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【第十四話】長い夜

〈騎士団、作戦室〉


作戦室に集まるナナセと各部隊長たち。


そこにボロボロのガザミが入室する。


入室早々、ナナセに詰め寄るガザミ。


「支部長!!あんたこうなるのがわかってたんだろ!!」


「あのネックレスはそのためだったんだろ!!」


「なんで黙ってた!!」


オボロやサツキたちを手で制するナナセ。


「……申し訳ありません」


「たった一人の肉親であるガザミさんには、伝えておくべきでした」


「思ったよりも手が早かった――」


「……アルルは無事なんだな」


「無事です」


「そのためのネックレスです」


「――少なくとも、命に関わる状況ではありません」


ガザミの手を静かに外すナナセ。


「連れ去られたのは想定外でした」


そして頭を下げるナナセ。


「――申し訳ありません」


次の瞬間――


「ッ!!」


ガザミが壁を叩きつける。


鈍い音。


拳から血が滲む。


それでも、もう一度殴りかけて――止める。


「……くそっ」


「頭を上げてください、支部長は悪くありませんので」


歯を食いしばりながら呟くガザミ。


そんなガザミを席へ誘導しながら、声をかけるオボロ。


「ガザミさん、間に合ってよかったと考えましょう」


「ネックレスを渡したのも今日の昼間の話です」


「まだこちらが先手を取っています」


「……あぁそうだな」


その言葉を聞き安堵し啜り泣くガザミ


――ガザミが席についてからナナセは発言する。


「そう、まだこちらが先手を取れている」


「万全ではないが港湾の防衛設備は機能しており、追加の援軍は

到着していない」


オボロが作戦室の戦況図に最新情報を付け加える。


「ですが、内部に潜入していた帝国軍の部隊が動き始めています」


「目標は港湾設備とここです」


「……敵の拠点は?」


「領主邸です。帝国の旗も掲げられておりました」


「まずは迎撃だね」


視線だけが戦況図をなぞる。


「順番に片付けようか」


「ヒナノとガザミさんは現地の部隊長と合流して、港湾設備の

防衛と迎撃ね」


「僕とサツキはここに向かってる敵部隊の迎撃」


「他の部隊長は、迎撃の補助とここの防衛と避難活動の継続」


「……それじゃあ動こうか」


「領主が帝国に寝返っても、シドーは帝国のものじゃないよ?」


「正当性はこちらにあるから遠慮なく行こうね」


作戦室に短い沈黙が落ちる。


「……長い夜になるよ?」


――返礼の後それぞれ動き出す。


オボロに耳打ちをするナナセ。


「……オボロは特命ね」


「……隣から離れるつもりはなかったのですが?」


「商業ギルドに行っていろんな証拠を押さえてきてよ」


「誰かに処分される前に」


ナナセと目を合わせ、ため息をするオボロ。


「……承知しました」


「一人で頑張ってきますね。大仕事を」


ナナセは肩をすくめる。


「報酬は落ち着いたらね」


口角が上がるオボロ。


一礼してから部屋を出るオボロ。


「……私たちに報酬はないの?」


ジト目のサツキと頬を膨らますヒナノ。


「あれ?聞こえてた?」


「…………」


「……デートでいい?」


「……全部解決したらでいいわ」


「ナナセ?もちろん、二人きりでだよ?」


報酬を勝ち取り、口角を上げるサツキとヒナノ。


「……戦闘はいつも後処理が大変だね」


「さてと二人共行くよ?」


――装備を整えて各々戦地に向かう。


〈ナナセ、サツキサイド〉


「数は多いわね、数は…」


「そうだね……シャーマンもいないし、指揮官はあの人かな?」


「魔力はあまり感じないね」


「ヴェルとヌイたちをこちらに配置したのは間違いだったかしら」


「いてくれたら助かることもあるよ」


数をものともしない二人の会話に、ついていけないヴェルとヌイ。


「ねぇ、ヌイ?」


「この人数を何とも思わないっておかしいよね」


「うん……」


「私はちょっと遠慮したいかな」


怖気つく若手に発破をかけるナナセとサツキ。


「ヴェル?ヌイ?大丈夫だよ」


「主戦力は僕らが削るから、あとは他の残敵の掃討はお願いね」


「私との訓練とどちらがいいかしら?」


「「ひぃぃ、やります!やりますから」」


「「わかれば結構()」」


ナナセとサツキは二人して先行して走り出す。


「久しぶりね、横に並ぶのも」


「いつも空いてるのに遠慮するから」


「……うるさい」


「先攻は譲ろうか?」


「任せなさい」


「最近ストレスが溜まっていたのよ」


「趣味探しな?」


「ストレスの原因はあなたのせいよ!!」


サツキは走りながら双剣を抜き、剣を振りぬく。


水と風の合成魔刃が敵部隊を襲い掛かる。


「……ふん、どう?ナナセ?」


「やるじゃん……」


「……もう一回やってみて」


眉間にしわを寄せて再度魔刃を発動するサツキ


サツキの魔刃が氷と風を纏った巨大な霊鳥へ変貌する。


先ほどよりも大きな衝撃音がなり、中心部の敵は氷漬けになっている。


「このぐらいやれるでしょ?」


「人の魔法を勝手にいじったでしょ!!」


「あなたしかできないわよ!!この規模は!!」


「ほら、まだ終わってないよ」


「待ちなさい!!話は終わってないわよ!!」


――離れたとこから見ているヴェルとヌイ。


「やっぱり支部長おかしいよね」


「うん……見てて楽しいけど」


「あの人を振り向かせないといけないサツキ隊長も大変だね……」


「そう?簡単でしょ?」


「サツキ隊長次第なんだから」


「……それが一番難しい原因でしょ」


――そんな部下の憐みの視線に気づかずに、ナナセとサツキは

敵部隊を蹴散らす。


「さてと、こっちは終わりかな……」


「このまま領主邸に行くの?」


「一度ヒナノ側に――」


『ナナセ!聞こえる!?』


不意にヒナノから連絡が入る。


ノイズが気にならないほどの、切羽詰まっているヒナノの声が響く。


「どうしたのヒナノ?」


『助けてほしくて!!』


『このままだと、子供たちが――!!』


【第十五話へ続く】


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