏡餅は『レンジでほんの十秒〜二十秒ほど温める』か『水に少し浸してから割り箸や手でほぐす』と、刃物を使わずに綺麗に手で小さく割れるんだよ」


僕が実演してみせると、カチコチだった鏡餅が手でサクッと一口サイズにほぐれていき、妹たちから「おおーっ!」と歓声が上がった。


「すごーい! 誠お兄ちゃん、手品みたい!」


六女の彩咲(あやさき)絢金(あやか)が目を輝かせ、四女の彩咲(あやさき)水樹(みずき)も静かに頷く。


「……神様の宿ったお餅を無駄なく美味しくいただく。誠さんの家事ハックは、文化と理にかなっています」


「とわも! めんとり(麺棒)で、ぽんぽんするー!」


末っ子の彩咲(あやさき)土和(とわ)も小さな手で楽しそうにお餅を小さく砕いていく。


「あらあら〜、みんな本当に器用ね〜。誠くん、私もぜんざいのお手伝いをさせてもらおうかしら〜?」


長女の彩咲(あやさき)陽葵(ひまり)さんが、胸元の開いた暖かそうなふんわりニット姿で寄り添ってきた。彼女が台所に立つだけで、冬の冷気が一瞬で和らぐような温かさに包まれる。


「ありがとうございます、陽葵さん! 今日のぜんざいは、先日のあずき缶ハックに加えて、揚げた鏡餅を浮かべる『香ばしサクサクおしるこ』にしますね!」


全員で手際よく準備を進めていく。

かつては荒れ果てていたこの家が、行事ごとに温かい笑い声で満たされていく光景に、僕の胸は温かな幸せでいっぱいになった。


◇


「……あら、みんなで何騒いでるの?」


私服のカーディガンを羽織った彩咲(あやさき)月菜(るな)が、生徒会の書類を抱えて台所に入ってきた。


「あ! 月菜お姉ちゃん! 今日は鏡開きだから、誠お兄ちゃんが特製ぜんざい作ってくれてるんだよ!」


「ぜんざい……? ああ、そういえば今日はお正月行事の区切りの日ね」


月菜は書類をテーブルに置くと、そっと僕の隣へ歩み寄ってきた。

周りに妹たちがいるのを確認しつつ、彼女はエプロンの裾をキュッとつまんで、僕だけに聞こえる小さな声で囁いてきた。


「……誠」


「ん? 月菜、どうしたの?」


「……生徒会の帰りにね、駅前のデパ地下を通ったんだけど……もう『バレンタイン特設コーナー』ができてたわ」


可憐に頬を染めながら、上目遣いで僕を見つめてくる月菜。

始業式の日の下校途中で交わした「世界で一番美味しいチョコを誠のためだけに作る」という約束が、脳裏に一瞬で蘇ってきた。


「へぇ……もうそんな季節なんだね。月菜、どんなチョコ作るか決まった?」


「っ……! ま、まだ内緒よっ! 今から試作の計画を立ててるんだから……楽しみにしてなさいバカ誠……っ」


恥ずかしそうにそっぽを向く月菜。

けれど、彼女の手は僕のエプロンのポケットの中で、そっと僕の指に自分の指を絡め合わせてきた。


指先から伝わる甘い熱。

みんなの前では「凛とした次女と裏のお世話係」でありながら、こうして二人だけの密やかな合図を交わし合う時間が、たまらなく愛おしい。


(月菜が僕のためにチョコを作ってくれるなんて……想像しただけで心臓がもたないぞ……!)


「ふふ、楽しみに待ってるよ、月菜」


「……絶対、ビックリさせてあげるんだから……っ」


二人だけの甘い誓いが、鏡開きの夕暮れに溶けていった。


◇


夜七時——。

リビングのこたつを囲み、彩咲家全員で『新春・鏡開きぜんざいパーティ』が始まった。


お碗の中に注がれた艶やかなあずきスープと、香ばしく揚がった香ばしい鏡餅。


「「「「「「「「いただきまーす!!!!」」」」」」」」


一口食べた瞬間、リビングに感動の悲鳴が広がった。


「おいし〜〜〜っ! お餅が外カリッカリで、中がトローリ! あずきの甘さとお塩のアクセントが完璧〜〜〜っ!」


灯華が頬を落とさんばかりの笑顔で絶賛する。


「……サクサクの揚げ餅と、温かいあずき。最高の組み合わせです。誠さん、絶品です」


水樹が静かに感嘆の息を漏らし、絢金も「おかわりー!」とお碗を突き出している。


「ふぅ……! 身体の芯から温まるわね〜……。誠くんのぜんざいは、本当に心が解けていくわ〜」


陽葵さんが満足そうに目を細め、月菜もお碗を両手で抱えながら嬉しそうに微笑んだ。


「美味しいわ……誠。お正月の行事が、こうしてひとつずつ終わっていくのね」


「そうだね。でも、行事が終わっても……僕たちの賑やかな毎日はずっと続くよ」


僕が優しく答えると、月菜はハッと瞳を揺らし、それから柔らかい笑みを浮かべた。


「ええ……そうね。……次は、もっと甘い行事が待ってるものね」


チラリと僕を見つめる月菜。

その瞳には、来月訪れる『バレンタイン』への期待と、僕への溢れんばかりの情熱が宿っていた。


鏡開きの夜が明け、季節は一歩ずつ、恋人たちの甘い二月へと向かって進んでいく。

彩咲家の温かな我が家で、僕と七人姉妹、そして月菜との愛おしいストーリーは、ますます甘く輝きを増していくのだった。


---


【本日のお世話係メモ:家庭で役立つ豆知識 56】

『鏡開きの裏ワザ!固い鏡餅を包丁ナシでサクッと綺麗に割る&極上「揚げ餅ぜんざい」ハック』

お正月に飾った「鏡餅」。カチコチに固くなってしまい、包丁で切ろうとして刃が立たなかったり、手で割ろうとしてケガをしそうになったりしませんか?

安全・簡単にほぐす裏ワザをご紹介します!


① 固い鏡餅を耐熱皿に乗せ、ラップをせずに「電子レンジ600Wで15秒〜20秒」だけ加熱する!

★表面がほんのり柔らかくなり、刃物を使わずに手や割り箸で「サクッ」と一口サイズにほぐせます!


② ほぐしたお餅を170度の油でキツネ色になるまで揚げる(揚げ餅)!

★揚げたてのお餅をぜんざいに浮かべると、香ばしい油の風味がスープに溶け出し、料亭で食べるような絶品あずきスイーツに大変身します!


これで小正月の鏡開きも、美味しく安全に楽しめますよ!

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