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三原色信仰の国を追われた無色の花嫁は、帝国で世界を彩る   作者: りっちょまん


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51.貴女の働きに報いたくて

今日も頬がこけ、げっそりした様子のマーサが、ドレスを納品しに来ている。今日で、無茶苦茶な納期で依頼した分の納品は最後である。


「マーサさん、よく間に合わせてくださいましたね」


ベルナールに合図して支払った代金は、当初の予定の3倍の額で。無茶な納期、そしてありえない量にも関わらず、手を抜かず、全てを丁寧に作り上げた職人達へリスペクトも含まれている。


「まさか、こんなにいただくわけには…」


額に汗を浮かべて恐縮するマーサだったけれど、それだけ彼らの働きは素晴らしかった。


「あえて意地悪くいうわね、マーサさん。ねぇ、貴女、私の好意を無下にするというの?」


パシリと扇子を広げて、悪そうな笑顔を浮かべてマーサさんを見やれば、ハッとした顔となった。


(——帝妃陛下に教わったの。うまくできたかしら)


第一皇子の婚約者となった私からの好意を無下にするということは、今後の関係を望まないという、断りの文句になってしまう。そのあたり、マーサさんはマナーに疎い。庶民のような遠慮の応酬では、今後潰されてしまう。


「ベルナール、ビビを呼んでちょうだい」


さっと一礼し、ベルナールが出て行った。いつものコンビは、今日も窓際で護衛に励んでいる。


「マーサさん、意地悪でごめんなさい。でもこれには理由があるの。ビビが来たら説明するわね」


怪訝な顔のマーサさんにお茶を進め、たわいもない話をしていると、ビビが入室の許可を求めてきた。すぐに許可を出し、ビビが入室した瞬間、驚きの声が出た。


「貴女、月桂樹の輪の! 」


「っ!あの時のご令嬢ですね」


驚いた様子の二人は、しばらく見つめあったまま動かなかった。私が椅子を勧めた時、初めて我に返ったようだった。


「それで、二人はどういった知り合いなの?」


キティに新しい紅茶を入れなおさせて、問いかけてみるも、どうにも口が重い様子。


(——あら、どうしちゃったのかしら、これじゃ埒が明かないわね…)


どうしたものかと考えあぐねていると、ふいにビビが口を開いた。


「ルナリス様、のお耳に入れるには、そのっ、とても恥ずかしく…」


下を向き、肩を震わせている。本当に言いたくないのだろう。マーサさんはと言えば、怒りを隠しきれていないような、そんな表情に見えた。商人なのに感情を隠せない位の、怒りがあるらしい。


「キティ」


こそっとキティを呼び寄せ、こそこそと耳打ちした。すぐにコクリと頷くと、実行に移してくれた。


「ビビ様、少々確認いただきたいことがございます。申し訳ございません。こちらにいらしていただけますか」


いつもならおとなしく言うことを聞くはずのないビビが、黙って連れだされた。やはり何かある。目でライト卿に合図し、彼女についてもらうことにした。


「それで、もうビビはおりませんわ。マーサさん、話していただけないでしょうか」


黙ってハンカチを握りしめていた彼女は、戸惑う表情を見せつつ、ぽつりぽつりと話してくれた。


「ルナちゃんは…代金未納のあのドレスを覚えている?」


「もちろん覚えているわ。あの3着のドレスよね。ちょっとサイズが大きくて。でも、それがどう…した……なるほど、そういうことなのね」


コクリと頷くマーサさん。あのドレス、確かにサイズが少し大きかった。特に胸周りと腰回りが。ビビの体型を思えば、合点が行く。


「まさかビビがそんなことをするなんて。…大変申し訳ないことをしました。これは、事前に見抜けなかった私の失態です。どうお詫びしたらいいか、見当もつかないわ。…ベルナール、例の書類を」


ビビと同席してから話そうと思っていたけれど、彼女はダメね。オーダーしたドレスの代金を踏み倒すような罪人を、この場にいさせるわけにはいかないわ。


(——あぁ頭が痛くなってきた。)


「マーサさん、この書類に目を通してください」


恐る恐る受け取ったマーサさんは、訝しむ表情を隠せない。内容に目を通すと、途端に瞳が輝きだした。マーサさんの手がぶるぶると震えている。


「ルナちゃん、いえ、ルナリス様、これはいったい!?御用達とは、まさかまさか!」


それは、第一皇子妃になった時、月桂樹の輪へ御用達認定を与える、という事前通知書だった。


「ええ、その通りよ。今回の働きと品質に、感動してしまって。褒章としてね。」


マーサさんは喜色満面という具合だけれど、じゃあこれで手打ちにしてください、というわけにもいかない。


「マーサさん、もう決定事項だけれど、受けてくださいますね?」


まっすぐに彼女の目を見つめると、商人らしい柔和な笑顔に戻っていた。


「はい、謹んでお受けいたします、未来の第一皇子妃殿下」


それは、友人であるマーサさんからの、最高のカーテシーだった。


その後は、和やかな雰囲気の中、今後の話に花が咲いた。スケジュールや今後の計画について話を進め、彼女を見送った後、


「さて、ビビをどうしようかしら」


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