和三盆 3
私は、小説と物語ではどう違うのかな、と少し考えてから「はい、好きです」と答え、高校では文芸部に所属しています、と付け加えた。
「私も好きよ。文芸部というのであれば、お仲間やご友人がいるのね」
ご友人、という言葉がちくりと胸に刺さった。
「あの、さっき『見つけてもらえて』っておっしゃっていましたけど、どういう意味なのでしょうか」
胸の痛みはまだ続いていたが、呼吸をするのは随分と楽になっていた。自分がこんなに普通に話せることに、少し驚いていた。
「言葉通りの意味よ、見つけてくれて嬉しいわ」
でも、と私は思った。
「前からここにあったのですか」
「さあ」
女性は、ひときわ美しい笑みを浮かべて軽く首を傾げた。どうやら答えるつもりはないようだった。
「それは、自分で考えないと」
私は、この件について深掘りするのを諦めて、白い月の片割れを口に運んだ。涼しい甘さのおかげでまた少し緊張が解けた。
「私、好きな人がいたんです」
なぜ、そのようなことを口にしたのかはわからない。「そう」と言ったきり、女性は微笑み、何も言わなかった。
彼女はもしかしたら私の言葉を待っていたのかもしれない。しかし、その先のことを語ることは、私にはまだできなかった。
香ばしい薫りの漂う穏やかな時間が流れるのに、しばらく私は身を任せ、やがて店を出てアスファルトの道に降りた。
椿の生垣の脇を進む。
静かだった。
自転車に乗った男子にすれ違った。彼は、私が今出てきた建物に気がつきもしないのか、一瞥を与えることもなく、通り過ぎて行った。




