↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

43/44

43話 帰宅


 頭がボヤッとしている。きのう寝つくのがかなり遅かったせいだろう。汐彩も本当はまだ眠いのではなかろうか。


 遅めの朝食後、ソファーに並んで座った。夕べと同じく配信動画を一緒に見るためだ。今回はホラー要素ゼロのほのぼの系。


 寝不足な食後に見る映画であり、わかっていたのだが……やはり熟睡一直線だった。


 目を覚ますと、映画はすでに終わっていた。


 肩に汐彩の体重がのしかかっている。

 ぐっすり眠っている。いたずらしたくなるほど可愛い寝顔だ。


 それよりも大変なことになっていた。

 汐彩と手を握り合っていたのだ!


 これって……俺が無意識に握ったのか? それとも汐彩の方が寝ぼけて? あるいは寝ぼけていたのではなく、彼女が意図してのものだとか? まあ、それだけはありえまい。


 とにかくこの状況だが――。


 このまま握り続けていたいのは山々だが、もし汐彩が目を覚ましたら大変だ。言い訳のしようがない。これがきっかけで避けられてしまうのが怖い。


 もったいないが、すぐに手を放すべきなのだろう。信用されているのだからそれを裏切ってはならない。


 名残惜しくもそっと手を解いた。柔らかな感触はまだ残っている。また繋ぎたい気持ちをグッと呑み込んだ。


 汐彩が目を覚ます。


「あっ。あたし眠っちゃった。映画は……終わっちゃったかぁ」


「俺も同じく途中までしか見られませんでした」


「そーなんだ。じゃ、今度また一緒に見よっ」


「はい、また。ところで汐彩さん、コーヒー飲みません? いま淹れてきますけど」


「ありがとう。でも、そろそろスーパーへ買い物に行こうと思って」


「だったら俺が行ってきます」


「ううん、大丈夫。ちょうど今、お散歩したかったところだから」


「そういうことでしたら、買い物はお願いします」


 汐彩はスーパーへと出かけていった。


 その間なんにもしないのは気が引けるので、俺は水回りの掃除を始める。キッチン、風呂、洗面所に続き、最後のトイレ掃除を終えた。



 ピンポーン



 客だろうか? 玄関へ向かう。

 ドアが勝手にガチャッと開いた。

 ということは汐彩が帰ってきたのだろう。


 しかし開いたドアの向こうに立っていたのは、美少女ではなく中年の男。

 その顔をよく見てみる。


「なっ!?」


 父だった――。


「よう。元気だったか、怜己」


「きゅ……急に帰国だなんてどうしたのさ」


「急に? メールで何度も知らせたはずだぞ」


 ふだんの連絡はメッセージアプリのみだ。メールなんてほとんどチェックすることがない。着信があっても、ほぼすべて広告メールだからだ。

 

「そうだったんだ。ごめん、見てなくて」


「ちゃんとチェックしてくれよ」


 怒った口調ではなかった。


 ふだんから父とは不仲ではない。かといって仲がいいわけでもなかった。父は良くも悪くも放任主義だ。怒られたり褒められたりすることはあまりなく、あったとしても素っ気ない感じだった。


「義母(はは)なら買い物に出かけてるけど、そろそろ戻ってくるんじゃないかな」


 一瞬、父は目を見開き、真顔になった。


「ええと、誰が買い物に?」


「だから義母(はは)だよ、義母。お義母さんと言った方が良かった?」


「怜己……」


「な、なんだよ」


「美鈴が買い物に行っていると?」


 美鈴? 美鈴って誰だよ。

 自分の妻の名前を間違えたのか。

 あんたの妻は汐彩だろ。汐彩!


 前の義母の名前を間違えたのなら、俺は気にならなかっただろう。だが汐彩の名前を間違えたのは許せなかった。


「おい!!」


 俺は怒りのあまり、気づけば父の胸ぐらを掴んでいた。


 玄関のドアがまた開いた。


「怜己くんっ」


 汐彩だった。いま帰宅したようだ。


「汐彩さん、コイツはクズだ。こんなヤツとは即刻、離婚した方がいい!」


「怜己くん、ごめんなさい」


「なんで汐彩さんが謝るんですか? 悪いのはコイツじゃないですかっ」


 ワケがわからない。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。