第10話:嵐のあとの絆と、七人姉妹の小さな変化
前回のから続きます。
「――痛たた……月菜のやつ、容赦なく洗面器投げてきやがったな……」
灯華の暴走から一夜明けた、日曜日の早朝。
俺、浅比誠は、冷やしたタオルを右頬に当てながら、静まり返ったリビングの掃き掃除を進めていた。
顔を真っ赤にして怒り狂っていた月菜だったが、昨晩のうちに灯華が「アタシが勝手に抱きついただけ〜」と白状したため、俺への誤解はなんとか解けた。
解けたのだが……今度は月菜の方が気まずそうにしていて、今朝はまだ部屋から出てきていない。
「……ふぅ。まあ、大きなトラブルにならなくて良かったよ」
俺が箒を動かしていると、階段の方からトコトコと足音が近づいてきた。
姿を見せたのは、末っ子の彩咲土和だ。
両手でクマのぬいぐるみをギュッと抱きしめ、眠たげな目をこすりながら俺を見上げている。
「……お兄ちゃん、おはよう」
「おはよう、土和。お腹空いたか?」
「……うん。でも、お兄ちゃん、お顔痛いの……?」
土和は心配そうに小さな手を伸ばし、俺の冷やしタオルの上からそっと手を重ねてくれた。
その幼くも温かい優しさに、昨夜の疲れも一気に吹き飛んでいく。
「ありがとうな、土和。お兄ちゃんは平気だぞ。よし、今から美味しいフレンチトースト焼いてやるからな!」
「……! ほんと……!? 土和、お兄ちゃんのパン大好き♡!」
パッと笑顔を弾けさせる土和。
その声を聞きつけたのか、二階からパタパタと他の姉妹たちも降りてきた。
「あ、誠くん! おはよう〜! あ、頬っぺた大丈夫……?」
長女の陽葵さんが心配そうに覗き込んでくる。
「おはよう、浅比……昨日のは、その……あたしも言い過ぎたわ」
少し遅れて降りてきた次女の月菜が、気まずそうに視線を泳がせながら小さく頭を下げた。
「気にしないでくれ、月菜。俺も隙があったしな」
「……べ、別にアンタを気遣ったわけじゃないわよ! ただ、お世話係に怪我させたら美味しいご飯が食べられなくなるから……っ!」
相変わらずのツンデレ発言だが、その耳たぶは真っ赤に染まっている。
五女の木乃香も「ふん、あたしも手伝ってあげてもいいけど?」と背伸びし、四女の水樹は無言で俺のエプロンの裾をキュッと掴んで離さない。
六女の絢金も「お兄ちゃん、あたしテーブル拭くー!」と元気に声を上げた。
壊滅的だった彩咲家の日常。
だが、この十日間で、姉妹たちの心には確かに変化が起きていた。
俺というお世話係を受け入れ、家族としての温かい絆が少しずつ芽生え始めている。
「――よし! それじゃあ全員、朝食の準備にかかるぞ!」
「「「はーい!!!」」」
元気に響く返事。
七人姉妹とのドタバタな同居生活は、ここからさらに加速していく――!
【お世話係誠の!生活豆知識のコーナー! #10】
「固くなったパンが復活!絶品フレンチトーストの極意」
少し時間が経って固くなった食パンは、『液に浸す前に電子レンジ(600W)で15秒ほど温める』のが裏ワザ!パンの組織が緩んで卵液を吸い込みやすくなり、短時間で中までしみしみのフレンチトーストになります!仕上げにバターを溶かしたフライパンで弱火でじっくり焼けば、お店レベルのフワトロ食感を楽しめますよ!
最後までお読みいただきありがとうございました!
これからは各章10話程度の予定です!
さて、明日の最初から二章!…ではなく…? っと!これ以上はネタバレなのでお楽しみに!
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