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三原色信仰の国を追われた無色の花嫁は、帝国で世界を彩る   作者: りっちょまん


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57.餌は撒かれた

間が空いてしまい、申し訳ありません。

「どうだ、ものすごい嫌な奴に見えただろ?」


自分の私室からわざわざ持ってきたソファを運び込ませ、ごろりと寝転んだ。馬車の長旅で少々痛む腰回りがほぐれるようだ。いつもの定位置は心地が良い。


「少々やりすぎな気もしましたけど」


レオが苦笑いをしていた。


先ほどの尊大すぎる振る舞いは、事前にそうしようとヴァルとレオとで相談していた。ルナリスちゃんには内緒だったから、彼女の戸惑いはすごかったろう。


「いや、あれくらいでないと、馬鹿どもを釣るには足りんだろう。それに、ああでもしなけりゃここには入れなかったしな」


うーん、と伸びをし、天井の繊細な彫刻を眺めた。これは悪くない。


「しかし、フランは陛下の護衛の一人ではないですか。さすがにメダカ呼びはいかがでしょうか」


同じく私室より持ち込んだカウチソファにゆったりと寛ぐヴァルは、面白そうに成り行きを見ている。


(――今日もかわいいな)


「なにを言ってる。フランなど、面白がって吹き出しそうにしていたぞ。なぁ?」


と、ドア前で護衛に励むフランに同意を求めると、半笑いの状態で頷き返してきた。


「ほらな? レオももっと傲慢な感じに振る舞ってもらいたかったのだが」


ふふふと笑ったヴァルが口を開いた。


「それは無理というものですわ、陛下。レオはルナリスちゃんに嫌われたくないと思いますし。お店の店員に無礼な態度を取ると、千年の恋も冷めるそうですもの。今回はその最たるものですわ」


ヴァルに援護してもらったことが嬉しいらしい。レオはいささか興奮気味だ。


「そうですよ、私はルーに嫌われたくありません。……しかし、モントローズ侯爵の馬鹿息子の興味は、上手く引くことができたように思います」


「なるほど。それはまた。自分で手放した女に未練たらたらだな。気持ちの悪いことだ」


ソファから起き上がると、ボサボサの頭をヴァルが手櫛で直してくれた。


(――ヴァルの手櫛はいつも気持ちがいいな)


白く柔らかい手にすり寄ろうとすると、ぴしゃりと頭をはたかれた。これはこれでとても良い。


「わかりやすく、ルーを誘拐する企てをしていますしね。とっとと実行してもらって、一網打尽にし、さらにこの国を締め上げようと思います」


前回の誘拐のことを思い出したのか、レオがぎゅっと拳を握りしめた。


「……締め上げるだけでよいのか? たぶん国王も一矢報いてやろうと動くぞ。貴族が貴族なら、王も王という感じだが。そろそろ地図を書き換えてもよかろう」


そう言うと、ぎょっとした顔でレオが私を見つめる。


「ルーの祖国を消してしまうのですか。彼女の意見は聞かずに、ですか」


「消す、だなんて大袈裟だな。消し飛ぶわけじゃない。ただ、国の名前が変わるだけさ」


「いや、それを消す、と言うと思うのですが」


「我が国にとっては鼻息で吹き飛ぶ小国だ。なに、国名が変わっても、ルナリスちゃんの地位は揺るがないし」


「そうは言っても」


「そうは言ってもなんだ」


「……」


黙って考え込み始めた息子を尻目に、にやりと笑った。


「まぁまぁ陛下。レオに何も言わずにそのような事をお決めになったのですか。それはあんまりにも酷いですわよ」


今回は、ルナリスちゃんのこの国での貴族籍の抹消と、セレニータ帝国への貴族籍の移動が最低限の目標だ。それから、あわよくばこの国を取り潰してしまおうと思っている。


こんなことを言っているが、ヴァルには相談済みなので、罪は一緒だ。


「戦力的には申し分なかろ。今はルナリスちゃんの物のようだが、お前の手駒だったあの二人と、それから、二度目の人生を生きている者達がいれば十分すぎる。それに……勝手についてきている者達がいることも、わかっているぞ」


鎌をかけただけなのに、ビクリとわかりやすく肩を揺らしたレオ。


(――まだまだ経験が足りんな、我が愚息は)


ふかのふかのソファに再びごろりと横になると、今後の展望を考える。


さて、カラーリスの連中は、このあとどう動くか。


掌で転がされるか、予想の上を行くのか。


楽しませてくれよ。

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