第51話:初日の出の輝きと、彩りの祝膳
一月一日、元旦——。
雲ひとつない澄み切った冬の空から、新年の光が彩咲家の屋敷を優しく包み込んでいた。
「ふぅ……! 今年の初日の出は、本当に綺麗だな……」
僕——浅比 誠は、縁側で白い息を吐きながら、東の空から昇る黄金色の朝日を見つめていた。
昨夜、月菜と二人きりで訪れたあの静かな神社での記憶。かがり火の陰で重ね合わせた甘く温かな唇の感触が脳裏をよぎり、一人で顔が熱くなってしまう。
「……何を一人で思い出して赤くなってるのよ、バカ誠」
静かな足音とともに、隣にスッと立ったのは月菜だった。
私服のカーディガン姿に、髪を丁寧にブラッシングした可憐な装い。誰も見ていないのを確認すると、彼女はそっと僕の袖口を指先でつまんできた。
「月菜……! おはよう、あけましておめでとう」
「ええ……あけましておめでとう、誠。……昨日の夜は……その、素敵な初詣にしてくれて……ありがとうね……っ」
月菜は語尾を小さくすぼめると、マフラー代わりに巻いたカーディガンの襟元に顔を埋めた。
朝の光に照らされた彼女の耳たぶは、熟したリンゴのように真っ赤に染まっている。
「僕の方こそ、月菜と二人で新年の最初のお祈りができて嬉しかったよ。……あの時のお願いごと、絶対に叶えようね」
「っ……! もう……朝からそんな真っ直ぐ言わないでよ……爆発しちゃうじゃない……っ」
恥ずかしそうに僕の腕をぽかぽかと叩いてくる月菜。
二人きりの時に見せてくれるこのウブで可憐な表情は、僕だけの宝物だった。
◇
「ふぁぁぁ……あ、あけましておめでとう〜、誠くん、月菜……」
「あけましておめでとうございます、誠お兄ちゃん! 月菜お姉ちゃん!」
「あけおめー! ウチ、初夢でお肉いっぱい食べる夢見たよー!」
午前八時を回る頃、リビングに続々と姉妹たちが集まってきた。
長女の陽葵さんは相変わらずはだけた部屋着の上に羽織りを重ねて欠伸を噛み殺しており、三女の灯華と六女の絢金が元気いっぱいに飛び込んでくる。
「みんな、あけましておめでとう! さあ、元旦の特別なお祝い朝食の準備ができてるよ!」
僕がテーブルの上に、昨日から仕込んでおいた特製のお重と、おめでたい『お雑煮』を並べると、姉妹たちから「きゃあーっ!」と盛大な悲鳴にも似た歓声が上がった。
「すごーいっ! 重箱の中が宝石箱みたい! ツヤツヤの黒豆に、綺麗なおかまぼこ、伊達巻まで!」
「……数の子の塩加減と薄皮剥き、完璧です。誠さんの盛り付けのセンス、素晴らしいです」
四女の水樹が静かに目を輝かせ、五女の木乃香も眼鏡を光らせながら重箱を見つめた。
「お節料理の具材には、それぞれ深い意味があるのよね。黒豆は『まめに働く』、数の子は『子孫繁栄』、海老は『腰が曲がるまで長生きする』。科学的にも保存性と栄養価に優れた先人の知恵よ」
「とわも! かまぼこさん、たべるー!」
末っ子の土和が身を乗り出して、うさぎ型に切られたかまぼこを指差す。
「ふふ、みんな席についてね。まずはおめでたいお雑煮から召し上がれ」
僕が一人ひとりにお椀を手渡すと、陽葵さんがお椀を抱えながら、感極まったように目元を潤ませた。
「ふぅ……! お出汁の優しさが、身体中に染み渡るわね〜……。誠くんのお雑煮は、関東風のすまし仕立てで、焼き餅の香ばしさがたまらないわ〜」
「はい! かつおと昆布のお出汁に、鶏肉の旨味をしっかり染み込ませました。お餅は焦げ目を香ばしくつけてから入れてあります」
「美味しい……! 本当に美味しいわ……! 誠くん、今年もこの家のお世話係でいてくれて、本当にありがとうね〜」
陽葵さんが温かい笑顔で僕の手を優しく包み込んでくれた。
「陽葵さん……! はい、もちろんです! 僕にとっても、ここが一番大切な居場所ですから!」
「ちょっと陽葵お姉ちゃん! 朝から誠の手をそんなに握らないのっ!」
月菜が顔を真っ赤にして割り込んできつむじ風を巻き起こし、リビングが一気に弾けたような笑い声に包まれた。
◇
賑やかな祝宴の中、灯華がテレビのリモコンを手に取り、画面をつけた。
「あ! テレビで『スペオペ』のお正月特別番外編がやってるよ〜!」
画面に映し出されていたのは、昨日最終回を迎えたアニメ『銀河最果てのスペースオペラ』の元旦特別映像だった。
戦いを終えた7人の歌姫たちが、晴れ着姿で宇宙戦艦スターライト号の甲板に集まり、初日の出を見ながら笑顔で乾杯している。
「わあぁぁっ! 奏芽ちゃんたちの晴れ着姿、めっちゃ可愛い〜〜っ!」
「……1号機から7号機まで、それぞれのパーソナルカラーの着物が実に見事です」
水樹と灯華が食い入るようにテレビ画面を見つめる。
「ふふ……昨日の最終回で力を合わせて宇宙を救った彼女たちが、こうして穏やかなお正月を迎えているのを見ると……胸が熱くなるわね」
月菜がお雑煮のお椀を置きながら、しみじみと呟いた。
「ねえ、誠」
「ん? どうしたの、月菜?」
「私たちも……同じね。一年前は寒くてバラバラだったこの家が、あなたのおかげで……こんなに温かくて綺麗なお正月を迎えられている」
月菜はそっとテーブルの下で、僕の足に自分の足を軽く押し当ててきた。
「これからも……ずっとこうやって、みんなで笑顔でお正月を迎えたいわ。……誠と一緒に」
「月菜……」
照れくさそうに、けれどまっすぐな瞳で僕を見つめてくる僕の恋人。
その言葉と体温が、冬の凛とした空気の中で、僕の胸をどこまでも甘く温かく満たしていく。
「ああ、もちろんだよ。来年も、再来年も……ずっと僕がみんなの側にいて、美味しいお雑煮を作るからね」
「……うんっ! 約束よ……バカ誠」
彩咲家の7人姉妹と、お世話係の僕。
新しい年の光を浴びながら、僕たちの愛おしくも賑やかな物語は、さらに輝かしい未来へと向かって動き始めるのだった。
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【本日のお世話係メモ:家庭で役立つ豆知識 51】
『元旦の祝膳!お雑煮のお餅がドロドロに溶けない&お汁が濁らない「焼き目×別茹で」ハック』
お正月に欠かせない「お雑煮」。お鍋に直接お餅を入れて煮込むと、お餅が溶けてお汁がドロドロに濁ってしまったり、器に盛り付ける時に崩れてしまったりしませんか?
料亭級の澄んだお汁と香ばしいお餅に仕上がる裏ワザをご紹介します!
① お餅はオーブントースターで「表面に香ばしい焦げ目がつくまで」あらかじめ焼いておく!
★お餅の表面を焼いて固めることで、お汁に入れても溶け出すのを防ぎます!
② お汁とは「別の小鍋」でお湯を沸かし、焼いたお餅を数秒サッとくぐらせる(湯通し)!
★余分な粉や表面の油分が落ち、お汁に入れた際にお出汁が濁らず、最後まで美しく澄んだ状態をキープできます!
③ 器にお餅を盛り付けた後から、熱々のお出汁と具材を注ぐ!
★香ばしい焦げ目の風味がお出汁に溶け出し、料亭で食べるような本格的なお雑煮になりますよ!
これで最高のお正月をお過ごしくださいね!




