第十一話
同日 夜
「KATE君もう許して……」
「本当に帰らしてよ……」
暗い廃倉庫に響く、悲痛な叫び声。
「ダメに決まってんだろ。
何言ってんのお前ら?」
そこには
「お前らの事守ってるの俺達なんだよ?
だからよ……さっさと五十万持ってこいよ」
KATEは二人にこう告げた。
「そんなお金ないよ……」
KATEの顔から笑みが消えた。
ゆっくりと二人の前へ歩み寄る。
「だからいいバイト紹介してやるって言ってんだろ?
俺の知り合いにさ、お前らの身体を借りたいって人がいるんだよ……いいだろ?」
三島が恨めしそうに呟く。
「大体あれだってKATE君が殺れって言ったじゃんか…」
それに続いて岡島も呟く。
「そうだよ……俺らはいやいや殺らされたんだし……」
KATEは手に持った金属バットを振り下ろした。
「あ?てめぇ、俺は言っただけだろ。殺ったのはお前らだろ?」
「そんな……」
絶望した二人は座ったままだった。
「喉が乾いたな……寛太、酒買ってこい」
「えっ?あぁ……はい……」
イエローダンプ メンバー
津田寛太
同日 コンビニ前
「なんで俺が酒買わないといけないんだよ……クソッ」
カゴいっぱいに酒を放り込み、そのままレジへ向かった。
「ありがとうございましたー」
店を出た、その時だった。
「……お前、イエローダンプか?」
「なんだよ、おっさん?」
「答えろ!お前はイエローダンプの人間か?」
「だったらなんだよ?やんのか?」
津田が殴りかかってくる
俺はそれをかわして
一発顔面に叩き込んだ。
「痛っ」
「答えろ!お前はイエローダンプの人間か?」
「はい……」
俺はEmmaから受け取った地図と学生二人の写真を
津田に見せた。
「お前らの溜まり場はここか?」
「そう……です……」
「この二人もいるのか?」
黙ったままうつむく津田、
俺は再び胸ぐらを掴んだ。
「また殴られたいか?素直に答えろ。」
「……います。」
手を離しすぐ地図にあった場所に向かう。
すると
「あの……」
「なんだよ?」
「二人ともケツ持ちの人に連れて行かれるかもしれないです。」
「なんだと?」
これは急がないとまずいかもしれない。
俺は何も言わずその場を後にした。
「…………なにやってんだろ?俺……」
津田はその場に座り込んでしまった。
地図にあった場所に着いくと、
「おい、ここにこの二人はいるか?」
「何だよ、おっさん?」
「やられたいの?」
一人がバットを振り下ろしてきた。
身体をずらしてかわし、
がら空きになった脇腹へ蹴りを叩き込む。
「ぐっ……!」
「てめぇ…おいやっちまえ!」
残りの連中が一斉に向かってくる。
正面から拳。左から蹴りあげると、
一人が飛びかかってきた。
俺は半歩引いてかわして、
脇腹に肘を叩き込む
男はうめき声を漏らして崩れた。
その背後から、もう一人が金属バットを振るう。
俺はそれを避けて胸に拳を叩きこんだ、
男は膝を落としたその、
瞬間顔面に膝蹴りを入れる。
最後に残った一人が後ずさりしたから
俺はそいつを捕まえて写真を見せつける。
「答えろ。この二人はどこだ?」
「な……中に……います。」
そいつを離し、俺は中へ入った。
「外が騒がしいな……なんだ?」
KATEがこちらを見る。
視線がぶつかった。
「おっさん。ここは関係者以外立ち入り禁止なんだわ……殺すぞ?」
俺は近づきながらタバコに火をつけた。
「お前ら怪我したくなかったらそこどけ」
「てめぇKATE君を無視してんじょねーぞ」
一人が殴りかかってきた。
それを受け止め
「そこどけ……潰すぞ?」
「離せよ…てめぇ……
なめてんじゃねぇ!」
男が空いた手を振り上げる。
その瞬間、俺は掴んでいた拳を引き寄せた。
顔面に頭突きを叩き込む。
「ぐっ……!」
男はその場に崩れ落ちた。
あたりが静まり返る。
俺は煙草の煙を吐きながら、
KATEを見た。
「おっさん…すげぇ気合い入ってるんじゃん」
KATEはまだ余裕の笑みを浮かべていた。
「お前らこのおっさん殺したら三十万やるぞー」
KATEの一言で、周りの男たちの目つきが変わった。
「まじかよ!」
「三十……でかい」
「おっさん一人で三十とかKATE君神かよ」
皆が俺を囲んだ。
「……三十万か」
俺は煙草を床に落とした。
「安く見られたもんだな…せめて一本持ってこい。」
俺はそう吐き捨てた。
「……一本?」
皆が顔を見合わせる。
「意味わかんねぇよおっさん」
一人が鉄パイプを振り下ろしてきた。
俺はそれを受け止め、腕を掴む。
そのまま懐へ入り、
一本背負いで床へ叩きつけた。
「ぐはっ……!」
KATEの顔から笑みが消えた。
「何ちんたらやってんだ。
お前ら、一気にかかれよ」
男たちが一斉に俺へ向かってきた。
「……面倒くせぇな」
一人、二人。
向かってくる奴から順に沈めていく。
「ク……ソ……ッタレ……」
最後の一人が床に沈んだ。
立っているのは
俺とKATEだけだった。
「クソッ……役立たず共が」
俺は新しい煙草を咥え、火をつけた。
「……あとは俺とお前だけだな、小僧」
その隙に、学生二人が出口へ走り出した。
「今のうちだ……逃げるぞ三島!」
「……おう!」
逃げようとした学生二人の腕を、
俺は咄嗟に掴んだ。
「待てよコラッ……
お前らに用があんだよ...俺は」
俺は二人を引き戻し、
後ろへ放り投げた。
投げ飛ばされた二人は、
その場でうずくまった。
次の瞬間、KATEが真正面から
金属バットを振り下ろしてきた。
「よそ見してんじゃねぇーよおっさん」
俺は左腕で金属バットを受け止めた。
「……は?」
KATEの顔から、余裕が消えた。
「こんなもんか、小僧」
俺は金属バットを力任せに振り払い、
そのまま顔面へ拳を叩き込んだ。
「ぐはっ...」
KATEがその場に倒れ込む。
「立てよ小僧……
おっさんの拳はいてぇだろ?」
KATEがふらつきながら立ち上がろうとする。
「悪ぃ……
俺、足癖も悪いんだった……」
すかさず、その顔面を蹴り抜いた。
「ぐほ……」
それでも、KATEはふらつきながら立ち上がる。
「まだ終わってねぇぞ?
……おっさん」
KATEの右手がゆっくりポケットへ伸びる。
ナイフを握ったKATEが、
最後の力を振り絞るように突っ込んでくる。
俺は足元に転がっていた金属バットを拾い上げると
間合いに入ってきたその右腕めがけて、
迷いなく俺は振り抜いた。
鈍い音が倉庫に響く。
「ぁああああっ!!」
ナイフが床に跳ね、
KATEの右手がだらりと垂れ下がった。
握る力を失った指先が、
小刻みに震えている。
「あぁ…………」
KATEはその場に沈んだ。
俺はゆっくりKATEに近づき
「KATE、だったか……
一本ってなぁ……
百万って意味だ」
それを言う頃には、
もうKATEはのびていた。
俺はそいつを床に放り捨て、
学生二人に近づいた。
「おいお前ら来い」
俺は二人の襟首を掴み、そのまま引きずった。
「おい……お前ら、
今から警察に自首しに行くぞ……」
引きずられながら一人が口を開いた。
「俺らだって……
怖かったんだよ……」
「そうだよ……
あの悪魔は何するかわからないし……」
「そんなのシンさんには
関係ない話なんだよ……
あの人は……
ただ優しくて、温かい人だった。
怖かったからって、
シンさんを巻き込んでいい理由にはならねぇ。
てめぇらは人を一人殺したんだ。
……その償いは、ちゃんとしろや」
二人はうつむいたまま
泣いていた。
出口まで向かうと
「うわっ……なんだよこれ?」
さっきコンビニにいた
津田が入ってきた。
「お……ちょうど良かった」
「えっ?」
俺は引きずっていた学生の一人を、
津田に押しつけた。
「お前一人持て一緒に警察に連れて行くぞ」
「えっ?あっ……はい……」
「お前名前は?」
「津田です……津田寛太です……」
「寛太かぁ…いい名前だな。」
そんな会話をしながら、
俺たちは二人を警察に突き出した。
同日 夜
「うわっ……こりゃひでぇな…
おっ!
KATE君発見〜生きてんの?」
この声の主は、
天翔會直系東金一派 若頭
「狂人犬飼」の異名を持つ
犬飼総司
「あらら...伸びてるわ……
まぁいいか」
犬飼はKATEの足を掴み
そのまま出口まで引きずった。
「う……うん……」
「おっ?目覚めたKATE君?」
「い……犬飼……さん?」
犬飼は答えずに、
KATEをそのまま後部座席に
押し込む犬飼。
KATEはわけもわからず横を見ると
そこには東金が座っていた。
「東……金……さん?」
「約束したのにさぁ……
二人、居ないじゃん……
これ約束破ったよね?」
「いや……こ……れは……その」
「もう心配しなくていいよケジメは………
KATE君に取ってもらうから♡」




