36.全部バレている
混乱と熱烈な告白から一夜明け、王城へと呼び出されていた。
当然と言えば当然だ。
謁見の間で貴族に囲まれて審問会が開かれるのかと思えば、王の私室に通され、優雅なティータイムがはじまった。
「陛下? 昨日の事でお呼びになったのではないのですか?」
香しい琥珀色の液体を黙って見つめる陛下の横顔は、何を考えているかわからない。
隣に座る王妃陛下は、身内の引け目を差し引いても、変わらず美しい。
珍しく近衛も下がらせ、三人だけでソファで寛いでいる。
「そうそう、昨日のことね、聞いたよレオ。派手にやったみたいだね」
優雅な仕草で紅茶を口に運ぶ陛下に、妙な違和感を覚えた。
いつも長椅子にだらしなく横たわり、ここぞという時にしか仕事をしない怠け者で、王妃陛下にめっぽう弱い。
そんなイメージの陛下なら、こんなティータイムには参加しないはずである。
「相手の騎士団長の腕を切り飛ばし、その後、愛の告白、しちゃったんだって?」
ぶはっと紅茶を吹き出してしまった。
あらあら、と王妃陛下が手ずからハンカチで拭ってくれた。
「なっ! そ、それをどこでお知りになったのですか!?」
「どこって。なぁ、ヴァル?」
ヴァルと呼ばれたのは、母親である王妃陛下。
ヴァレリーが本名だが、人払いされた私室だからか愛称で呼んだようだ。
「ええ、陛下。今朝早く、グレン卿が駆けこんできましてね。それはもう、身振り手振り交えて、涙ながらにとても詳しく教えてくれましたのよ」
(――グレンの奴め!!)
笑いがこらえきれなくなったらしい陛下が、ぶふっと吹きだした。
「いやー今までどんな女性も歯牙にもかけなかったお前にも、そんな一面があったんだな」
「そんなにからかってしまっては嫌われてしまいますよ。でも、ふふ、立会人がたくさんいたそうですから、きっと知らない人はもういないんじゃないかしら」
そう言ってひとしきり笑い転げた両陛下は、かなりたってから、キリリと表情を引き締めた。
その間、私は羞恥心で死にそうになり、今すぐルナリスと駆け落ちして、消えていなくなりたいと本気で思った。
「レオ、お前が昨日したことだが。ほぼ独断で騎士を動員し、国境封鎖に黒い旗の持ち出し、それに街道での大立ち回りと、恋人を手に入れたわけだが。なにか申し開きがあるか?」
急に部屋の室温が下がったような気がした。
陛下は真剣な瞳で、私の顔を射貫くような視線で見つめている。
「最後の部分がやや気になりますが、前に報告書をお渡ししたとおり、ルナリス嬢は無色の乙女です。それに、ご存じの通り、心から愛する女性でもあります。彼女が危険な状況だというのに、何もせず手をこまねく事は、ありえません。もし王家から籍を抜かれ、平民に落とされるとしても、私は同じことを何度でもやります。後悔はしておりません」
見つめてくる圧の強い瞳を跳ね返すように見つめると、瞳がふっと和らいだ。




