16.二つの魂
ゼクルムは更に魂の奥へ向かう。冷静で暗殺を生業とするゼクルムはサンペリウスの魂の強さに惹かれ、どんどん奥へ向かう。
魂の中心へ急いで向かう。
予想以上に時間がかかり、残り時間が二分になっていた。
「なんだこれ」
魂の中心にある魔獣にとっての核に十本の鎖が刺さっていた。魔力やオーラ、神聖力でもない不吉な力がサンペリウスの魂を封じていた。近づきたくもないほど恐ろしい力。
『な……を…いる』
誰かの声が聞こえた瞬間振り返ると鎖と同じ不吉な力を纏っている存在が現れた。この空間には一つの魂しか存在できないはず。
「これもこのガキの魂ということなのか……」
ゼクルムは複数の人格を宿してるやつの魂を見たことがあった。そいつは魂の色が何色もあっただけ、魂は一つだけだった。一人の体の中で二つの魂が宿っているなんてありえない。
「で………いけ…お………まだ」
魂から手が生えてゼクルムの左耳に目掛けて伸ばす。ゼクルムが危険を感じて避けて切り傷程度で済んだが避けていなかったら左耳は無くなっていた。
「なぜ攻撃が……」
ゼクルムの特性《魂観者》は魂に攻撃することができない代わり、ゼクルムも攻撃を受けないようになっているはずだった。
ゼクルムが伸びた手を掴もうとしようとしても触れられない。必死に避け続けるが無数に増えていく手に行き場をなくし、追い詰められて目の前から巨大な手が迫ってきた。
死を悟り静かに目を閉じて攻撃されるのを待つ。
「ここま……」
「おいそんなに汗かいてどうした?」
目から光が入り、目を開けると団長達がゼクルムの周りにいた。ちょうど五分経ったのだ。攻撃で切り傷を負った耳の傷はなくなっていた。だがまだ傷があるような感覚が残り続けた。
「どうだった?」
心配するように団長が声をかけてきた。なんて言うのが正解なのか、あの魂はあまりにも危険で今すぐにでも殺さないといけなかった。
だがゼクルムは興奮していた。今まで見たこともないほど強大な魂を見て、こいつの将来が気になってしまったのだ。たとえあの魂に殺されようと……
「特に…危険はありませんよ」
ゼクルムは初めて団長に嘘をついた。そしてもしサンペリウスが暴れたらその時は命をかけて止めると心の中で誓った。
サンペリウスはギルドのボロボロで古びた寝室に寝かされていた。目を覚ましたのは試合から三時間後だった。
「ここは…」
周りを見渡すと、聖剣は壁に置かれており服は脱がされて、体には包帯が巻かれていた。
「その左腕義手だったとはな」
ノーズが寝室の椅子に座ってリンゴを剥きながら話しかける。
「それより入団試験合格おめでとう。これからよろしくなサリバーン!」
勢いよくサンペリウスに手を差し伸べる。
「は……?」




