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三原色信仰の国を追われた無色の花嫁は、帝国で世界を彩る   作者: りっちょまん


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49.誰にも譲れぬものがある

今日も今日とて、ベルナールはとても忙しい。


残り3か月を切った今、帯同する人数や滞在先の手配をしなければならないのに、人数が一考に決まらない。


「私が行かないなんて選択肢はなくてよ、ベルナール」


昼休憩に使用人一同が集まり、今日こそは決めるのだと息まいている。そして、その誰もが、自分こそは必ずついていくのだと主張する。見えない闘気が透けて見えるような気さえする。


「それはどうだろう、コスタンツァ」


正直に言えば、侍女頭と執事が揃って隣国へ行くことはありえない。どちらかが残らねばならないが、馬鹿正直に伝えたところで喧嘩になるのは目に見えている。


「コスタンツァ様とベルナール様は、もう十分ご活躍されたじゃありませんか。今回は後進に譲るという選択肢はないのでしょうか」


キティが挙手しながら発言した。途端に鋭い目線を向けられるが、彼女は怯まない。


「まぁ、なんて思いあがった娘なの、キティ。貴女はまだまだ足りない所だらけよ。なにしろ、馬に乗れないのでは話にならないわ」


ぐっとうめき声が聞こえる。


(——痛いところを突かれたな。だが)


「確かに馬には乗れないが、彼女は人並み以上に、自分の足で駆けることが事ができる。コスタンツァにはできないだろう」


今度はコスタンツァが呻いた。


「だが、隣国の訪問に、自分の足で駆けつける侍女はいただけない。キティ、今回は外れてくれ」


勝ち誇った顔のコスタンツァと、あからさまに気落ちしたキティの対比が凄まじい。可哀そうだが、一人一人、理由をつけて篩うしかできない。


そうして、最後に6人ほどまで絞り込む事が出来た。だが、コスタンツァと、自分、どちらかは残らねばならない。


「ベルナール、最近、腰が痛いと言っていたじゃない。ゆっくり養生したほうがいいんじゃなくて?」


「いやいや、コスタンツァこそ、最近顔色が悪いぞ。あまり無理をしないほうがいい」


やはり最後はお互い一歩も引かず、にらみ合いとなってしまった。


そこへ、お嬢様がおいでになった。


(——使用人用の食堂になぞ、なぜだ)


お嬢様の後ろに控える二人の護衛が、ウインクした。なるほど、彼らの差し金らしい。胸に手を当てて、丁寧にお辞儀をした。


「声が外にまで聞こえていたわ。なにをそんなに揉めているの、二人とも」


声が外に漏れるだなんて。言い合いになったことを恥じた。帯同するメンバーが決まらず、どうするべきか、悩んでいると説明した。


「ハルト卿、ライト卿。二人も来てくれるのよね」


お嬢様が答えがわかりきった質問を二人に投げた。


「もちろんです、ルナリス様」


なぜ自分たちに声をかけるのだ、と言いたげな表情を浮かべている。


「そうよね。」


ニコニコと微笑んでいる。何か悪いことを考えている時、お嬢様はよく微笑まれる。


「このパビリオーネの中で、一番相手をしたくないのは誰か、近衛騎士達に投票させればいいの。あの時、私を助けに動いてくれた者たち全員に。きっと、答えは簡単にわかるはずよ」


二人の護衛の視線が誰に動いたかなど、言わずとも、見ずともわかる。あの時、騎士たちの記憶に刻まれたものは誰なのか、言わずもがな、というものだ。お嬢様も悪い事をお考えになる。


「上位5名だけ連れていくわ。そうそう、キティは別枠よ。私の専属侍女なのだもの。来てくれないと困るわ」


何かを見透かしたかのような、少し冷ややかな微笑みに肝が冷えた。コスタンツァも同じだろう。お嬢様に指名されたキティは、今にも踊りだしそうな勢いで悦びを露わにしている。


「でもね、キティ、馬に乗れるようにならなければ、置いていくわ。そうね、代わりは誰にしようかしら」


チラリと部屋を見渡すお嬢様に、使用人がキリリと引き締まった表情になった。その特別枠に収まるのは自分かもしれない。お互いの闘争心に火がついた瞬間だった。


帯同人数は5名+特別枠1名。


ようやく人数が決まり、ほっとした。


表情を緩めた私に気づいたのか、お嬢様がそっと耳打ちした。


「公には6人よ。でも…勝手についてくる分には咎めたりしないわ」


驚きが顔に出ないようにするのが精一杯だった。


(——本当にあのお嬢様なのですか)


少し見ない間に、少々腹黒くなったお嬢様。


今後の成長が益々楽しみですね。


私は自然と頭を下げた。

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