8.始まり
崖から転落した瞬間、池の水に落ちた。岩に叩きつけられたような衝撃だ。大気中のマナを吸収して回復した残りカス程度の魔力で強化していなかったら死んでいただろう。必死に岸へ行こうと泳いでいると、津波のように激しい水が襲いかかってくる。
必死に水面へ浮かび上がり、咳き込みながら岸へと這い上がる。
「……っ、はぁ……!」
全身が鉛のように重いだが意識はすぐに左腕へ向いた。時間が経ったのか、体全身が麻痺したのかわからないが、痛みは感じない。そこには何もなく、違和感だけが残り続ける。切られた断面から血が静かに流れ続けている。
気づいたら池の一部が血の色に染まっていた。この出血量、このままだと出血死する
そう思い、震える右手で服の裾を掴んで歯で、無理やり引き裂き、そのまま左腕に巻きつけて力いっぱい締め上げる。
「……ぐっ……!」
視界が揺れる。それでも力は緩めない。血が止まらなければ、そこで終わりだから。
何度か縛り付けて、ようやく血が流れなくなって深く息を吐いた。
「……これで大丈夫か…」
ぐったりと倒れ込んでると、顔にぽつりと水滴が当たる。見上げれば、雨が降り始めていた。
「……今日は最悪な日だな」
濡れた身体から体温が奪われていく。出血量も多いせいか体が重くだるくなっていく。今すぐ寝っ転がりたい。だがこのままだと死ぬ可能性だってある。周囲を見渡すと近くの木のふもとに木の棒があった。頑丈で簡単に折れそうにないちょうどいい棒だ。そう思いながら右手で杖のように持って歩く。
「俺は…王になって……強くなって…みんなを見返すんだ…」
何分も歩き続けた。手の感覚は残ってない、視界もボヤけてきたでも諦められない。必死に歩き続けたいつの間にか王城は見えなくなった。その時周囲を見渡すと少し離れた場所に光が見えた。崖から落ちてる時に見たあの光にそっくりだ。足を引きずるようにそこへ向かうと、それは洞窟だった。
「ようやくか……」
考える暇なく気絶した。
『おまえは……』
暗闇の中で、謎の光がそう呟きながら彼を包み込み再び消えた。
「ここは?」
目を覚ますと入ってきた洞窟ではなく大きな王座がある部屋に目覚めた。アーサー王の王座の間に似てるが、違う所が多々あった。周りを見渡しながら長い廊下を歩いていると、王座の前に1本の剣が刺さっていた。
なんの装飾もないが、ただ鋭さを強さを追求したようなとても素敵で綺麗な剣だ
「……綺麗な剣だな」
そんな言葉が自然と口から漏れる。
無意識のうちに手を伸ばして柄を掴もうとしようとした。
次の瞬間、剣がかすかに輝き、空気中のマナが揺れる。
『起きたのか!』
声が脳内に響き渡った
「……誰だ」
『ここにいるだろう?こっちを見ろ』
何者かがそういいながら俺の後ろに現れる。後ろを見ると現れたのはさっき見てた剣だった。
『挨拶をしよう!我の名はカリバーン。この世に存在する剣の頂点である聖剣カリバーンである。』
自信満々にカリバーンとやらが自己紹介をする。相当自信を込めて言ったのか剣から力が溢れ出ている。
無意識のうちに表情が歪む。
「は?何を言ってるんだ。聖剣っていうのはアーサー王が持ってるものだろ?嘘をつくなよ」
即座に否定する。というのも次代のアーサー王に変わった時に、聖剣もその者に継承されるからである。なので聖剣がこんな所にあるはずないのだ。
『嘘は言っていない俺は聖剣カリバーンだ』
「聖剣カリバーンってなんだ?聖剣ってエクスカリバーしかないんじゃないのか?」
王城の書物で、聖剣は女神が、勇者に授けた1本の剣しかないと書かれていた。この世に2本あるはずがない。
『その知識は間違ってない。我は聖剣エクスカリバーでもあるからな』
呆れるほど自信満々にそう答える。偉大なる聖剣とは程遠い態度には聞いて呆れる。だいたい剣が話すなんて聞いた事がない。
「なら仮にお前が聖剣がだったとしてなんでこんなところにいるんだ?」
『それはだな…』
少しの沈黙の後に聖剣?が喋りだした。魔王を封印した初代アーサー王は2代目アーサー王に聖剣と王座を譲ったが、2代目が聖剣の力を5割程度しか使用できなかった。なんとそれは、3代目アーサー王も同じだった。このままだと魔王の封印が解けた時には聖剣の力を発揮できずに、魔王に倒されてしまうだろう。
そう思い初代から3代目のアーサー王と聖剣でこの空間を作り、継承者のための準備をしていたと言うのだ。聖剣を隠してる間に、僅かに纏ってる神気を完全に隠すために聖剣の力を剣と鞘にして半分にわけたという。
「……意味が分からねえ」
静かに黙り込んで考える。それなら何故こんな遠くて気づきにくい山奥に隠したんだ。そして何故俺はこいつと出会えたんだ。
『考え込んでるとこ悪いが…』
顔をあげると聖剣の柄が俺の手元に来る。
『俺と契約して4代目聖剣使いになれ。サンペリウス・アーサー』
その瞬間、後先考えずに柄を握ってしまった。自分でもなんで手に取ったのかわからない。でもなぜか後悔はしていない。こいつとなら強くなれる。
そう直感が言ってたから……




