第11話:忍び寄る甘い誘惑と、早朝のハプニング
「――ふぅ、今日もいい秋晴れだな」
浅比誠が彩咲家に泊まり込むようになってから、数週間が経過していた。
家事壊滅状態だった邸宅は、誠の献身的なお世話によってすっかり劇的な劇的改善を遂げている。
七人姉妹との距離感も最初期に比べれば格段に縮まり、今ではすっかり家族としての温かい日常が定着しつつあった。
……が、それは同時に、彼女たちの警戒心が完全に壊滅したことを意味している。
「よし、朝の掃除機がけの前に、洗面台の鏡拭きを終わらせておくか」
雑巾を固く絞り、誠は一階の洗面所へと向かった。
時刻は午前六時十五分。普段ならまだ誰も起きてこない静寂の時間帯だ。
扉をトントンと軽くノックし、返事がないことを確認してからドアノブに手をかける。
「失礼しま――」
ガチャリとドアを開けた瞬間、誠の視界に飛び込んできたのは、あまりにも圧倒的な光景だった。
「……あ、誠くん? おはよう〜」
脱衣所の洗面台の前で、寝ぼけ眼のまま歯磨きをしていたのは、長女の彩咲陽葵だった。
普段から生徒会長として完璧な彼女だが、現在の姿は壊滅的を超えた無防備状態。
ダボついたキャミソールの肩ひもは完全にズリ落ち、真っ白で滑らかな肩から胸元にかけてのラインが大胆に露わになっている。
それどころか、朝の光を浴びて豊満な胸の渓谷が、隠す気ゼロで目の前に主張していた。
「ひ、陽葵さん!? 服! 服が完全に落ちてますって!」
「ふえ……? あぁ……暑かったからぁ……」
寝ぼけ眼の陽葵さんは、自分の胸元を隠すどころか、ふらふらとした足取りで誠に近づいてくる。
そして――
「……きゃっ」
「っと、危ない!」
足元に落ちていた脱ぎ捨てた靴下に引っかかった陽葵さんの身体が、浮遊感とともに倒れ込んでくる。
誠は反射的に手を伸ばし、彼女の華奢な身体をガッチリと抱き止めた。
――ぎゅむっ!
「……ッ!?」
手に伝わる、圧倒的な柔らかさと体温。
陽葵さんの豊満な胸元が、誠の胸板にしっかりと密着していた。
甘い桃のようなシャンプーの香りが鼻腔を駆け抜ける。
「あ……誠くん、温かい……。このまま抱っこしてて……」
「だ、ダメですって! 陽葵さん、起きてください! 理性が飛びます!」
必死に理性の防波堤を維持しようと汗を流す誠。
その時、洗面所のドアが勢いよく開いた。
「――お姉ちゃん、ドライヤー借りるわよ……って、はぁぁぁ!?」
立ち尽くしていたのは、制服に着替えた次女の月菜だった。
誠と陽葵さんが密着し合っている決定的な光景を目撃し、その顔が瞬く間に真っ赤に染まる。
「あ……月菜……おはよう……」
「おはよー、じゃないわよ! な、なに朝から密着してんのよ浅比くん! 変態! 破廉恥!」
「だから事故だって言ってるだろぉぉぉ!?」
第二章の幕開けも、どうやら波乱に満ちた日常になりそうだった。
【お世話係誠の!生活豆知識のコーナー! #11】
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