71.光の三原色
「わ、我が選ぶのは…」
全ての公国貴族が固唾を飲んで見守る中、国王陛下が選んだのは…
「無色の乙女の裁き」
一番選んで欲しくなかった選択肢を選んでしまった。しかし、内心一番選んで欲しかった。私が一番、こいつらに罰を下したい。レオ様にずっと抱きかかえられたまま、その胸に顔を押し当てた。
(——嫌われたくない)
「なるほど。その選択、後悔することがないといいが。ルナリス、行けるか?」
「ええ。もちろんです、帝王陛下」
帝王陛下から請われ、腕の中から、地に降り立った。今の私は、まるで薄汚れ、みっともないことこの上ない。だが、そんな程度で気後れなどしない。それくらい、今の私は怒りに打ち震えている。
「国王陛下、私はこの国で生まれた時より今日まで、辛酸を舐めてきました。そして、昨日は、遂には命を奪われそうになり、ほとほと愛想が尽きております。私の大事な人達が、何人も傷つき、倒れました。私を守るために」
目を閉じると、ベルナールにコスタンツァ、キティ、ビビ、それにディヴァーノの姿が浮かんだ。ほかにも、ハルト卿にライト卿、グレン卿。そしてレアルタ。死力を尽くして、守ってくれたパビリオーネのみんな。
「まさか、同じ国のよしみで許されるとは思っておられないでしょうけど」
ふふふ、と笑ってみせると、国王陛下が怯えたような顔をして、身じろぎした。
(——貴方に怯える権利なんてないのよ)
「ですので、皆様には平等に裁きを受けていただきたく思います。さぁこちらをご覧ください」
大広間の天窓から降り注ぐ日の光が、俄かに強くなった。全身が暖かい日の光で包まれる。冷えた身体にじんわりとした温もりが伝わった。ずっとずっと、身体が氷のように冷えていた。
感謝を思いながら指を組んで目をつぶり、祈りをささげると、光が綺麗に三色に分かれた。
青色
赤色
緑色
これこそが光の三原色。純粋な色。オーロラのように大広間いっぱいにひろがり、ゆらゆらと幻想的に揺らめいている。
「なんと!」
「このような魔術が使えるのか」
周囲の貴族から、呑気で的外れな声が聞こえ、顔が歪んだ。その時、レオ様に肩をたたかれた。まるで、気にせずに集中するように、と言われた気がした。
(——私の気持ちをお見通しなのよね。この黒い気持ちまるごと、レオ様は受け入れてくださる)
青と赤を合わせると紫へ。赤と緑を合わせれば黄色に。緑と青なら水色に。目の前で披露する。膨大な光を扱うには、集中力と体力が必要だ。額に汗がにじむが、構わない。
最後に、三つの光を合わせると……無色透明の元の陽光に戻った。何事もなかったかのように、大広間には優しい陽光が降り注いでいる。
「なんだ…と…?」
「三色を合わせると透明になったぞ。貴殿、知っていたか!?」
「知るわけなかろう!貴殿こそ!」
「なぁ、本当に尊いのは、光そのものの無色なんじゃないのか…?」
「そんなまさか!今まで三色をあんなに崇拝してきたのに、間違っていたというのか、貴様!」
悲鳴のようなその声が、あちこちから上がった。背中に汗が流れ、全身に疲労を感じたが、いっそ心地よい。
「お分かりになりましたか?何度やっても、同じことですが」
完璧なカーテシーとともに、満面の笑顔を向けると、大広間に静寂が広がった。
「それで、裁きですけれど…」
そう言いかけると、三人の男が、私たちの前にまろび出てきた。




