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スイスの会社に雇われて、アルジェリアで先生になった件について ~日本人はぼく一人。生徒は砂漠のプラント技術者たち~  作者: Ryoichi


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無理やりクリスチャンにされて過ごしたクリスマス

 授業での戦場のような日々も、あっという間に過ぎた。


 もう12月。そろそろクリスマスだ。アルジェリアはイスラム教の国。もちろんクリスマスはない。だから国の祝日にはなっていない。しかしこの職場では、大半がフランス人。クリスマスは、彼らにとって大切な行事だ。一家が年に一度集まる日でもある。


 そこでムッシュ・ガリッグらが、元請けの日本企業と交渉した。講師たちは全員休みとなった。講師の中で、ぼくは唯一の日本人。本来は休みを取ってまで、祝う必要はない。でもみんなが気を利かせて無理矢理クリスチャンということにして、了解を取ってくれた。おこぼれにあずかることができた。同僚の何人かは、家族と聖夜を過ごすためフランスに帰国した。


 残りの大半は、いっしょにクリスマスを祝う。パーティーは、トレーニングセンター内にある大会議室でおこなわれた。ここは校舎から離れた建物の一室で、いちばん奥に位置する。いくら騒いでも怒られたりはしない。


 フランス人はパーティー好きだが、とくに今回は格別に豪華だった。テーブルには、奥さん連中が作ったとびきりの料理が並んでいる。自宅から持ち寄った料理もあれば、センターの食堂を借りて調理した物もあった。ある奥さんに

「ムッシュ・リョウイチ、どれがおいしいですか?」

と聞かれた。


 妻同士がお互い張り合った結果、かなり高レベルの戦いになっている。


「これが、いちばんおいしい」

なんて、とても答えられない。もしあるメニューを選んだら、それが争いの元になりかねない。ぼくは、酔っぱらったふりをした。少し体をふらつかせる。そして、ろれつの回らないしゃべりかたで、

「そうだな、これと、これと、それからこれも……」

と、どれもワインのビンを指差した。彼女は

「ダメだ、この人。当てにならない」

と思ってくれたらしく、やがて立ち去った。


 テーブルに並んだワインは、いつもより上等。みんなグラスを片手に語り合い、ジョークで笑い合っていた。ジョークは、いつもより上等とはいえない。いつも通り、かなり下品だった。


 そこにスペシャルゲストが飛び入り参加してくれた。取締役のドルフだ。取締役と聞くと、近寄りがたい人物のように思われる。しかしこの人は、いたって気さくな人柄だ。


 彼はオランダ人だが、英語もフランス語も話す。ムッシュ・ガリッグとはよくオランダ語をしゃべっていた。彼のフランス語は少しなまりがある。聞いていると、かわいい感じがする。


 ドルフは、みんなにクリスマスプレゼントをもってきた。みんな驚いた。まさかそんな物をもらえるとは思ってなかったからね。


 開けてみると、さらに驚いた。中身は3大珍味のフォアグラ。それに高級チョコレート。さらにカードが付いていて

『クリスマスおめでとう!』


 と書かれてあった。ドルフ氏、なかなかにくいことをする。さすが取締役だ。


 そのあとは、みんなで「サイレントナイト(きよしこの夜)」を合唱。最後はダンスで盛り上がった。みんな夜が明けるまで踊った。


 翌日ぼくは午後まで寝ていた。サイレントアフタヌーンとはならず、隣の部屋までイビキが響いていたという。


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