4.大会で出会う真逆の存在
朝の空気は、どこか張り詰めていた。王都の中央にある大闘技場には、すでに多くの人が集まっている。
歓声が尽きなかった。期待と興味が入り混じった、落ち着かない音だった。
出場者控えの通路は静かだった。石壁に囲まれた空間に、足音だけが響く。
サンペリウス・アーサーは、他の出場者たちと同じ場所に立っていた。
誰も話しかけてこない。視線だけが向けられる。値踏みするような目、すぐに興味を失う目など様々だった。
「ガルド入場だ」
騎士がそう告げると誰もが羨む筋肉を持つ斧使いの男が、光の中へ歩いていく。観客のざわめきが一段と大きくなる。
一人、また一人と選手が呼ばれ、光の中へ出ていく。
歓声が上がる者もいれば、名前を呼ばれて期待を背負って出ていく者もいる。
「サンペリウス・アーサー来い」
名前が呼ばれる。少しだけ間があった。
歓声はない。観客席にはざわめきだけが広がる。
「あいつか」
「勇者の血筋の……」
「でも弱いんだろ?」
隠そうともしない声が、客席から落ちてくる。
サンペリウスは何も言わず、前に出る。光の中に足を踏み入れる。視界が一気に開けた。
闘技場。
広い円形の舞台。周囲を囲む観客席。
すべての視線が、今この瞬間だけこちらに向いている。
だが、それもすぐに散る。興味がないからだ。サンペリウスはそのまま歩き、所定の位置に立つ。
対面には、対戦相手がいた。
無駄のない立ち姿。視線はまっすぐこちらを見ている。油断も、軽視もない。ただ純粋に「相手」として見ている目だった。
「シエラ・ヴェルグリッドだぞ」
「魔力もオーラも一級だって話だ」
「特性持ちだろ、あれ」
「さすが聖法武器を保有する家系の跡継ぎだな」
観客席から小さな声が漏れる。
「自分とは真逆だな…」
サンペリウスは誰にも聞こえない声で呟きながら、剣を見下ろす。
手にあるのは、訓練で使ってきた木剣ではない。大会用に用意された真剣。わずかに重く、まだ馴染まない。
それでも構える。
「……あなたが、アーサー王家第4王子の」
シエラは小さく呟きながら、冷たい瞳のまま槍を構える。
サンペリウスも、静かに構えた。
「いつもの訓練を思い出せ、いつも通りでいい」
誰にも聞こえない声で、言い聞かせる。
審判が中央に立ち、手を上げると、一瞬にして場の空気が引き締まる。
「これより、予選第十二試合を開始する」
「構え」
お互い武器を相手に構える。
「始め」
・大会規定
本大会では、事前に刃を潰した専用の真剣を使用する。
勝敗は以下のいずれかで決定される。
・相手の降参
・戦闘不能
試合は上記の条件が満たされるまで続行される。
なお、殺害は固く禁じられており、魔力は魔術師だけ使用可能で他のものは魔力とオーラは禁止である。
シエラ・ヴェルグリッドは、聖法武器を受け継ぐ六聖家の一つ、槍を司る家に生まれた少女であり、次代の使い手として期待されている存在である。




