莉奈、その正体~目覚める聖女リーゼ~
目の前に転がる兄の首…。
朔は驚いて、莉奈の顔を見ると、氷のような冷たい表情で、地面に転がった兄の顔を見て、それを踏みつけながら唾を吐き、
「どうせ、まだ生きてるんだから、
よく聞きな。ラーニー。」
兄の顔を、さらに地面にこすりつけるように、靴で何度も踏みつけ、転がして、
「何年前の話になるかしら…、
もう何千年も?いや、何万年?
それくらい前の話になるわね。
私はね、閃…、
あんたに犯されたあの日の…、
消したくても消せない、
忌まわしい記憶と共に、
あんたを恨み続けることで、
今まで生きてきた…。
ただ、この恨みを晴らす為だけに…。
そして、それに関わる周りの奴らを、
一気に潰す絶好の機会を待ち続けた。
何万年もよ?
分かる?この思い…。」
莉奈は、そう言うと天を仰いで、息を吐いてから続ける。
「………。
あんただけなら、
いつでも殺すことは、簡単に出来た。
でも、私の恨みの対象全員を、一気に、
私のこの手で、いたぶり、なぶり殺し…、
地獄に落とすことだけを夢見て…、
これだけ長い年月がかかったの…。
この穢れ切った、私の心も体も、
あんたたちへの恨みを晴らす為だけに、
今の今まで、悪神に捧げてきたのよ。」
憎悪に満ちた目で、ラーニーを見つめる。
そして急に、狂ったかのように笑いながら、積年の恨みを込めた言葉を放つ。
「ははははは。
ねぇ?分かる?
あなたに私のこの思い?
はははは。
分かるわけないかしらね…。
いや、待って…。」
そこまで異様なテンションで話していた莉奈だったが、急に冷めたように、低く重苦しい声で続ける。
「そんな簡単に、
分かってもらっちゃ困るのよね…。
私がどれだけの思いをしてきたか、
どんな地獄を味わってきたかなんて、
簡単に分かってもらっちゃ…、
困るのよ…。」
そう話す姿は、見る者をも、狂気の世界に引き込むほどの負の気で満ちていた。
仲間の心層にも届いたその気は、私たちを負の世界に誘う、強くねっとりと纏わりつくような、怨念の塊だった。
莉奈がその気を放ったと同時に、アースフィアでは、その悪気を感じたリーゼが、ゆっくりと体を起こし、呟く。
「私が行かないと…。」
朔との戦いにより瀕死状態に陥り、アースフィアで絶対安静の中、治癒魔法を受けていたリーゼが、突然目を覚ましたのだった。
様子を見ていた莉月と響夜はもちろん、そのリーゼの声は、仲間たちの心層にも届いた為、皆、驚く。
「この莉奈の怨念と、
朔の闇が融合してしまったら…、
それこそ朔を、もう二度と、
こちらに引き戻せなくなるわ…。」




