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家事壊滅な7人姉妹のお世話係になりました  作者: 三日月
第一部⑤:新春の旋律と、秘密の初々しい二人
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45話:甘いご褒美と、二つの重なる影

大掃除の第一弾を無事に終え、静かな冬の夜が彩咲(あやさき)家を優しく包み込んでいた——。


「ふぅ……! 今日の作業はこれで終了! みんな、本当にお疲れ様!」


僕——浅比 誠(あさひ まこと)がリビングの時計を見上げながら声をかけると、ソファやラグの上でくつろいでいた姉妹たちから安堵の溜め息が漏れた。


「はぁ〜〜〜っ! 頑張った〜〜〜っ! 誠お兄ちゃん、もうウチの手がヘトヘトだよ〜!」


六女の彩咲(あやさき)絢金(あやか)がラグの上に大の字になって転がり、三女の灯華(とうか)もソファのクッションに顔を埋めている。


「アタシも手がカサカサになっちゃうかと思った〜! でも、窓がめちゃくちゃピカピカになって気持ちいい!」


「……うん。お部屋が明るくなると、心まで洗われるようです」


四女の水樹(みずき)が静かに頷き、隣で木乃香(このか)が手帳を閉じながら眼鏡の位置を正した。


「化学的にも、住環境の美しさは精神の安定に直結するの。今日の達成感は素晴らしいデータね」


「とわもね! しんぶんしで、ゴシゴシ頑張ったのー!」


末っ子の土和(とわ)が誇らしげに小さな胸を張る。

そんな妹たちの健気な姿を温かい眼差しで見つめていた長女の陽葵(ひまり)さんが、ふわりと微笑んだ。


「ふふ、みんな本当にえらかったわね〜。誠くん、大頑張りのみんなに……何か『ご褒美』はあるかしら〜?」


悪戯っぽく片目をキュッと瞑る陽葵さん。

そのおねだりに、僕は自信満々に胸を叩いた。


「もちろんです! 今日の大掃除のご褒美に、冬にピッタリの特製ホットスイーツを用意してありますよ!」


「「「「「「「やったぁぁぁぁつ!!!!」」」」」」」


姉妹たちの歓声がリビング一杯に響き渡った。


◇


キッチンへ向かい、事前に下ごしらえしておいた鍋のフタを開ける。

煮立たせているのは、香ばしく焼き目をつけたお餅と、あずきの優しい甘みが漂う特製の『濃厚ぜんざい』だ。


「わあ……すごい良い匂い……! あずきの甘い香りが、お部屋中に広がっていくわね」


ふと気づくと、僕の横に月菜が立っていた。

私服のカーディガンを羽織り、エプロン姿の僕の横顔をじっと見つめている。


「月菜。お疲れ様、窓拭き一番頑張ってくれたね」


「べ、別に……当然のことをしたまでよ。……それより、一人で配膳するの大変でしょ? 手伝うわ」


そう言って、月菜はお椀を手際よく並べ始めた。

朝や昼間は妹たちの前でツンと澄ましていた彼女だが、こうして二人きりになると、甲斐甲斐しく僕をサポートしてくれる。


「ありがとう、月菜。……あ、そうだ。はい、これ」


僕は小さめのお椀にぜんざいを盛り付け、お餅をひとつ乗せて月菜の前に差し出した。


「え……? これ、私に?」


「うん。『一番の功労者』への、フライング味見だよ。あついうちに食べて」


「っ……! も、もう……そんな贔屓しちゃダメでしょ……」


月菜は頬を真っ赤にしながらも、嬉しさを隠しきれない様子でお椀を受け取った。

フーフーと息を吹きかけ、小さな口でそっとお餅をかじる。


「……ん……っ! 美味しい……! 外は香ばしくて、中はトローッとしてて……あずきの甘さが疲れた身体に染み渡っていくわ……」


トロけそうな笑顔を浮かべる月菜。

その可憐すぎる表情に、僕の心臓が大きく跳ね上がった。


(あかん……やっぱり二人きりの時の月菜は、破壊力が凄すぎる……!)


「ふふ、喜んでもらえてよかった。じゃあ、みんなにも持って行こうか」


「ええ!」


二人でお椀をお盆に乗せ、賑やかなリビングへと運んで行った。


◇


「おいし〜〜〜っ! お餅がモッチモチで、お出汁……じゃなくてあずきが絶品〜〜〜っ!」


「……あずきの風味が豊かで、塩加減が完璧です。誠さん、最高です」


ぜんざいを口にした姉妹たちから、絶賛の声が次々と上がる。

土和も口の周りにあずきをつけながら、「うまうまー!」と満面の笑みを浮かべていた。


「ふぅ〜、あったまるわね〜……。誠くんの作るおやつは、いつでも心をフワフワにしてくれるわ」


陽葵さんがお椀を抱えながら、満足そうに溜め息をついた。

そして、テレビ画面へと視線を送る。


画面では、今夜も『銀河最果てのスペースオペラ』の特別再放送が流れていた。

ちょうど画面に映っているのは、物語の絶対的リーダーである1号機『奏芽(かなめ)』と、参謀として彼女を支える2号機『ノワール』が、背中合わせでデュエットを歌うクライマックスシーンだ。


「……奏芽ちゃんと、ノワールちゃん。やっぱりこの二人のコンビは、別格の存在感があるわね〜」


陽葵さんがぽつりと呟いた。


「朱色の情熱を持つ長女の奏芽ちゃんと、漆黒の冷徹さの中に熱い情熱を秘めた次女のノワールちゃん……。正反対だからこそ、お互いの足りない部分を完璧に補い合ってる……」


その言葉に、月菜がお椀を置く手がピタリと止まった。


「……お姉ちゃん」


「ん? なあに、月菜?」


月菜は画面の中のノワールを見つめた後、隣に座る陽葵さんを静かに見上げた。


「私……最初はこの家で、お姉ちゃんがしっかりしてくれないからって、イライラしてばかりだった。……でも、違ったのね」


「え……?」


「お姉ちゃんがいつも大らかで、温かくみんなを包み込んでくれていたから……私は安心して、ツンツン突っ走ることができていたの。『スペオペ』の奏芽ちゃんが、ノワールちゃんの居場所を作り続けてくれたみたいに……」


月菜の素直な告白に、陽葵さんは一瞬目を丸くし、それから壊れそうなほど優しい笑顔を咲かせた。


「ふふ……気づいてくれたのね、月菜。……私はね、あなたが頑張り屋さんだから、ずっと誇らしかったのよ。……でも、これからは一人で背負わなくていいの。だって……」


陽葵さんはちらりと僕の方を見やり、温かい眼差しを向けた。


「頼りになる『お世話係』の誠くんが、私たちの真ん中にいてくれるんだからね〜」


「なっ……! お、お姉ちゃんまで、急に誠の名前を出さないでよっ……!」


真っ赤になって照れる月菜。

リビングに弾けたような笑い声が広がり、姉妹たちの絆がまた一段と深まっていくのを実感した。


「あ! そうだ! みんな!」


灯華が唐突に声を上げた。


「大晦日……十二月三十一日の夜! 『スペオペ』の全話一挙放送&完結記念スペシャルがあるんだって! みんなでコタツに入って、年越しそば食べながら観ようよ!」


「それ、最高じゃない! ウチ絶対夜更かしするー!」


「……年越しそばとスペオペ。素晴らしい大晦日のプランです」


「賛成〜! 誠くんの年越しそば、今から楽しみだわ〜!」


姉妹たちが盛り上がる中、月菜がそっと僕の袖口を引いた。


「……大晦日、一緒に観ようね……誠」


誰にも聞こえない声で囁かれた、二人だけの約束。

繋いだ指先から伝わる熱が、冬の夜の冷気を優しく溶かしていく。


聖夜を越え、年末の大掃除を終え、僕たちの絆は『スペオペ』の歌姫たちのように強く美しいハーモニーとなって、新しい年へと向かって紡がれていくのだった。


---


【本日のお世話係メモ:家庭で役立つ豆知識 45】

『冬の夜の至福!市販の「あずき缶」で料亭級の絶品ぜんざいを作る「塩ひとつまみ&焼き目」ハック』

寒い冬の夜、無性に食べたくなる「ぜんざい・おしるこ」。市販のあずき缶を使うと、なんだか甘ったるくなったり味がぼやけたりしませんか?

そんな時は、次の2つのポイントを試してみてください!


① あずき缶に水と「ごく少量の塩(ひとつまみ)」を加える!

★塩を入れることで甘さがキリッと引き締まり、あずきの深いコクと上品な甘みが劇的に引き立ちます!


② お餅はレンジではなく「オーブントースターでしっかり焼き目をつける」!

★香ばしい焦げ目が甘いスープに溶け出し、料亭で食べるような本格的な風味に仕上がります!

疲れが一気に吹き飛ぶ絶品おやつになりますよ!

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