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【第16夜④ ~最強であるが故の気がかり~】

 皇子に思いを告げた後、父であるファータ王にも「啓示」を含め、全ての状況を話した私。王は、「啓示」の内容を全てを受け入れ、結婚式に向けての準備、段取り等も並行して行うように、私とエルフィー皇子に話す。


 私は式のための衣装合わせ、アクセサリー選び、装飾用の花の打ち合わせ等、花嫁気分を味わいつつ、王宮所属の皇兵団に国内はもちろん、他国の被害状況の把握と警備の強化、戻ってきた人々への聴取を命ずる。しかし、この星の人々はもともと高い能力を持ち合わせているためか、戻ってきた人数は、拉致された人数に対しての割合が他の星と比べてかなり低い。やはりこのファータでは、「能力を持つ人」が標的になっていることに間違いはなさそうだった。


私と皇子は午前の仕事を終え、たくさんの花が咲き乱れる中庭を散策する。


「1年で、最も美しい季節と言われるこの時期、こうやってあなたと2人、この庭を堪能できるなんて夢のようです。挙式当日もこの花々に囲まれて、あなたと未来を誓い合いたいです。」甘すぎると思えるセリフも様になる皇子の顔を見つめ、


「毎年この庭園は美しい花が咲き乱れるのですが、今年はさらに美しさが際立っています。花々も皇子がいらっしゃったのを喜んでいるようですね。」


微笑み合いながら私たちは同じ時を過ごす。こうやって、きっと私たちは本当の夫婦になっていくのかなと思いながらも、皇子が最強であるが故の気がかりを話し始める。


「エルフィー様。」皇子は振り向いて、


「どうしました?姫様。」私は皇子の手を取って、


「エルフィー様がファータにいらしてから、1つ気がかりなことがあります。」皇子は真顔になって、


「なんでしょうか?」


「エルフィー様のお力は想像を超えるものと聞いております。実際にどのようなお力かはわかりませんが…。もし王族で狙われるとしたら…、エルフィー様なのではないかと案じております。先日(わたくし)も狙われましたが、敵は、私への刺客の動きも把握し、罠にはめようとした皇子の才覚に気付いていると思います。だとしたら次に狙われるのは…。」


 私は、シュバリエで保護されたファータの民の言葉を思い出し、真っ先に標的になるのは皇子ではないかとずっと気になっていた。皇子の力は絶大で、無敵であると知りつつも、敵の正体が見えないだけにその不安は日に日に大きくなっていた。


「姫様。私の身を案じてくれたことだけで、私は幸せです。」少し照れながら続ける皇子。


「今まで誰にも明かさないできましたが、この先一生を共にするあなたには、話しておくべきですね。」


皇子は急に改まった感じで、

「心して聞いてください。」私はその言葉に唾を飲み込む。


「私の力は…、この星を救うことはもちろん…、できます。しかし、それだけの力は、逆に考えると…、滅ぼすこともできるということです。」私は驚きのあまり呼吸を忘れ、一瞬時が止まったかのような錯覚に陥る。そして、


【ゴホッゴホッ】とせき込む。


「大丈夫ですか?姫様。」皇子は私の背中を慌ててさする。


「すっ、すみません。想像をはるかに超えたお話しだったので…。」


「そうですよね。私自身、自分の力が怖いと感じます。ですから、先日姫が話された、神の「啓示」を聞いて、私自身も警戒しなければと思ったのは事実です。このファータにおいて能力を持つ『人』が標的になっているとしたら、敵にとって私を拉致することは、当然視野に入れているでしょうから…。」うつむき加減に話す皇子。


「でも…、姫。それはあなたもです。この前は、「考える」という言葉で濁しましたが…、私には見えるんです。あなたの本当の力が…。」


「本当の力?」


「そうです。まだ解放されていない、あなたの本当の力…。それは…、この星だけでなく、世界を救う力です。姫が話された3つの星の話ですが…。姫、あなたにはこの星、そして他の3つの星を救う力があるのではないですか?」私は全てを見通し、理解しているような皇子の能力に驚き、そして自覚する。


『夢の中とはいえ、私はこの全ての星を救うべき存在なんだ』と…。


「ですから、姫にも同様の心配があるのです。敵としては、私と姫の力が欲しくてたまらない。でも、姫。だからこそ私たちは一緒になるべきなのですよ。離れてはだめなのです。」そういうと皇子は私を引き寄せ、おでことおでこをつけ、


「ねっ。」そう言ってほほ笑む。


 私は、皇子の能力といかなる人をも魅了するその人柄に尊敬の念を抱く。そしてこの人に頼っていけばこの星は安泰だという安心感を得る。


 しかし、その安心感はすぐに水の泡と化す事を、その時は気づくはずもなかった。



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