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【第十話】鍛冶ギルド

〈シドー商業区〉


領主邸を出た足で、そのまま鍛冶ギルドへ向かう。


――鍛冶ギルドの中心には大きな魔鉱炉が鎮座していた。


「……うへぇ、大きいね」


思わず声がこぼれるナナセ。


「えぇ……数世代前の設計ですが、このサイズは王都でも見ませんね」


ナナセ同様に感嘆の声を上げるオボロ


「大きいだけじゃないよ?」


ナナセが目を細める。


「あそこの原料加工設備や油圧制御は最新式だよ?」


「精霊も活発に動いているし」


「中身はだいぶ改造しているね」


「どんな技術なんだろうね?」


魔鉱炉を眺めているナナセとオボロに声をかけるドワーフ。


「――見ただけでわかるとは、なかなかのもの好きだな?」


「次の騎士団支部長はなかなか話ができそうだ」


ドワーフに正面を向ける二人。


「……先日赴任しましたナナセです」


「お耳が早いようで?」


「ギルドマスターだからな。独自の情報網ぐらい持っている」


「鍛冶ギルドマスターのジラズドだ」


「あんたとは長い付き合いになりそうだ」


笑顔を返すナナセ。


「では、早速お付き合いをお願いしたくて」


「騎士団設備の補修と武具の販売・修繕をお願いしたいのですが」


「こっちは構わんが、予算は使えるのか?」


「前任と商業ギルドの仲は知っているだろ?」


「えぇ。片づけておきましたから問題ありません」


「ただし、使える金が少ないのも事実です」


「前任が“優秀”でしたのでね、やることが多いんですよ」


“優秀”という表現に笑みをこぼすジラズド。


「“優秀”ね……金が払えないならやらないぞ?」


ナナセは、わずかに口元を緩めた。


「こんなの興味ありませんか?」


オボロが前に出て、ソギイの隠し金庫にあった魔剣をジラズドに

見せる。


「最新式のドワーフの谷製の魔剣には、仕掛けがあるようですね?」


「魔道具が組み込まれていたり変形機構があったり……」


ジラズドの顔を覗き込みに行くナナセ。


「……ジラズドさん、バラしたいでしょ?」


「僕はバラしたいです」


魔剣から目が離せないジラズド。


「これが噂に聞く最新式か?」


「……あぁ、見たのは初めてだ」


「ドワーフの谷製など、ここではなかなかお目にかかれないからな」


「差し上げますよ?今後のご挨拶の一つとして」


笑顔のナナセ。


「いいのか!?あんたは使わないのか!?」


思わぬ贈賄品に目が開くジラズド。


「僕の好みの形状とも違いますし、構造のほうが気になりますので」


「それに、騎士団の復旧のほうが大切です」


「支部内部や港湾設備と防衛設備の補修、それと武具と防具関係……」


「騎士団全体の底上げが急務ですから」


ジラズドはしばらく黙り込む。


――魔剣から目が離れない。


そして、ゆっくりと息を吐いた。


「……わかった」


「やろう。やらせてもらう」


「……あんたは魔道具についても詳しい」


「前任者はクズだったが」


ナナセを見る。


「あんたは悪くない」


「ぜひ一緒に仕事がしたい」


「――ではよろしく頼みますよ」


魔剣に目を輝かせていたが、不意に難しい顔になるジラズド。


「……あんたなら言ってもいいだろう」


「オルフェという商業ギルドの幹部には気をつけろ」


無言のナナセ


「わしはドワーフだから人よりも長生きだ」


「商業ギルドの幹部は何人にも会ってるが、オルフェの過去は

知られていない」


「いつの間にか孤児院の院長になっていた」


「そして前任とそのまた前任の院長と魔力が全く同じなんだ」


「……長く生きてるがそんな事象は聞いたことがない」


「双子や三つ子だろうが魔力には個人差がある」


一度目をつぶり改めてナナセと目を合わせる


「――あれは人間じゃない」


ジラズドは、はっきりと言い切った。


空気が止まった。


「……あんなものは見たことがない」


「十分に気を付けるんだな」


「……ありがとう、助かるよ」


ナナセは短く礼を言う。


(やっぱり、か)


――違和感が、確信に変わる。


【第十一話へ続く】

九十九ペンギンです。

十話まで読んでいただきありがとうございます

6月は事前にお伝えしている通り、下記スケジュールで投稿しますので

引き続き皆さんに楽しんでいただけるように頑張ります。

[投稿予定]

平日:毎日21時更新

土日:毎日19時、21時更新

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