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三原色信仰の国を追われた無色の花嫁は、帝国で世界を彩る   作者: りっちょまん


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46.君を信じたその先で、空は晴れる

今日も空は重く曇っている。


「おはようルー、今朝の具合はどうかな」


レオ様が様子を見に来てくれた。窓際にはグレン卿と、私の護衛のハルト卿とライト卿が佇んでいる。


昨日は一度仮死状態になってしまい、レオ様の過保護モードが発動してしまっていた。それは彼だけでなく、このパビリオーネに詰めているもの全員に言えるわけだが。


「おはようございます。もうすっかり元気ですよ。食欲も元に戻りましたし」


ベッドサイドのソファに腰掛けたレオ様が、私の瞳をじっと見つめている。


私にはずっと胸の底に秘めて、誰にも言えなかったドス黒い感情があった。


「レオ様、唐突かもしれないのですが……誰にも言えなかったことを、聞いていただけませんか」


(――もしかしたら嫌われてしまうかもしれない。)


そんな言葉が喉元までこみ上げる。けれど、今の私は、レオ様を信じている。


「ルー、もちろんだよ。なんでも聞かせてくれ」


気を利かせた護衛の3人が出ていくのを見届けた。


その後、上体を起こすと、少しずつ呟くように、呪いのような言葉が口から迸った。


どうして、色がないだけで――あんな目に遭わなきゃいけなかったのか。

どうして、勉強しただけで殴られたのか。

どうして、婚約者まで奪われて、家まで追い出されて――。

どうして、ほかの誰かでなく、私でないといけなかったのか。


「うっ、うえぇ……っ」


話をしていくうちに、辛かった過去の自分の感情がこみ上げた。とめどなく涙が流れ、シーツを濡らしていく。


レオ様に言っても仕方のないことだ。どうにもならなかったことも、もう謝罪されていることも――わかっている。


だけれど、闇夜のように昏い感情が、燃え滾るような怒りと共に何年も渦巻いている。


「ルー、っすまない。そんなに抱え込んでいたなんて。ずっと我慢して、辛かっただろう」


レオ様が優しく抱きしめてくれて、子供をあやすように優しく背中を撫でてくれた。


彼の肩口が涙と鼻水でぐしゃぐしゃに濡れていく。


そうしているうちに、少しずつ落ち着いてきた。


呪詛のような言葉達は、私の口から出た後、黒い雲のようにモクモクとあたりを漂った。雲が膨らむたび、胸の奥が軽くなっていく。


「れ、レオ様、こんな気持ちを抱えていた私のことをお嫌いになりましたか」


――私が一番恐れていることだった。ここで嫌われたら、と考えると胸が張り裂けそうになる。


「いや。そんなことは絶対にない。ルーに誓ってないよ。それよりも、ルーもそんな感情を持っていたことに親近感を覚えてしまった。王族としては、失格かもしれないけどね」


「親近感ですか?」


思いもよらない言葉が飛び出し、目を見張ってしまった。


「あの両親は、あんなに適当に見えてものすごい優秀でね。小さい頃は比較されてそれはそれは肩身が狭くて、二人とも死んでしまえばいいのに、と思ったこともあるんだ。だから、辛いことがあったのに弱音も吐かずにいるルーのことが、少し眩しく見えることもあったよ」


レオ様は、いったん言葉を区切ると、頬を優しく撫でながら愛しいものを見つめる眼差しになった。


「でも、ルーにもそういう一面があると知れて、より君を好きになったよ。“無色の乙女”じゃない、ルーを。愛している」


その刹那、あたりを漂っていた黒い雲を貫くような、鋭い光が差し込んだ。


それはあっという間のでき事で、瞬時に雲が消え去ると、昏い感情の代わりに優しく温かな感情が流れ込んできた。


「レオ様、今なら私、たぶんできると思うんです」


何を、と問われる前に天に祈ると、重苦しく分厚い雲が二つに割れ、どこまでも澄んだ青空が姿を現わした。

私を祝福するような、香しいくらいの優しい光も降り注いでいる。


と同時に、


「ルー!!なにをやったんだ!」


驚いた様子のレオ様は窓に飛びついた。外からは人が駆け込んでくる足音も聞こえてくる。


(――本当に、彼を信じてよかったです。ありがとうございます。)


あの空白のページには「レオを信じて」――そう、書かれていた。


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