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5-3-25 過去予測魔法2

シャドウは無駄な揺らぎ一つなく、決められた動きを淡々と繰り返していた。


その姿は人間そのものなのに、そこには本人の意思も温度も存在しない。


まるで、魂を失った影だけが歩いているようだった


「すごい……」


智絵里は思わず息を呑む。


「でも、ちょっと怖いね」


周囲を見ると、通り過ぎる人々は、目の前の存在に何の反応も示していない。


「……これ、私たちにしか見えてないの?」


「そう。魔力経路を共有しているからね」


小桜は苦笑した。


「完全な生き物じゃない。ただ、過去の情報を魔法的に形にしたものよ」


最初はわずかな誤差があった動きも、未来予知による情報を重ねるたびに少しずつ正確になっていった。


「どんどん行くよ」


小桜はさらに魔力を注ぎ、シャドウの生成を続けた。


頭上に表示された生成番号のカウンターが、徐々に増えていく。


100。


200。


300。


数字は、まるで記録映像を早戻しするかのように跳ね上がっていく。


智絵里は、その光景を眺めながら息を呑む。


智絵里は、その光景を眺めながら息を呑む。


「すごい……本物のCGみたい」


グラビティウムのエンブレムが、わずかに明滅した。


「……CG、か」


その声には、ほんの少しだけ不満が混じっていた。


「普通の映像生成なら、存在しないものを大量のデータから作り出すだけだ」


小桜はシャドウへ視線を向けたまま続ける。


「でも、これは違う。存在していたはずの過去を、未来に残った情報から逆算しているの」


「映像を創造しているのではなく、失われた状態を推定していると言うべきであろう」


アルシディアが映した数分後の行動。


そのわずかな情報から、シャドウは現在へ向かって遡っていく。


どの道を通ったのか。


どの速度で移動したのか。


途中で何を避け、どこで立ち止まったのか。


無数に存在する可能性の中から、最も矛盾の少ない一つを選び続ける。


「一体のシャドウ生成に必要な演算量は、通常の映像生成とは比較にならぬ」


グラビティウムが淡々と告げる。


「単純な画像処理ではないぞ。行動予測、経路推定、時系列補正……複数のAI処理を同時に実行しておる」


「つまり……未来を手掛かりに、過去を掘り返すってこと?」


智絵里の言葉に、小桜は頷いた。


「そう。だから一つ作るだけでも、本当はかなり無茶なことをしてる」


それでも、小桜は止めなかった。


1000。


2000。


3000。


4000。


カウンターが4000を超えた瞬間、グラビティウムの声に初めて警告が混じった。


「サーラ。現代AI側の処理負荷が限界に近い」


「もう少し……!」


小桜は魔力を注ぎ続ける。


あと少し。


あと少しで、流通拠点へ繋がる情報が得られる。


「停止すべきだ」


グラビティウムの声が低くなる。


「これ以上続ければ、現代AIシステムそのものが耐えられん」


小桜は一瞬だけ迷った。


だが、次の瞬間には決意したように手を伸ばす。


「……お願い」


「いかん!」


グラビティウムの警告が強まる。


「現代AIがオーバーロードを──」


その直後、シャドウの生成が急停止した。


スマホの画面が暗転する。


そして、表示されていた生成番号は4999で止まった。


「もしかして……落ちちゃった?」


智絵里が不安そうに尋ねる。


しばらく沈黙した後、グラビティウムが答えた。


「現代AIが処理限界を超えて停止した。復旧には一定時間が必要だ」


「ごめん……」


小桜は申し訳なさそうにスマホを見る。


しかし、その表情には後悔だけではなく、確かな手応えも浮かんでいた。


「でも、大丈夫。必要なデータは十分取れた」


手に入れた情報は、偽造ブランド品を流通させる組織へ辿り着くための、新たな手掛かりだった。


智絵里は、ようやく緊張を解くように息を吐いた。


「それにしても、すごいね。あんなに細かく人の動きを再現できるなんて」


目の前で起きた現象を思い返しながら、感心したように呟く。


小桜は微笑んだ。


「まだ完璧じゃないけど……ここまでできるなら、次はもっと効率化できるはず」


その言葉に反応するように、グラビティウムのエンブレムが静かに光った。


「まったく、おぬしは相変わらず無茶をするな」


呆れたような口調には、長年彼女を見てきた者だけが分かる親しみが滲んでいた


小桜は楽しそうに笑う。


「魔法とAI技術の融合は、まだまだ可能性があるよ」


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