表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三原色信仰の国を追われた無色の花嫁は、帝国で世界を彩る   作者: りっちょまん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

91/95

65.護衛騎士の名にかけて

 肩で大きく息を吐いた。体力があるとはいえ、疲労は蓄積する。


「お二人とも、まだ生きてますか。ついでにそこでのびてるレアルタも」


 血を垂れ流し、力なく横たわっているベルナール様とコスタンツァ様に駆け寄った。


 よかった。二人ともまだ息がある。


「こっちでのびてるほうは…なんだ、ただ気絶してるだけじゃないの。ほら、起きて。レアルタ。起きて!」


 げしっと殴ると、うめき声をあげながら、目を覚ました。しばしぼうっとした顔をしていたが、さっと表情を変えた。


「アイツは!あの黒い奴!」


 すぐさま戦闘の体勢をとったところは褒めてあげたいかも。


「アイツなら、さっき胸を潰したわ。手ごたえがあったから、間違いなく致命傷のはずよ。それより手伝って。ベルナール様とコスタンツァ様が死んでしまうわ。…というか、あんたの部下はどうしたのよ」


「アイツらは…黒い奴の部下に追い立てられて、今はどこにいるのかわからん。後で探しに行きたいが」


 血だまりに倒れた二人を見て、レアルタは言葉を切った。


 自分を鬼のようにしごいた二人が倒れているのをジッと見つめた。複雑な心境って奴かしら。


「…それは後回しにしよう。ベルナール様は、俺が診る」


 そういうと、レアルタが、腰に下げた袋から、白い布と針、高濃度の酒の入った小瓶を出した。


「診れるの?」


 ビリビリと布を破き、酒を染み込ませるレアルタの手元を見つめた。余計な真似をしたら殺すわ。


「まぁ、これでも元騎士団長だからな。ある程度の知識はある。矢を抜いたら大量出血する。圧迫しながらすぐに肉を縫う。時間との勝負だ。コスタンツァ様はどうだ」


「こちらは切り傷と骨折ね。縫える所を縫って、添木をするしかないわ。あとは打撲が酷いから、冷やさないと。内臓も傷ついているかもしれないから、しばらくは絶対安静よ。こちらも手早くやるわ」


 私の方は糸が足りないかもしれない。


 最悪は、お嬢様のドレスから絹糸を拝借するしかないかもしれない。


 でも、それでもお嬢様はきっとお許しになるはずよ。


「レアルタ、間違ってもベルナール様を殺したら……私が貴方を殺すわよ」


「あぁ。心得ている」


 黙々と手を動かすレアルタは、顔色一つ変えなかった。


 レアルタと同様に準備し、コスタンツァ様の口腔へ酒を流し入れた。


 大半が地面に吸い込まれてしまったが、少しでも口に入ればいい。


「っうっ!」


 途端に額を歪めて、苦痛の声をあげ、げほげほと咳き込んだ。傷口に染みるだろうけれど、消毒にもなるし、酒は痛みを紛らわせてくれるはずよ。僅かでも痛みが紛れればいい。口に布を噛ませ、手当を進めた。苦痛に身悶えするコスタンツァ様を押さえつけるのは、心が痛む。


「すみません。でも、もう少しですよ、コスタンツァ様。もう少しで傷は縫えますからね。大丈夫ですよ。助かります」


 こまめに声をかけ、額に浮かぶ玉のような汗を拭いながら、手早く、でも雑にならないように処置を続けた。


 手当に夢中になっていた私は、気づいていなかった。


 胸を潰したはずの化け物が、次なる獲物を求めて姿を消したことに。



「クソクソクソクソ!なんだあの小娘は」


 おかしな具合にへこんだ腹をかばい、階段を這いずるように登っている。息を吸うのが辛い。この俺がこんな惨めな姿になったのは誰のせいだ?こんな無様をさらしているのは、誰のせいだ。


(——あの娘を生きて捕らえてこい。報酬は弾むぞ)


 弛んだ腹をしたこの国の王とか言うジジイと、どっかの腰抜けの侯爵家のボンボン。それに、公爵家の頭でっかちなクソジジイ。


 欲に目がくらんでこの依頼を受けたが、よくよく考えれば、この俺があんな馬鹿どもの言うことを聞く必要があるか?


 いや、ない。


 あいつらは生捕りにしろと言った。


 だが…


「ぶっ殺してやる。首を引きちぎって、あいつらの前に持って行ってやるよ。ひひひふははっは!どんな顔をしやがるかな」


 腹の底から笑いが込み上げる。おかしくておかしくてたまらん。


 ジジイどもから聞いた話では、最上階の真ん中の部屋らしい。明らかに扉の作りが違うから、もろバレだぜ馬鹿ども。


 頑丈な樫の木でできた扉を蹴破ると、足からビシビシと変な音がした。


 まぁいい。立てりゃ問題ねぇ。


 部屋に入るとそこには、なるほど。銀髪の女が佇んでいた。


 侍女もなしとは、冷遇されてるねぇ、お嬢ちゃん。


「アンタがルナリスってお嬢ちゃんかい?可哀そうになぁ。生け捕れって命令されたぜ」


 ジリジリと近づくと、せめてもの抵抗って奴か?箒なんか持って、涙ぐましいこった。


「なんだ?口もきけねぇのか。生け捕れって言われたけどなあ。気が変わったんだ。ぶち殺して、首だけもらっていくぜ。アンタもよ、生け捕りにされたって、いい事なんかないだろうし、死んだほうが楽ってもんだぜ」


 少し話をしただけで、息が上がる。さっきの小娘との戦いが響いてやがるな。こりゃ参ったぜ。


「じゃあ、一思いに一撃で殺してやるよ!覚悟しなお嬢ちゃん!!」


 渾身の力を込めて、獲物を振り下ろした。


 手ごたえを感じ、思わず笑いが込み上げた。


 が、次の瞬間、カキンッと弾かれると同時に、強く身体を蹴られる感覚。誰もいなかったはずなのに、一体誰だ!


 壁に叩きつけられ、一瞬呼吸が止まった。


 信じられない思いで、顔をあげるとそこには二人の騎士が、お嬢ちゃんを庇うように立っていた。セレニータ帝国の騎士服を隙なく着こみ、場違いなくらい優雅に帝国式の礼を取った。


「我は、ルナリス様の護衛騎士ライト・フォン・キアラ」


「我はハルト・デ・マラテスタ。我々の主ルナリス様を、絶対に守り抜く。例え、貴様と刺し違えたとしても!!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ