【第四話】執務室
――サツキとヒナノの案内で支部長室へ向かう。
サツキがノックをしようとするが、ナナセはそのまま扉を開けた。
中では書類の山を崩している男がいた。
「――誰だお前」
「ここは支部長室だぞ」
中にいた男を睨みながら、サツキが答える。
「新しい支部長だ」
男は鼻で笑った。
「は?」
「こんなガキが?」
ナナセは笑った。
「ははは、感じ悪いねぇ」
「通達来てるでしょ」
「今日から僕の部屋だよ」
「えーっと……誰?」
男は腕を組む。
「俺はチャンク」
「前支部長の副官だ」
「で?よそ者が何をしに来た」
ナナセは肩をすくめる。
「ねぇ、オボロ……」
「支部長の副官って支部長より階級上だっけ?」
オボロは即答した。
「いえ、副官はあくまで副官」
「部隊長と同格です」
「支部長同士であっても同階級内で上下はありません」
「だよねぇ」
ナナセは肩をすくめる。
「まぁいいや」
「引継ぎ資料は?」
チャンクは書類の山を指した。
「……そこにあるぞ」
「急な移動だったからな。自分で探せ」
「支部長が変わったからって、何も変わらないからな?」
「それに、ここの領主と気が合わない限り、すぐに後任に代わるさ」
「……へぇ。ここの領主ね…」
「オボロ?」
「少々お待ちを」
オボロは山の中から一瞬で書類を見つけ出した。
「こちらですね」
ナナセは書類をめくりながら言う。
「んー」
「これは表向きだね」
「オボロ?虚偽書類なのわかってて渡したね?」
「この書類の山に目当てのものはないかと」
「……当然、わかっていらっしゃいますよね?」
ナナセは肩をすくめ、そのまま執務室を歩き回る。
そしてナナセは、本棚の前で足を止めたまま視線を走らせる。
しばらく動かないナナセだったが、本を一冊抜く。
「……日誌」
次の棚へ目を向けるとナナセは小さく笑った。
「――ヒナノ、来て来て」
「なになに?本棚壊すの?」
「壊さなくても大丈夫。これ何か気づく?」
「んん~シリーズ物の教本?」
「……えっ!取れないし動かせない!?なんで!?」
「これはね、決まった順番に押しこむタイプだね」
「順番わかるの?」
「チャンクなら知ってるだろうけど……」
「俺は何も知らんぞ!」
「おい!サツキ!剣を向けても変わらんぞ!」
剣を抜きにらみつけるサツキをなだめるナナセ
「サツキ?大丈夫だよ。もうわかったから」
本を4冊、順番に押しこむ。
――カチッ。
棚が動きだす。
チャンクは見ているものが信じられないのか唖然としている。
ヒナノが目を丸くする。
「えっ、なんでわかったの?」
「特別な友人のおかげかな」
棚の裏から隠し金庫が現れる。
「うへぇ……」
「ご丁寧にトラップ付きだねぇ」
チャンクが余裕の笑みを浮かべる。
「その金庫は複数属性魔法とコードが必要だ」
「私にもそれを開くことはできないぞ」
「ふふっ。ナナセは全属性魔法使いよ」
サツキが軽く笑い残酷な事実を突きつける。
ヒナノは明るく笑う。
「魔法解析も得意だよ!」
ナナセは苦笑した。
「先に種明かししないでよ」
指先に魔法を集める。
火…
雷…
土…
その時、ナナセの耳元で聞き慣れた小さな声がした。
『コード簡単だった。ほめて?』
ナナセは周りに聞こえないよう小さく呟く。
「えらいえらい」
――パチッ。
罠が解除された。
チャンクが青ざめながら呟く。
「……そんな」
ナナセは金庫を開けた。
中には金貨と宝石類。
そして。
商業ギルドの印が押されている契約書。
ナナセは笑った。
「うへぇ」
「これは黒だね」
「ナナセ様。これは少々時間がかかりますね」
「任せていただいても?」
「助かるよ。その間に支部内の視察終わらしておくし。」
二人のやり取りに感心してるサツキとヒナノ
「……腕は落ちてないみたいね」
「サツキ!確認したいよね!」
「ナナセがどれくらい強くなったか!」
「ナナセ!まずは訓練場の視察からにしてよ!」
「そうね。部隊長の実力を測るのも必要でしょ?」
「支部長の実力を見せるのも必要でしょ?」
サツキは双剣に手を構えたまま、まっすぐナナセを見ていた。
「――七年分、見せてもらうわ」
ナナセは小さくため息をつく。
「……赴任初日なんだけどなぁ」
【第五話へ続く】




