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貞操逆転世界で好き放題  作者: miguel92
日輪編

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95/124

95.もっと優しく起こして



 陽炎ひえんと言うインテリ女が主導する組織、今の男性天国みたいな社会ではなく、男女が対等な社会をつくりたくて俺を拉致した様だ。


 もちろん俺一人では遺伝子の多様性が無くなり、次の世代は近親婚だらけになってしまうので、スタリオン学園から生徒を大量に拉致して来るつもりらしいけど。

 ここは管理社会、そんな簡単に男性を拉致なんて出来るのか?


 考えても仕方が無い、俺はカビ臭い毛布にくるまって、反発がほとんどないマットレスに横たわると、そのまま眠りに入った。



 ▽▽



 硬いマットレスでの浅い眠りは、突然遮られる。

“シャーン”

 遠くで何かが爆発した音。


“シャーン”

“シャーン”


 絶対におかしい、俺は本能的にベッドの下に潜り込む、信じられないくらい埃っぽいけど、今はそんな事を気にしている場合ではない。


 鉄扉に少し隙間があって、時々激しい光が差し込む、そして廊下には大勢の人が溢れているのが分かるけど、俺を助けに来たの?


“  …… 見張りは! …… 裏口も …… なんとかしろ …… ”

 廊下大声で騒いでいるけど、断片しか聞こえて来ない。


“  ……  確保  …… 次に行け  … ”

 別の人達の声が聞こえて来る。


「ここは?」

「開けろ!」

「中の人、ドアから離れてください!」


“ボゴッツ”

 今まで聞いた事の無い音と、風圧、もしかして爆薬を使ったの?


“ギィィ”と蝶つがいを無理やりこじ開ける音、懐中電灯の明かりが埃漂う室内を舐める。

「荒川カイト君、いませんか、助けに来ました」


「早くしろ、次の部屋に行くぞ」


「ですが」


「今は全ての部屋を捜索する事が先決だ!」


 ▽


 俺はベッドの下に潜って毛布にくるまっている、本当に味方か? あの七杜ななもりって言う女の話しではかなりの情報収集力があるみたいだし。


 その後も廊下をバタバタと走る大勢の足音。

「……次はこの部屋だ、呼びかけを」


「わたしです、淡路島です、カイト君―、いませんか?」


 懐かしいお姉さんの声を聞くと、返事をしようとするけど上手く声が出ない。


「ここにいるぞ!」


 ベッドの下から引きずり出すなんて悠長な事をしていられないらしく、重い鉄製のベッドを軽々と動かすと。

 懐中電灯が俺に集まる、目の前が真っ白だよ。


「荒川カイト様ですね」


 呼びかけに、ただ頷いて答えるだけの俺。


「今すぐ医療車に搬送します、強引にストレッチャーに乗せられた俺」


「淡路島さんは?」


「彼女は無事です、さぁ移動しますよ」


「嫌だ、淡路島さんが一緒じゃないと嫌だ!」

 これまでで一番大きな声を出した気がする。



 不意に左手に暖かい感触。

「カイト君、わたしは無事ですよ、さぁ、はやく病院に」


 ストレッチャーに縛りつけられ救急車みたいな車に乗せられても左手はずっと強く握ったままだった。



 ▽▽



 どれくらい救急車に乗っていたのか分からないけど、病院に到着した俺と淡路島さん。

 突入は暗い時間だったとけど、病院の門をくぐる時には東の空が明るくなっていたよ。


「カイト様、こちらの病室でお休みください」


「淡路島さんは?」


「彼女は別の病室で休ませております、ここは男性専用ですので、医療関係者以外は立ち入りが出来ないのです、申し訳ございません」


「ダメだよ、淡路島さんは俺の護衛だよ、ここに呼んで!」

 こちらの世界に来てから、ワガママは言わず良い子にしていた俺だが、今回はダダをこねた、そして要求が通るまでしつこく何回も繰り返したよ。


 理由は自分でも分からない、いきなり理不尽に連れ去られて、あの七杜ななもりとか言う女に色々と吹き込まれたからだろうか。



 男性専用の病院、クイーンサイズくらいありそうな豪華な寝台、その日は淡路島さんと同衾したけど、緊張が解け爆睡してしまいエッチなことなんて微塵もしていない。

 淡路島さんも男性には性的に興奮しないように条件付けをされているので、お互いに乗ったり乗られたりする事無く深い眠りに落ちた。



 ▽▽



「カイト君、夕ご飯ですよ、起きられますか?」


 状況を把握するのにしばらく時間がかかった。

「俺はもしかして一日中寝ていたの?」


「はい、グッスリでしたよ、せっかくの宿泊訓練を台無しにしてしまい申し訳ございません」


「そうだよ、犯人達はどうなったの、教えてよ」


「実はカイト君が寝ている間に事情聴取を受けて来たんですよ」


「それで?」


「それだけです、それ以上は言えませんよ、カイト君も事情聴取を受けると思いますけど、必ず一人ですよ」


「どうして」


「同じ事を見聞きしても受けた印象はまったく違いますから、それぞれの証言、もちろん犯人側も含めてね、それと現場の状況も総合的に判断するのが捜査です。

 本当ならわたしはカイト君の横にいてはいけない存在なのですよ」


「どうしてさぁ」


「わたしが共犯と言う可能性もあるからです、まずは疑うのが警察の基本だと思ってください」


 ▽


 淡路島さんの言う通り、俺は取り調べに呼ばれた。


「…… そうですか、七杜ななもりと名乗ったのですね」


「はい、あいつが主犯ですか?」


「カイト様、今の段階では誰が主犯格かは判断できません、そもそもカイト様が出会ったのが本当の七杜ななもりかどうかも分かりませんので。

 顔とかは覚えていますか?」


「たぶん」


「そうですか、それではこちらを見て、よく似た顔があったら番号で教えください。

 ああ、その中にはまったく関係の無い写真もたくさん混ざっていますよ、自分の記憶を頼りに判断してください。

 それと髪型とかは変わっているかもしれませんよ、メイクでも印象が変わりますし、まずは顔のパーツだけを中心に……」


 俺は何の愛想もない、白い冊子を渡された。

 1ベージに4人の顔が載っていて、全部で20人、次のページを開くと奴の写真が載っていた。


「こいつです、こいつが七杜ななもりです」


「落ちついてください、最後まで全部目を通してください」


 何度も見返したけど、間違いないよ、こいつだよ。

「こいつも捕まえたんですよね」


「さぁ、現在捜査中の事件ですので、詳しい事は言えないのですよ」


 その後俺は七杜ななもりが言った事を一語一句伝えたよ、もちろんスタリオン学園襲撃の話しも。


 ▽


 2時間くらい取り調べを受けたら“病室”に帰された。

「あのさぁ、さっき取り調べでスタリオ……」


 淡路島さんは俺の言葉に“言っちゃダメ”の合図。

「この事件はまだ解決していないの、そう言う事を話すとわたしはこの部屋にいられなくなるから」



 閃光と大音響の手榴弾です、火薬で爆発するタイプではないです。

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