73.そなたらに光はもったいない
三人の前に、初代帝妃様が立ち止まった。
「う、うう…痛い。早く誰か私を助けろ。目が、焼け付くように痛い」
「あぁぁ…何も見えぬ。誰か、助けに来い」
「ぐうう…ルナリス、こんなこと、やめるんだ。僕のことがまだ好きなはずだろう…」
三人は余程目が痛むのか、床にのたうち回っている。しかし、許してもらいたいだけの三人が、助けてもらえるわけもない。
「そなたたち、わたくしのかわいいいとし子をずいぶんと痛めつけてくれたみたいね。そう、あと一人いるはずなのだけれど…」
周囲を見回しても、他に血の涙を流している者はいない。
(——フェリシーはどこなの)
「まぁいいわ。彼女には別の罰を受けてもらいましょうね。そなたらに下す罰は…」
初代帝妃様が、三人へ手を差し伸べる。
「二つ。一つめは、光を失う」
三人へと降り注いでいた光の刃が、一斉になくなった。
「痛くないぞ…助かった!」
「おお!神よ」
「許してくれたんだね、ありがとう」
痛みがなくなったらしい三人は、歓喜に震えている。けれども、先ほど間違いなく、光を失うとおっしゃった。なのに……なぜ…?
「暗いな。誰か、明かりを持て。もう夜になったのか」
「そんなに時間がたったようには思わなんだが、何も見えんぞ」
「まったく、王宮だというのに、光の管理もできていないとは…」
この期に及んで、まだ傲慢な口を聞いていることに、逆に感心してしまった。心の底から、自分が罰を受けるなどと信じていないのだ。
周囲の貴族たちがざわめきだした。こんなに眩しいくらいに光が満ち溢れているというのに、暗いとはどういうことだ。それに…
「おい、三人とも、瞳の色が黒くなっていないか」
「いや、血を流したせいじゃないのか?」
確かに、三原色だと自慢した美しい瞳は、彼らが濁色民と呼んで嫌悪する、平民のそれに似ている。
「まさか、視力を…目が見えないのか」
「ふっ…そなたらに、光はもったいないであろう。さて、二つ目だ」
初代帝妃様が、耳まで裂けるような笑みを浮かべた。なんておぞましい。そして、美しいのだろう。
「二つ目は、そなたらの誇りを失う」
そう言って三人へ差し伸べた手の上に、三人の髪の色が写し取られた。ぽよぽよと浮かんだ三色は、ぐしゃりと握りつぶされると、混ざりあい、濁った色へと変化する。
「さて。そなたらには、この色がふさわしかろう」
ふーっと息を吹き込まれたその色は三人の髪の色へと変化した。見た目だけで言えば、平民と変わらない。だが、その姿の変化を、光を失った自分の目で見て確かめることはできない。
(——残酷な罰だわ。生まれてずっと誇りとしていたものを取り上げるとは)
背中を汗が伝い落ちた。この方は、やはり、人ではなく、神に近しい存在なのだろう。
「なにがどうなってるんだ?」
「王妃、王妃?そなた、鏡を持て!」
「僕はどうなってしまったんだ?」
各々、両手で自分の顔を触ったり髪に触れているが、変化したのは色のみ。それではわかりようもない。
「ルナリス、わたくしは、この場にいない愚か者を一人、罰しなければなりません。他の者たちは、罪の重さに応じて、この降り注ぐ光が罰してくれるはず。この後は、そこにいる、若輩者たちと、対応なさい」
「承知、いたしました」
いつの間にか息を止めていたらしい。荒い呼吸の中返事をすると、満足そうに微笑まれた。
初代帝妃様が指さしたのは、帝王陛下と帝王妃陛下、それにレオ様だった。若輩者。確かに、初代から見ればそうだろう。
「では、またね。ルナリス。次に会うときは、もっと楽しい時がいいわね。期待していますよ」
そう言って、初代帝妃様は、ふわふわとどこかへ飛んで行かれた。
さて、どうしましょう。




