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5-3-15 火神乱舞:最終フェーズ

ヒノカグツチの猛威は、聖奈たち三人の連携によって、少しずつ抑え込まれ始めていた。


聖奈が前線で炎を引き受け、昂弥は焔鼠の札で火勢を封じる。そして杏子は魔法によって戦場全体を制御し続ける。


三人の役割が噛み合い始めたことで、荒れ狂っていた炎は思うように広がらなくなっていた。


そのことが、火神の怒りを増幅させる。


咆哮とともに振るわれる剣は激しさを増し、一撃ごとに境内中の炎が引き寄せられるように刀身へと集まり始めた。


赤黒い火柱が渦を巻き、神威はなお膨れ上がっていく。


「まずい……!」


昂弥の表情が変わる。


「でかいのが来るぞ!」


巨大な炎を束ねるためか、ヒノカグツチは剣を高々と掲げたまま動きを止める。


世界を焼き尽くす一撃を放つ、その刹那──。


杏子の目が、一瞬の隙を捉えた。


「昂弥! ミイラにして!」


その声と同時に、昂弥が印を切る。


「散っ!」


札箱から焔鼠の札が一斉に舞い上がった。


まるで花吹雪だった。


無数の札が炎の隙間を縫うように飛び、ヒノカグツチの腕、胴、脚へと次々貼り付いていく。


「これで終わりじゃない!」


昂弥はさらに札を放つ。


一枚、また一枚と重ねられた焔鼠の札は、彼の呪力によって強く結び付けられ、火神の身体を幾重にも覆っていく。


やがてその姿は、巨大な神というより、白い札に包まれた異形の神像のようだった。


杏子も間髪入れず魔法を重ねる。


足元の地面が低く唸り、土が盛り上がった。


焔鼠の札の表面を薄い土の膜が覆い、そのまま焼き物のように硬化していく。


「これで簡単には剥がれないわ」


札と土。


二重の封印によって、ヒノカグツチの動きが目に見えて鈍った。


昂弥が鋭く叫ぶ。


「弱点の首を狙え!」


その声を受け、聖奈は《獅子の剣》を強く握り直した。


踏み込もうとして、ほんの一瞬だけ躊躇する。


(神様を……斬る……?)


その迷いを見透かしたように、ブラゼリオンが静かに語りかける。


「聖奈。神を畏れるな──乗り越えろ」


聖奈はゆっくりと息を吸った。


未来を守ると決めたのは、誰でもない自分自身だ。


この剣で未来への道を切り開く。


その覚悟を決めて、ここまで歩いてきた。


だから、もう迷わない。


「……いくわよ!」


聖奈は自らの意思で剣を振り抜いた。


一閃。


澄み切った軌跡だけが炎の中を走る。


次の瞬間、ヒノカグツチの首は胴から離れ、炎の尾を引きながら高く宙を舞った。


重々しい音を立てて地へ転がる。


境内に、一瞬だけ静寂が訪れた。


「……こんなに、あっさりと……?」


聖奈は思わず呟いた。


想像していたよりも、あまりにも容易く首が落ちた。


昂弥もまた、息を呑んだまま動けない。


神を相手に、ここまで鮮やかに決まるとは思っていなかったのだ。


しかし──


杏子だけは、剣を下ろさなかった。


視線は、首ではなく胴へ向けられている。


脳裏に蘇るのは、昂弥から聞いた神話だった。


生まれ落ちた瞬間に母を焼き、その怒りの中で父イザナギに首を刎ねられた火神。


杏子は小さく目を細める。


「……昔の傷が、癒えていないのかもしれないわね」


その直後だった。


首を失ったはずのヒノカグツチの身体が、ゆっくりと動き始めた。


完全に倒れたはずの神は、両手を地につき、何かを探すように這い回り始める。


その姿は先ほどまでの猛々しさとはあまりにも違っていた。


暴れるでもなく、失った頭部を必死に探している。


その異様な光景に、誰も次の一手を打てずにいた。


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