↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

31/44

31話 会合②


 俺と冬牙と柚乃は、他校生たちと食事会をしていた。柚乃の友達である緋吹茉夏が主催したものだが、男女の人数がちょうど四対四の合コンみたいなものだった。


 食事が終わりかけた頃、俺のスマホにメッセージが届いた。老神綺沙からだった。


『これナイショね。いま汐彩たちと一緒に……』


 汐彩と一緒? 気になった。

 老神綺沙に返信する。


「一緒になんですか。点々じゃ、わかりません」


『合コンにきちゃった』


 合コン――?

 汐彩が合コンに?

 嘘……だよな。


 合コンってオワコンなんだろ?

 もう廃れてるんだろ?

 ちゃんと廃れてくれよ。


「そんなことがナイショですか」


 平静を装ったメッセージを返信。


 汐彩が合コンに? 汐彩が合コンに? 汐彩が合コンに? 汐彩が合コンに? 汐彩が合コンに? 汐彩が合コンに? 汐彩が合コンに? 汐彩が合コンに?


『あれれ。思ったより反応が薄い』

「どーでもいいことですから」


 汐彩が合コンに? 汐彩が合コンに? 汐彩が合コンに? 汐彩が合コンに? 汐彩が合コンに? 汐彩が合コンに? 汐彩が合コンに? 汐彩が合コンに?


『場所は駅前街道のカラオケ店』

「そーですか。楽しんできてください」

『もっとビックリするかと思ったのに』

「ハハハ。しませんよ」


 駅前街道の……。

 うん、ここから近い店だ。行こうと思えば行ける。


 行ったところでどうしようもないかもしれないが、真偽を確認したかった。


 立ちあがった。口を開きかけたちょうどそのとき、緋吹も立ちあがった。


「田中、ちょっといいかな?」

「いや、待ってくれ。皆に話したいことがあって」

「後にして。こっちが優先」


 半ば強引にトイレ近くまで連れ出された。

 睨みつけるような緋吹の目。


「まさか田中、帰るなんて言わないよね?」


 見抜かれたか。

 俺、顔に出てたのか。


「悪いけどそのつもりだ」

「却下。あたしの顔、潰さないで」


 緋吹が被害者ぶって何を言う? 

 騙し討ちしたのはそっちだろ。

 俺はエセ合コンが始まるなんて知らなかったんだぞ。


 俺自身の言葉に、ふと思った。

 騙し討ち……。

 もしかして汐彩も騙されて?


 少し冷静になった。


「いいぜ。帰らないでおく。でも次はカラオケでいいか。駅前街道の店で」


「うん、オッケー。その店で構わない。その代わり、もう帰ろうなんて思わないこと」


 テーブルに戻り、緋吹が皆に提案。

 反対する者はなく、あっさりと話は決まった。



 パスタ店を出て、カラオケ店へと向かう。

 俺は気安く話せる柚乃の隣を歩いた。


「そういえば隣にいた子、怜己にグイグイきてたね」


 女子Aのことだろうが、グイグイきていたか?


「単によく話す人ってだけだろ」

「端から見た限りだと、猛烈なアプローチだったけど」


 そんな感じだったかな。



 カラオケ店に入る。老神綺沙によれば、汐彩がここで合コン中だとのことだ。


 今さらだが……来てしまった。俺、何考えてるんだ? やっぱりキモいよな。これじゃストーカーと変わらない。


 バチンと背中を叩かれた。

 緋吹の手だ。


「なんで田中がしょぼくれた顔してんの? アンタがここを希望したから、皆も同意したんじゃん。てことで一番手」


 マイクを渡された。しゃーない。


 歌は苦手だが、なんとか歌い終えた。

 二周目がくる前に、トイレ行きを装って部屋を出た。

 各部屋のドア窓を覗いてまわる。


 こんなことをしていていいのだろうか……とは思いつつも、やはり汐彩のことが気になって仕方なかった。


 いた!

 

 ある部屋のドア窓越しに発見。

 汐彩の姿がちらっと見えたのだ。


 だが……。


 なんだよ、この部屋。女子だらけじゃないか。少なくとも合コンなんかじゃない。あのメッセージは嘘――老神綺沙にからかわれただけだったらしい。


 くっそ、騙された。腹立つなあ。

 だが同時にホッとした気分だった。

 部屋に戻んなきゃ。


 引き返そうとして後ろを向くと、そこに老神綺沙が立っていた。


「あれれ、イトコくん? このお店に本当に来ちゃったんだ」


 ずいぶんと愉快そうに目を細めている。


「た、たまたまですよ。俺の友達がこの店が好きみたいで」

「なーんだ、偶然だった?」


 老神綺沙がドアを開けた。

 俺の手をぎゅっと掴み、無理やり部屋に引きずり込む。


 その場にいる女子たちの視線を集めた。


 当然、汐彩の目も俺に向いていた。手にしたグラスを止めたまま、俺がいることに驚愕しているようだ。


「あたしの従弟を偶然見つけたんで、拉致ってきちゃった。えへへへ。うちの学校の後輩でもあるんだ」


 なんで俺が老神綺沙の従姉なんだよ。それ設定が違うぞ。アンタの前じゃ、俺と汐彩が従姉弟ってなってるんだろ。


 いつもならば、瞬きで汐彩と秘密の挨拶を交わしていたところだ。しかしそんな余裕はなかった。汐彩とは目も合わせられなかった。


 女子たちがワーワー騒ぐ。


「わぁ、綺沙の従弟くん!?」

「かわいいっ」

「男の子の後輩くんかぁ、羨ましい」

「だよね。うち、女子校だから……」


 老神綺沙の手を振り払った。


「仲間が待ってますんで失礼しますっ」


 部屋から逃げた。


 俺たちの部屋に戻ると、ちょうど柚乃が歌っていた。

 手前の空きスペースに腰をかける。隣は女子Aだった。


「怜己、汗かいてどうしたの?」


 正面の冬牙が笑う。


「トイレ行ったんだよな? もしや間に合わず……大を漏らしたとか?」

「アホ。ちげーよ」

「あたしが歌ってるのに、うるさーい!」


 柚乃に怒られた。


 しばらくして老神綺沙から、またスマホにメッセージが届いた。


『さっきはよくも逃げてくれたにゃ?』

「あの状況、誰だって逃げますよ」

『あたしの弟を皆に自慢したかったのに』


 おいおい、さっきは従姉弟って設定だっただろ。


 女子Aがスマホを覗く。

 俺は画面を見せまいと、角度を傾けた。


「ん? 誰との会話? カノジョさん?」

「いいや。極悪非道の不良先輩」

「きゃはっ。昭和のヤンキーみたいな?」

「そう、そんな感じ」


 ここで歌い終えた柚乃に、皆で拍手を送った。

 すると老神綺沙から、またもやメッセージ。


『イトコくん。あたしピンチ』


 嘘つけ。


「どーしました?」

『汐彩に睨まれてる~』


 いい気味だ。


「あなたが原因では? 何やらかしました?」

『何も。でもお店にイトコくんがいたの、あたしのせいって疑ってる』


 あんたのせいです。


「偶然って、言い続けたらいいじゃないですか」

『言い続けたんだけど、信じてもらえなくて』


「きっと日頃の行ないのせいですね?」

『ぐぬぬぬ。なので正直に本当のことを話した』


 嫌な予感。


「汐彩さんに何を?」

『イトコくんがここにいるのは、あたしが呼んだのではなく……』


「続きをどうぞ」

『たまたま合コンで来てるだけって』


 はあ!? 何を言ってくれやがった。

 でもなんでわかった? 老神綺沙に見られたのか。

 いや、これは合コンじゃない。見られたとすれば誤解だ。


 だとしたら……。

 汐彩はどう思ったのだろう。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。