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地王伝:第一部外伝  作者: 蓮葉橋架
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外伝第七話:堕落の王都、毒の花園(改訂版)

本伝第七話から第十話のサイドストーリー、地王暦前20年の物語

外伝第七話:堕落の王都、毒の花園(改訂版)


タルカ法国の東端に位置するアンクール王国。

その崩壊は、一人の女の計算ずくの慈悲から始まった。

王妃を亡くし、孤独に苛まれていた王の前に現れた夜の闇を凝縮したような黒髪と、男の理性を一瞬で焼き切る瞳を持つ美女・メル。

その正体は、万象の魔王族の母にして頂点、魔王母メルフェレーンである。彼女がこの国に目をつけたのは、単なる領土欲ではない。

王の傍らに控える若き王女、レイミアの内に眠る凄まじい「資質」を、遠き魔王界から既に見抜いていたからだ。

「王よ。タルカの偽りの神々は、あなたから自由を奪うばかり。私と共に、真の欲望が支配する楽園を築きましょう」

メルの囁きは王の理性を溶かし、彼をタルカへの無謀な叛逆へと駆り立てた。

王はもはや、聖なる誓いも娘の将来も忘れ、メルの指先が指し示す破滅への進撃を開始した。


王が軍を率いて出陣すると、メルは本性を現した。

彼女は王座に深く腰掛け、露わな腿を組みながら、城下に残った男たちを呼び集めた。

「さあ、見せてちょうだい。私に触れる資格があるのは、誰かしら? 最後に一人残った男にだけ、私のすべてを与えてあげる」

その一言が、理性の堰を完全に破壊した。

メルの美貌に当てられた男たちは、親友を刺し、隣人を斧で叩き割り、さらには老人までもが狂ったように殺し合った。

男たちが流す血の臭いと絶叫こそが、メルにとっては何よりの供物であった。

「……ふふ、もっと。その命の火が消える瞬間の輝きこそ、愛おしいわ」

凄惨な殺戮を特等席で眺めるメルの唇からは、悦びに満ちた溜息が漏れる。

母親たちは幼い息子の手を引き、泣き叫びながら王都を脱出した。

こうしてアンクールから「男」という存在は消え失せ、残されたのは女と、死体の山、そして高笑いする女王だけとなった。


ついに一人の男が、血の海を越えてメルの前に立った。

だが、ボロボロになったその男が手を伸ばそうとしたのは、メルではなく、その傍らに座る王女レイミアであった。

まだ蕾のごとき少女でありながら、レイミアから放たれる気配は、熟した果実のように芳醇で禍々しい。

それは、魔王族にとって至高のご馳走である邪王力だた。

「……あ、ああ……レイミア様……あなたこそが……真の救いだ……」

男はメルの存在を忘れ、吸い寄せられるようにレイミアに跪こうとした。

メルの瞳が冷たく細められる。

「私の前で、別の雌を欲しがるなんて。不届きな子には、お仕置きが必要ね」

メルが優雅に指を鳴らした瞬間、男の身体は不可視の力でバラバラに引き裂かれ、メルの糧としてその場で喰らい尽くされた。

メルは返り血を拭いもせず、陶酔したような瞳でレイミアを見やった。

レイミアは、目の前の凄惨な光景に怯えるどころか、恍惚とした表情で返り血を浴びていた。

「最初から分かっていたわ。あなたの内側で渦巻く、この美味しそうな力。これこそが、私が必要としていた『邪王力』なのよ」

メルはレイミアを抱き寄せ、その細い首筋に深く鼻先を寄せた。レイミアは拒絶するどころか、自分を包み込むメルの圧倒的な魔王力に呼応し、自らその身体をメルの胸に預けた。

「……お母様。もっと、私を……」

レイミアの唇から漏れたのは、純粋な服従と渇望の言葉であった。

メルは満足げに目を細め、レイミアの全身を愛おしむように、そしてその邪王力を一滴残らず吸い上げるように、丹念に舐め回し、弄び始めた。

邪王力は吸われるほどに、レイミアの内側から泉のように湧き出す。

メルが与える破壊的な快楽に、レイミアの精神は安らぎを見出し、二人は血と欲望が渦巻く王座の上で、背徳的な愛の巣を築き上げていった。


数ヶ月後、アンクール軍が完敗し、王が戦死したという報が城に届いた。

しかし、メルはレイミアの肌に唇を寄せたまま、嘲笑を浮かべるだけだった。

「王が死んだ? それがどうしたというの。あんな使い古しの種、もうどうでもいいわ。私には、この愛らしいレイミアさえいれば十分よ」

メルは窓の外、タルカの白銀の軍勢が近づく気配を感じ取った。それは、高潔な聖王力を宿した「新しい獲物」の訪れを意味していた。

「さて、次はどんな男たちがやってくるかしら。……ふふ、楽しみだわ。私と、この邪王の蕾を満足させてくれる『強い牙』を、期待しているわよ」

女王の唇から零れた妖艶な笑い声に、レイミアもまた、空っぽの瞳で微笑みを返した。

タルカの騎士たちが、自ら「地獄」の入り口へと足を踏み入れようとしていることに、まだ誰も気づいてはいなかった。

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