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【第一章改稿中】転生したヒロインと、人と魔の物語 ~召喚された勇者は前世の夫と息子でした~  作者: 田尾風香
第二十章 勇者を必要としない世界へ

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呼び出し

「レーナニア様たちの結婚式にね、お兄ちゃん来るんだって」

「ああ、そうらしいな」


 兄クリフから手紙が届いた翌日、学園でアレクにそう告げると首肯された。その表情は、とても不満そうだ。


「知ってるんだ」

「父上のところにも連絡が来ていたからな。というか、無断で勝手に来るわけにはいかないしな」


 そりゃまぁそうだ、とリィカも頷いた。隣国の公爵という地位にあるクリフが、リィカに伝えただけで来ていいはずがない。


「どうしても忙しいらしいから、国王・王太子ともに欠席。だから、クリフは国王代理でもある。あいつにそんな大役が務まるのかはしらないけどな」


 モントルビア王国は、国王が代替わりしてまだ一年たっていないのだ。しかも、前国王たちが色々やらかしての国王の交代。フェルドランド国王もジェラード王太子も、まだまだ忙しい。


 それでも付き合いのある隣国であるから、本来ならば無理矢理でも参列するべきだ。それがベネット公爵のクリフが代理という形になったのは、妹であるリィカがアルカトル王国にいること。そして結婚式を挙げるのは、リィカの婚約者であるアレクの兄。


 ここまで条件が揃っていると、クリフが参列しないわけにはいかない。そして一つの国からの参列者を増やしすぎても、受け入れるアルカトル王国側が対応しきれない。よって、これ幸いとクリフが代理とされたのだ。


「お兄ちゃん、やろうと思えばできるんじゃないかな。コーニリアスさんもいるし」

「そのコーニリアスが来るのが、一番父上は嫌がっていたぞ」

「そんなに怖くないと思うけどなぁ」


 色々仕事のできる「すごい人」ではあるとリィカは思うのだが、国王が嫌がるほどの人だとも思えない。年を取って丸くなったのか、あるいはまだまだリィカが未熟だから読み取れない何かがあるんだろうか。難しいなと思う。


「あと俺たちの知っている人たちで来るのが、デトナ王国のテオドア殿、トルバゴのクリストフ殿、聖地のイグナシオ殿、ルバドールのルベルトス殿あたりだな」


 確かに知っている名前ばかりだ。テオドアが来るのは、少し楽しみだとリィカは思う。魔法を教えて、今はどうなっているんだろうか。


「こういうときって、国のトップの人が来るわけじゃないんだね」


 クリストフとイグナシオはそれぞれトップだが、後は王族ではあっても国王ではないのだ。

 渚沙の記憶の話だと、こういうとき結構国王という存在が来ていたような気がするのだが、やはり実際にはそうはいかないのか。そんなことを思いながらリィカが聞くと、アレクは少し笑った。


「デトナは大きな被害を受けての再建が、モントルビア以上に大変だから、国王陛下もそれどころじゃないんだろう。ルバドールは皇帝陛下が亡くなって、ルードリック殿が皇帝になったばかりだ。やはり忙しいんだろうな」


 デトナ王国は大量の魔物に国を攻められて、王都を除くほとんどの町や村が攻撃された。国のほとんどが壊滅的な被害を受けた。生き残りもそれなりにいるらしいが、その再建は他のどの国よりも大変だろう。

 国王の息子であるテオドアが来るだけでも、だいぶ無理をしている可能性が高い。


 ルバドールは魔王が倒れて間もなく、皇女のルシアがリヒトーフェン公爵の息子であるバジェットと結婚式を挙げた。皇女の結婚式とはいえ降嫁となるため、他国から来賓を呼ぶことはなかった。そもそも魔族との戦いの直後だから、そんな余裕がある国は少なかっただろう。


 そして、結婚式が終わるのを待っていたかのように、高齢だった皇帝が崩御し、皇太子のルードリックが即位したのだ。


「トルバゴや聖地のようにたいした被害もなく落ち着いていれば、国王であっても諸外国へ出かけることはある。こういってはなんだが、タイミングはあまり良くないな」


 ルシアの結婚式ほどではないにしても、まだまだ魔族との戦いの爪痕が残っている時期だ。上層部が自由に動けるほど、情勢が安定していない国も多い。そういう意味では、外国の要人たちが集まるような結婚式を行うタイミングは、あまり良くない。


「それでも、やるんだもんね」

「ああ。結婚というのは慶事だからな。明るい話題を国民たちに提供できるし、それを行えるくらいには国が安定しているという証明にもなる」


 だからこそ、魔族の襲撃をなんとしても防がなければならないのだ。


「――でだ、リィカ」

「なに?」

「父上から呼び出しだ。今日、学園が終わった後に一緒に城に来てくれ」

「えっ!?」


 リィカの顔が真っ青になった。


「わたし、何かしちゃったっ!?」

「違う違う、そうじゃない。単に話しておくことがあるというだけだから、気にするな」

「……ほんっとうに、大丈夫?」

「ああ」


 それならいいけどと思ったが、「話しておくことがある」というのもなかなかに怖い。一体何だろうと考えて、リィカはその日一日、授業に身が入らなかったのだった。


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