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 ...デート楽しかったな。


翌週の月曜日、いつもの曲がり角で彼女を待ちながら、楽しかった1日を思い出していた。

何度か行ったことがあるプラネタリウムも、久しぶりに行くととても感動したし、ほとんど彼女に食べられてしまったけど、チョコレートフォンデュも美味しかったし、プレゼントもとても喜んでもらえて嬉しかった。

…何より、彼女がとんでもなくキレイで、可愛くて、心を鷲掴みにされてしまって、あの日、家に帰ってから今日まで、ほぼずっと彼女のことを考えてしまっている。

自分でも驚いてしまうほど、彼女にハマってしまっているのが分かる。

恋愛とは恐ろしい。

自分がバカになってしまった気がしてならない。

今まで、宇宙のことにしか興味がなくて、周囲が恋愛で一喜一憂しているのを少し冷めた目で見ていたツケが回っているのだろう。

誰かを好きになるとは、今までと違う自分に出会うことなのだと初めて知った。

お母さんが前に”結局、ある程度は若いうちに恋愛経験積んでおかないと、後々苦労するんだよ。”と言っていた意味が分かる気がした。

こんなに自分の感情が大きく揺れ動かされるようなことを、大人になってから初めて経験したら振り回されて終わるだろう。

そう思うと、彼女を好きになったという経験は、絶対に自分の糧になるはずだ。

そんな風に前向きに考えてみるけど、あと2ヶ月と少しで、彼女に会えなくなる寂しさを紛らわせることはできない。

彼女を好きになればなるほど、もう少しで必ず訪れる別れを想像するだけで胸が苦しくなる。

こんなに彼女のことばかり考えているのに、彼女がいなくなってしまったら、俺はどうなってしまうのだろう。

そんなことを考えながら目を瞑ってしばらく唸っていた。

ふと誰かの気配を感じて目を開けると、目の前に宙がいて、俺は思わず声を上げた。


「うぅわぁっ!…お、おはよう…。」


ずっと考えていた相手が急に現れて動揺してしまった気持ちを落ち着かせながら挨拶をすると、彼女は軽く笑ってから口を開いた。


「おはよう、太星君。どうしたの?考え事?」


そう言いながら俺の顔を覗き込んでくる。

こういうときの彼女は相変わらずとても距離が近い。

似たような場面は今日まで何度もあったけど、彼女への好意を自覚してしまった今となっては、緊張感は段違いだ。

自分の心臓の音があまりにもうるさい、いい加減落ち着け、俺。

ゆっくりと深呼吸をしてから、俺は話し始めた。


「…期末試験の勉強してたら、数学の問題で分からないところがあって、ずっと考えてたんだけど、やっぱり分からないから、宙に聞こうかなと思っていたところに本人が来たからびっくりして。」


我ながら上手く誤魔化せたと思う。

以前、彼女が"嘘の中に、本当のことを混ぜるとリアリティが増す"と話していたけど、実際、宙のことばかり考えている状態はまずいと思って、気を紛らわすために、試験勉強を始めたところ、1問だけ解説文を読んでも理解できなかったものがあったのだ。


「もう勉強してるんだ、偉いね。

じゃあ放課後、一緒にやろう。」


彼女は少し驚いてからそう答えて、歩き始めた。


怪しまれなくて良かった…。


そう思って安心していると、彼女は急に立ち止まって俺の顔をじっと見た。


え?…どうしたんだろう。


「…土曜日の私のよそ行きの姿を見て、その可愛さを再認識して、私と面と向かって話すのに照れちゃったのかと思った。」


そう言うといたずらっぽく笑って見せた。


…なんか、俺の心の中ほぼバレてる気がする…。


どう考えても顔が熱いので、今、絶対に顔が赤いはずだ。

そんな俺の様子を見た彼女は満足そうな表情を浮かべていた。

やっぱり、宇宙人って人の心読めるんじゃないだろうか。

結局いつも、俺は彼女のペースに飲まれてしまう。

そんなことを思って、ついため息をつきそうになってしまったけど、ふと、今日一番に彼女に伝えなければいけないことを思い出した。


「あのさ、昨日届いたよ、天文宇宙検定の結果。」


俺がそう言うと彼女は、すぐに俺のことを見つめてきて、その表情には緊張感が漂っていた。

彼女の待機場所は住所がないということから、彼女の結果も俺の家に届くように設定したのだった。


「…太星君は結果見たの?」

「まだ。せっかくなら一緒に見ようかなと思って…今、見る?」


手元に結果があるのに、見ないで我慢するのは大変だったけど、どうせなら彼女と一緒に結果を確認したかったのだ。


「…うん。絶対気になっちゃうから、今、確認しよう。」


彼女がそう言って真っ直ぐな目を向けてきたので、俺は自分の鞄から2通の書類を取り出して"宇野宙"宛の分を彼女に渡した。

それぞれ封筒から結果通知書を取り出し、あとは折りたたまれている用紙を開けば結果が分かるという状態にしてから、顔を見合わせた。


「じゃあ…せーので開こうか。」

「…うん。」

「「せーのっ」」


同時に2枚の用紙を開くと、どちらにも"合格"の2文字が書かれていた。


「やった!受かった!」


彼女は瞳をキラキラと輝かせながら叫んだ。


「良かったね、俺も合格できた。」


俺もそう言うと、彼女が両手を出してきたので、2人でハイタッチをした。

自分の努力が報われたことも嬉しいけど、彼女と一緒に合格して喜びを分かち合えるのが何より幸せだった。


「あー、これは合格祝いしなきゃね。

期末試験の勉強は明日からにして、ひとまず今日はお疲れ様会しようよ。」

「そうだね。今日は合格の余韻に浸りたい。」


彼女の申し出にそう応えてから、誕生日祝いで、スケジュールの都合上、泣く泣くできなかったけど、本当はやりたかったことを思い出した。


「…よかったら、ケーキ食べない?

宙の誕生日祝いでチョコフォンデュを食べに行ったから、できなかったけど、誕生日祝いと言えば誕生日ケーキだからさ。

合格祝いも兼ねて、どうかな?」


俺が提案すると、彼女はまた瞳をキラキラと輝かせた。


「賛成!…もちろんチョコレートケーキで良いんだよね?」


これは、俺が絶対に了承するのを見越したうえで確認されている。


「もちろん。意義なし。」


彼女の希望に沿うように返事すると、ケーキを思い浮かべたのか、彼女が幸せそうな表情になった。

そんな顔を見て、俺もついニヤけてしまう。

チョコレートケーキ1つでここまで嬉しそうにするなんて、可愛すぎる。


「放課後、ケーキ屋さんで買ってから理科準備室に戻る?」

「うーん。できなくはないけど...天体観測でもない時に、何かを食べる場所として使ってるのがバレたら、先生たちにあんまり良い顔されないんだよね。皿とかフォークも無いから、それも買ってたら時間も掛かるしね。」


天体観測は夜遅くまで残らなければいけないので、食事が必要だという理由で、特別に飲食を許可してもらっている。

なんでもない日に、食事でもなくケーキを食べていたら、眉を顰められてしまうだろう。

俺の言葉を受けて、彼女はしばらく唸っていたけど、何か思いついたような表情になった。


「ねぇ、図々しいかもしれないけど、太星君の家で食べちゃダメかな?」


彼女に言われて、その手があったかと思った。


「あ、全然大丈夫だよ。

お母さんの貰い物の紅茶とかもあるし、ゆっくりできるし良いと思う。」

「じゃあ、お言葉に甘えて、お邪魔させてもらうね。ケーキ楽しみだなー。

浮かれ過ぎて、どの授業も、どんなケーキ買うかを妄想して終わっちゃいそう。」


彼女はすでにケーキのことで頭がいっぱいそうで、にまにまと笑いながら、歩いていた。

そんな様子を微笑ましく見ていたけど、ふと冷静になると、平日の今日はもちろんお母さんは仕事でいないので、家に俺と彼女の2人きりになる。

そのことを認識すると、一気に緊張してきた。

…あくまで健全な理由だし、俺が妙な気を起こさなければ大丈夫なはずだし、いくら好きな人と二人きりだとはいえ、さすがに自分の理性はそんなに脆くはないはずだし…でもそう考えれば考えるほど、逆に意識してしまい、俺は授業中もずっと上の空になってしまった。





 放課後、クリスマスケーキを購入したケーキ屋さんに向かい、ショーケースに並ぶケーキを眺めていた。


「ホールケーキの4号にするのも良いけど、せっかくなら違うケーキを2-3個選んで、色々楽しみたい気もする。

でも、そうしたらバースデーケーキ感がないかな。うーん悩む...。」


何か深刻な状況に陥っているような真剣な表情をしているけど、悩んでいる内容は、どのケーキにするかである。

表情と考えていることのギャップがおかしくて、俺は少しだけ笑ってしまった。


「クリスマスでホールケーキ的なものを食べたんだし、今回は気になるやつ何個か選んだら?

ハッピーバースデーって書いてあるチョコプレートは追加で頼めるみたいだから、それも買えば誕生日感もあるし。どう?」


俺の提案は彼女の悩みを解決したようで、彼女はパッと明るい表情になった。


「うん!そうする。じゃあガトーショコラと、オペラと...チョコレートケーキで。」


最終的にこの店に置いてあるチョコ味の3種類のケーキをコンプリートできた彼女はとても満足そうだった。

お母さんのお土産として洋菓子のアソートセットも追加で購入し、家へと向かった。


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