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【第十九話】父母の音色

――アルルを眺めているオルフェ。


「……その子は“外れ”ではありませんでしたか」


オルフェを睨むナナセ。


気にせずに話しかけるオルフェ。


「……いいのですか?」


「こんな老体にかまけていると、あの子が壊れますよ?」


「ちっ……」


アルルのもとへ急ぐナナセ。


「若い間は困難の連続ですよ?」


「それでは、星の導きがあるその日まで、ごきげんよう」


オルフェとその部下は潜水艦に乗り込み離脱する――


「――アルルちゃん!!ガザミさん!!」


倒れているガザミに手を伸ばすナナセ。


「……急所は避けてるね。……まずは止血をしないとね」


ガラスケースには罅が広がり続けている。


『ナナセ、こっちは私が押さえておくから』


「ポラリス……無理しないでよ?」


『……甘やかしすぎ』


「じゃ、頼んだよ?相棒」


『えへへ……任せて』


――ガザミの治療が進む。


「止血は終わったけど、顔色が良くない」


「……血が足りない」


ガザミの傷口に手を重ね、自身の魔力で血を作るナナセ。


「……」


「…………」


――ガザミの顔色が良くなる


「はぁ…はぁ…」


『ナナセ?大丈夫?』


「……大丈夫だよ」


「それに、まだやるべきことは残っているからね」


アルルの前に立つナナセ


『アルルちゃんの負の感情に、精霊が引っ張られて増長させてる』


「……暴走してるね」


「……まずは抑えようか」


『でも聞く耳持ってないよ?アルルちゃんもこの子も』


「アルルちゃん!聞こえる!?」


「お父さんは無事だよ!!」


……アルルから溢れている魔力が強くなる。


『逆効果だね』


『嫌われてる?』


「……そんなことないから」


「アルルちゃんの精霊の名前は聞けたの?」


『……ダメ』


『恥ずかしがり屋なのかも』


『……私と一緒』


「……ポラリス……集中して」


「名前がわかればまだ手があるんだけど……」


眉間に指を置き考えるナナセ。


~~♪


――その時、どこからか歌が聞こえてくる。


天井を見上げるナナセとポラリス。


「……ヒナノだね」


『――温かいね』


ポラリスの鼻歌が混ざる。


アルルも天井を見上げている。


溢れていた魔力の出力も少し落ち着く。


「――今のうちだね」


ヒナノの歌にポラリスとナナセの魔力を重ねる。


アルルの魔力が落ち着きだすが、激しいのは変わらない。


――ついにガラスケースが砕け散り、押さえていた魔力が暴れだす。


『きゃっ!』


「大丈夫……問題ない……」


アルルのネックレスを掴み、籠っている精霊に直接問いかけるナナセ。


「よし、捕まえた……」


「君は“アルル”じゃないだろ!思い出せ!」


――ネックレスの中で魔力が揺らぐ


「“アルル”の感情に引っ張られちゃだめだ!」


「“アルル”を守りたいんだろ!!」


『私は…“アルル”じゃない……』


「そうだ!!」


『私は……”アルル”と一緒にいたい!!』


光が弾けて、小さな灯が出現する。


灯の揺らめきの中から、新たな影が生まれてくる。


小さな、けど強い意思を持った精霊がポラリスの横に並ぶ。


『一緒に”アルル”を守る!!』


――新たな助っ人と共に、アルルの魔力の暴走を抑えようとする

ナナセたち。


だが、まだアルルの意識が戻らない。


(……時間が足りないかもしれない)


『意識に蓋をしてるから、まずはそこに穴をあけないと……』


――作戦を考えるナナセたちに、またしても助っ人が現れる。


「……うっ」


ガザミが目を覚ます。


「……アルルは?」


周囲を見渡し、事態に気づく。


「アルル!!」


アルルに近寄ろうとするが、体が動かないガザミ。


「ガザミさん!」


「よかった!意識が戻って」


「支部長!!アルルに何が起きているんですか!!」


「魔力が暴走してるんだよ」


「押さえているけど、意識が戻らなくて……」


這いながらアルルに近づくガザミ。


「くそっ、俺が守らないといけないのに」


「アルル!!お父さんだぞ!!」


「迎えに来たぞ!!」


ガザミの声が届くが、体を動かして抵抗を強めるアルル。


その衝撃でアルルの鞄が、ナナセやガザミの前に転がる。


――ガザミの前に、亡き妻の……アルルの母親の形見のフルートが

転がってくる。


フルートの箱を手に取るガザミ。


手が、わずかに震える


「……死んじまっても母親なんだろ?力を貸してくれよ?」


慣れない手つきで、それでも落とさないように丁寧に組み立てる。


アルルに目線を向けてから、構えるガザミ。


「………アルル、お母さんも迎えに来たぞ……」


息を吸い演奏を始めるガザミ。


たどたどしい演奏が進む。


「……」


「…………」


――アルルの魔力が落ち着きだす。


ナナセが場所を移動する。


親子だけの空間が広がっていく――


演奏が進んでいく。


やがて、アルルの体から力が抜けて、目に生気が戻ってくる。


――演奏が終わる。


短く、お世辞にも上手とは言えないが、心に響く演奏だった――


――静寂が空間を包む。


「……ふふっ、お父さん私より下手」


アルルの笑い声が響く。


「アルル!!」


泣きながら手を広げるガザミ。


「お父さん!!」


ガザミのもとに走るアルル。


「……なんでだろ?」


「涙が止まらなくて……」


「いいんだよ、泣きたいときは泣いて」


「心配かけてごめんな、無理させてごめんな」


泣きながら抱きしめあうガザミとアルル。


――無言のままポラリスとグータッチをするナナセ


ポラリスはそのまま姿を消す。


まるで、役目は終わったと言うように……


――その夜、シドーの戦火は静かに消えた。


安らぎの音色に包まれながら――


【第二十話へ続く】


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