【第16夜③ ~ファーストキス⁉~】【改】
「わかっていますよ、姫様。
結婚相手として、正式にお会いしたのは、
つい先日の事です。
想い人がいる状況で、
姫様が私に思いを寄せてくれるなど、
到底思ってはおりません。
少しずつでいいです。
私という人間を知って、
いつか本当に私を愛してくれる、
その日まで……、
私は待ちたいと思います。」
そう言ってから、姿勢を正す。
そして、一呼吸おいてから、最高に晴れやかな笑顔で、私を見て、
「姫様……、
私は、あなたを遠い昔、
ファータ城の庭園で、
お見かけしてからずっと、
あなたをお慕い……、
いえ……、こんな言葉…ではないな…。」
そう言って、気恥ずかしさから、少し戸惑うような素振りを見せてから、意を決したのか、再び姿勢を正して告げる。
「私、
エルフィー・ルーク・ジークガイザーは、
莉羽様、あなたを……、
心から愛しています。」
シンプルに告げてから、少し横を向いて照れる皇子。
「かっこつけて……、
何度も思いは伝えてきましたが、
改めて伝えるとなると…、
とても照れるものですね。」
皇子は、顔を赤らめ私を見て、
「今まで、姫様に、
自分をよく見てもらうためにと、
クールでスマートな男を……、
なんて、頑張ってきましたが…、
本当はこんな感じで……、
全然クールでも……、
スマートでもないのです。」
そう言って、クシャッと笑うその顔が、たまらなく素敵すぎて、心臓がいくつあっても足りないくらい……。
皇子の愛が溢れすぎている言葉の、その破壊力に、私の心臓は脈打つ鼓動で、はち切れそうになっている。
私は、嬉しさと恥ずかしさで皇子の顔が見れず、うつむきながら、
「皇子……、
あなたは、とても素敵な方です。
そして、そのようなお言葉……、
私などのような者に、
おかけくださり……。」
何とかそこまで伝えるが、高鳴る心臓に言葉に詰まり、
「あり…がとうござ…います。
ごめんなさい…。
胸がいっぱいで…、
言葉が…。」
とうとう言葉が出なくなってしまった私は、その場にしゃがみ込む。
もうどうしていいか分からない……。
告白するとか、されるとか……、全く経験のない私にとって、今の自分をコントロール出来るはずもなく…、私はただ恥ずかしさで、とんでもなく真っ赤であろう、見るに堪えない今の顔だけは、絶対に見られたくない…と、両手で顔を覆う。
その、何とも初々しい婚約者の様子に、皇子としては、ぎゅっと抱きしめたい気持ちでいっぱいだったが、その気持ちを何とか抑え、その代わりに、私の前にしゃがみ込み、私の両手に手を当て、にこっと笑って、
「可愛いです、莉羽様。」
そう言って、おでこにそっと優しくキスをする。
そして、
「姫様…、
あなた様のその様子……、
私としては、良い方に、
受け取ってよろしいで…しょうか?」
私は、黙ってうんと頷く。
「ああ~、
莉羽様があまりに愛らしくて……、
思わず、失礼を働いてしまいました。
でも……、良かった。
ありがとうございます。
私もあまりの嬉しさに、
胸がはち切れそうです。」
そう言って、しばらく私のおでこに自分のおでこをつけて、幸せを嚙みしめる皇子。
それから、少し心を落ち着かせ、再び話し始める。
「この国はもちろん、
世界を救うことが、
私にとっても使命だと思っていますし、
何よりも…、
それに向かって、あなたと夫婦として、
手と手を取り合っていけることを、
神に感謝したい。」
深呼吸して続ける。
「私が考える姫様の、
解放されていない能力。
それは……、
あなたを慕う仲間や民を、
幸せにする力ではないか…と、
考えております。
姫様との結婚の話が、
まだ公になっていない状況下でさえ、
ジークのたくさんの国民が、
王宮に集まり、皆、笑顔で、
私を祝福してくれました。
相手があなたであるなら…、
この国を幸せに導くに違いないと…。
ジークの民は皆、姫様の噂を以前から、
聞いていたようです。
『ファータ王女の力は強大で…、
そして、その笑顔は、
人々に幸せをもたらす』
とても素敵な噂ですね……。
私もそれを聞いて、
とても嬉しくなりましたし、
ここ数日のやり取りの中で、
それを十分に感じました。
……。
ジークの民に、
国という概念は強くはありません。
人々が皆、平和に安心して暮らせること。
それが第一と考えていますので、
ジークがファータと合併しようと、
それは、さほど問題でもないのです。
民も私とあなたの結婚を望んでおります。
私と、あなたで…、
ファータ、ジーク両国を、
平和な世界に導いていきましょう。」
私は、涙を堪えながら頷き、そして伝える。
「わがファータの民も、
この結婚を強く望んでいると、
聞き及んでおります。
国の安寧を、
私たちの結婚によって実現できる、
そんな嬉しい事はありませんね。」
精一杯の笑顔でそう伝えると、私の頭の中に、一瞬、凱の顔が思い出され……、いろんな思いからの涙が、頬を伝っていくのを感じる。
そんな私の心の内を知る由もない皇子は、私のその笑顔に、さらに表情を輝かせ、
「私の愛に嘘偽りは、ありません。
あなたを心から愛しています。
姫。」
そう言って、私の手を引き……、強く、そして優しく抱きしめる。
ド直球な皇子の愛の言葉と、先ほどちらついた凱の顔を思い出し、少し戸惑いながらも、その愛とぬくもりに身を委ねる。
『自分を愛してくれている人に、
抱きしめられるって……、
こういう感覚なんだ。
心がじんわり温かくなって…、
いろんな思いが満たされていく。
愛されるって……、
こんなに幸せなこと…なんだ。
これほどまでに思ってくれる人を、
もう悲しませるわけにはいかない…。』
初めての感覚に困惑と同時に、この上ない幸せを感じ、これ以上、凱への思いを引きずらないと心に決めた私は、
「皇子、こんな私ですが…、
よろしくお願いします。」
抱きしめられたまま、素直な気持ちを伝える。
すると、顔をくしゃくしゃにした皇子が、自分の腕の中にいる私の顔を見つめながら、
「私こそ!」
そう言って、さらに強く抱きしめる。
気持ちの昂りが、最高潮に達した皇子の、抱きしめるその力の強さに、
「エルフィー様、痛い、痛いです。」
少しはしゃぎながら伝えると、焦った皇子は、慌てて私を体から離して、
「すみません、姫様。
だ、大丈夫ですか?
嬉しすぎて、つい…。」
恥ずかしそうに、そして申し訳なさそうな表情で、本音を漏らす皇子。
そんな皇子を見て、なんてチャーミングな男性なんだろうと微笑みながら、私も本音で返す。
「エルフィー様の思い…、
私も心から…、嬉しいです。」
恥ずかしくて、顔を赤らめながらも伝えると、皇子は私の目を見つめ、その顔が徐々に近づいてくる。
『これは…、もしや?
唇が……、
え?ほんとに?
エルフィー皇子?
……。』
そう思ってドキドキしていると、
「この先は……、
式まで、なんとか我慢します……。」
顔を赤らめながらそう言うと、再び、私の額にそっとキスをする。
エルフィー皇子に負けない位に、顔をさらに真っ赤にしている私を見て、優しく微笑む皇子。
※※※
それから急ピッチで、私とエルフィー皇子の結婚の準備が進められていく。




