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スイスの会社に雇われて、アルジェリアで先生になった件について ~日本人はぼく一人。生徒は砂漠のプラント技術者たち~  作者: Ryoichi


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ピクニックに誘ったら「父になぐられます」

その1「スキクダの女性たち」


 以前会社に勤めていたころは、スキクダの日本人宿舎に住んでいた。3交代勤務なので、夜勤明けの朝帰りもある。ぼくが昼間寝ていたときのことだ。


「ぎゃあぎゃあ!」


 女性たちの大声に目が覚めた。洗濯場のほうからだ。


「なんだ、ケンカか?」


 うるさいし、気になるので眠れない。結局起きて現場にいってみた。そこでは、洗濯係のアルジェリア人女性が談笑していただけだった。男性もそうだが、とくに女性は普通に話しても、どなり合っているように聞こえる。感情が素直に出る。すぐに興奮し、泣きながら大声でしゃべる。それが毎日何度もくり返される。ぼくだけでなく、他の社員も常に寝不足だった。3交代制には最も向いてない国かもしれない。


 スキクダでは、町で若い女性をほとんど見かけなかった。たぶんヤイなら

「こんな町、絶対住みたくない!」

と怒りだすだろう。そのころ、職場の若い女性秘書を遊びに誘ったことがある。


「ねえ、今度ピクニックにいかないかい?」

「無理です」

「何で? ただのピクニックだよ」

「もし誰かに見られたら、親にすぐばれます。そうすれば帰宅した途端、父に何度もなぐられます」


 ぼくは驚いた。これこそカルチャーショックだ。江戸時代の武家の娘でも、男と歩いただけでなぐられたりはしないだろう。恐ろしい国だと思った。それ以降アルジェリアとはこんな所だ、やはりアラブ圏はきびしいと思い込んでいた。



その2「オランの女性たち」


 ところがオランにきて別のカルチャーショックを受けた。


「これが同じアルジェリアか?」

と思うほど開放的だ。女性の振る舞いは、まったく違っていた。夕方や休日は、おしゃれをした女性がたくさん散歩していた。若いカップルも多く見られる。閉鎖的なスキクダとは、意識が違いすぎる。


 ある時、他人の家に迷い込んだことがある。


「こりゃ、間違えたらしい。出口はどっちだ?」


 家の中をうろうろしていたら、その家の住人に出くわした。15、6歳の女の子だ。


「あら、どうしたの?」


 ぼくを見ても恐れるようすもない。ニコニコと応対してくれた。ぼくは、無事その家から外に出られた。もしスキクダだったら、ぼくのせいで、彼女は父親からせっかんを受けたかもしれない。


 オランでも、やはり他人の目はある。さすがに屋外では知らない男性と、親しげなそぶりを女性は見せない。代わりに家の中では、自然に振る舞う。むしろ大胆に振る舞う。


 職場関係の男性の自宅に、招待されることがあった。彼は結婚している。妻と娘ふたり、そして母と暮らしている。ところが家に着いても、女性は誰ひとり顔を出さない。給仕さえ男の仕事だ。女はずっと台所に引っ込んだまま。最後のあいさつの時になって、妻が少しだけ顔を出した。


 しかしその男との関係が親密になると、話は別だ。一家を含め親せき中の女性たちが出てくる。まるで、ある一線を越えたかのようだ。しかも全員ニコニコ顔。


「あの東洋人、どんな人かしら?」

と興味津々で、ぼくを見物にきた。


 ある時、結婚式の前夜祭に呼ばれたことがあった。それも女性ばかりの会に。結婚式もここでは男側と女側に分かれ、それぞれでお祝いのパーティーを開く。


 ぼくら外国人は特別扱いらしい。というのも、そこにいた男は招待された外国人だけだったからだ。他はアルジェリア人の女ばかり。それも10畳ほどの広さの部屋に20人くらい。かなりの満員だった。まるで女子校に向かう通学バスに乗ったようだ。


 そこで何をしたかって? 20人相手に、アルジェリア伝統のダンスをしたんだ。


 ただでさえ狭くて息苦しい場所。その部屋は、人の息でムンムンしていた。窓もなく、ちょっとした酸欠状態だった。これが夜中2時過ぎまで続いた。こちら男性陣はクタクタになった。しかし彼女たちは最後まで生き生きしていた。


 ひとりになった時の彼女らは、もっと大胆だ。そのことを男の側も知っているから気が気でない。だからこそ戒律があるんじゃないかと思うくらい。外国人男性に関しては、彼女たちはさらに興味が大きい。だから男性陣は、特に警戒しているように思える。


 ヤイの例は、誰にでも当てはまる。男は積極性さえあれば、いくらでも女は見つかる。見た目がイケメンかどうかは、あまり問題ではない。


 ここまで書いたら、もしかすると

「アルジェリア人の女って身持ちが固いのは、自国の男にだけなんだ」

と、思った読者もいるかもしれない。しかしそれは渋谷や六本木で外人男性が日本女性をあさり、女もそれを期待して集まる姿と、まったく変わらない。どこの国でも基本は同じだ。ただし、ぼくは最初スキクダで

「この国は違う」

と勘違いした。実際は、予想に反していたので驚いた。


 とはいえ、彼女らが日本以上の男尊女卑社会で暮らしているのは確かだ。オランでも、男と女は同じ食卓で食事をしない。家庭では男が女を守っているといいながら、むしろ監視している感じだった。


 しかしこれも30年以上前の話。現在は変わりつつあるという。


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