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【第十七話】鎮魂の聖歌

〈ナナセサイド〉


孤児院にたどり着くナナセたち。


子供たちの明るい声はなく、静寂だけが広がっている。


礼拝堂だけに明かりが灯っていてオルガンの音が聴こえる。


「――罠か?」


ガザミは警戒を強める。


「行くしかないかな?」


「人の気配もするし」


礼拝堂に入るとオルフェがオルガンを弾いていた。


「随分古い曲だね」


「……これを知っているとは博識ですね」


「以前はもっとレパートリーがあったんですがね……」


オルガンをなぞるオルフェ。


目線を外さないナナセとオルフェ


「アルルちゃんは?」


「あぁ、あの子ですか……」


「――求めていた器とは違いました」


「探し人には、なかなか出会えませんね……」


「“器”とは?」


笑顔で返事をするオルフェ。


これ以上の回答は無いようだ――


「あの子はお返ししますよ?」


「……無事は保証しませんが」


肩をすくめてからオルフェを睨むナナセ。


「何もできなかったの間違いでしょ?」


ナナセの発言に目を細めるオルフェ。


「……あのネックレスは素敵でしたが、過信はよくありませんよ?」


「年寄りには年寄りなりのやり方がありますので」


ナナセとオルフェの視線がぶつかる。


その時オルフェの後ろに女性が現れる。


「にゃはは。オルフェ様、ここまで侵入を許してるんですか?」


「……相変わらず空気が読めませんね、あなたは」


「それと、ここは孤児院ですよ?」


「来るものは拒みません」


「……それよりも見つかりましたか?」


「いえ、領主邸にも商業ギルドにもありませんでしたね」


「ん~そうですか……」


「この街だと思っていたのですが、検討のやり直しですかね」


「……一度本部へ戻りましょうか」


「移動の準備はできてますよ」


「――はははははっ」


不意に笑い出すナナセに視線が集まる。


「何かおかしいかね?」


「逃げる気でいるの?」


「――僕から?」


「……逃げますよ」


ドンッ――


不意に大きな音が響き、礼拝堂の扉が吹き飛んでくる。


チャンクであった巨大なバケモノが現れる。


ナナセは後ろを見ずにヒナノに声をかける。


「ヒナノ?任せたよ?」


「――任せて!!」


ナナセとヒナノのやり取りを見て目を細めるオルフェ。


「意外ですね」


「もっと女性に優しい人物かと思っていましたが」


ナナセは肩をすくめて答える。


「勘違いしちゃいけないよ?」


「騎士団の部隊長を、剣聖を、僕が認めた女性を――」


「あの程度で止められると思わないことだね」


ヒナノは一気にバケモノに飛び掛かる。


触手が襲い掛かるが、一つずつ焼き切っていくヒナノ。


「ん~、これは足止めにはなりそうにありませんね……」


「仕方ありません、ついてきてください」


「ここは狭くなりそうですので」


「――あの子もこの先にいますよ?」


オルガンの横の祭壇裏に消えるオルフェ達。


――隠し通路がナナセたちを呼んでいる。


あとを追うナナセとガザミ。


〈ヒナノサイド〉


バケモノと対峙するヒナノ。


先ほど切り捨てた触手が復活している。


「……ただ切るだけじゃダメ?」


触手の先端からレーザーが放たれる。


回避しながら近づくヒナノ。


大剣を振り落としバケモノを両断するも、背筋に悪寒が走り

距離を取るヒナノ。


――触手の根元から魔弾が散弾状に飛び出す。


礼拝堂の椅子を蹴り上げるヒナノ。


同時に岩の盾も地面からも出現させる。


「遠近両用ゾンビ?」


「……趣味が悪いぃ」


煽るように触手を揺らすバケモノ。


魔法で牽制を続けるヒナノ。


(違う……これじゃない)


(――あの炎)


(でも、ナナセなしでどうやって……)


祭壇に目を向けるヒナノ。


――祭壇横のオルガンが目に入る。


(できるかな?)


(いや……やるしかないよね)


――その時、忍びながらやってきた触手がヒナノの足首に絡みつき

引き寄せる。


化け物の前で宙づりになるヒナノ。


目を瞑っているヒナノに対し、勝利を確信したのバケモノ


嘲笑うように触手を揺らす。


だが。


――不意に触手の動きが止まる。


「……見つけた」


触手伝いに魔力を通し、核を見つけるヒナノ。


そのまま、バケモノを体内から燃やしていくヒナノ。


激しい炎が一瞬で化け物を包み、崩壊と再生が繰り返されている。


触手から解放されるヒナノ。


「どうせこのままじゃ死なないでしょ?」


服と髪を整え、両手を合わせて祈りの構えをとる。


――聖歌を歌いだすヒナノ。


魔力を込めた声が礼拝堂に響く。


透き通る歌声に反応し、化け物を包む炎に変化が現れる。


激しさを増し、青白い炎に変わっていく。


――まるで鎮魂のように。


燃え続ける聖火。


響き渡る聖歌。


――苦しみから解放するように。


バケモノからは、言葉にならない叫び声が響き渡る。


そのまま、灰となり消え去っていく。


「せっかくならナナセに聞かせたかったのに」


「……聞こえてたらいいな」


「――ちゃんと」


祭壇を眺めるヒナノ。


目線を戻すと、灰の中にガラスのような雫型の結晶を見つけるヒナノ。


目を細めて結晶を凝視し、天を見上げるヒナノ。


「……うへぇ、めんどくさそう」


ナナセの顔が脳裏に浮かび、頬が緩む。


結晶に向けて結界を張るヒナノ。


「……ナナセ?まだ仕事増えそうだよ?」


「さっさと片づけて戻ってきてね」


「――アルルちゃんと一緒にね」


【第十八話へ続く】


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