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野外研修準備(2)

ここ最近、投稿ペースが落ちている理由は、受験を控えているためです。

授業が終わった。


生徒たちが帰り支度を始める中、リュートは隣の席のクラウスに向いた。


「一つ確認しておきたいことがあります」


「何でしょうか?」


「虫は平気ですか?」


クラウスが少しだけ動きを止めた。帰り支度の手が、止まった。


「・・・虫、ですか」


「コルネット山麓は虫型魔物が十種類以上生息しています。それに、夜間は活動が活発になる種がいます。苦手なら事前に知っておこうと思いまして」


クラウスはしばらく黙っていた。


何かを迷っているようだった。言うか言うまいか、という顔だった。


「平気、と言いますか・・・」


「言いますか?」


「好きです。」


「そうか。」


「十種類ですか。楽しみですね。どんな虫が居るんでしょうか」


「なあ、虫の魅力って語れるか?」


「語れますよ。

虫の魅力は、その多様性と驚くべき適応能力にあって、この世界には確認されているだけでも百万種以上の昆虫が存在して、その姿や生態は実に様々なんです。同じ「虫」という分類でありながら、空を自由に飛ぶチョウやトンボ、地中で生活するモグラコオロギ、水辺に適応したゲンゴロウなど、それぞれが独自の進化を遂げているんです!この多様性は、自然界の奥深さを感じさせる大きな魅力の一つ。また、虫は小さな体でありながら驚異的な能力を持っていまして。例えばアリは自分の体重の何倍もの重さを運ぶことができ、ハチは高度な社会性を持ちながら集団で生活しています。ホタルは体内で化学反応を起こして光を放ち、カブトムシやクワガタは立派な角や大あごを武器として利用できるんです。人間から見れば不思議に思える能力の数々は、観察する者の好奇心を強く刺激しますね。まあ、魔物として対峙したら、なかなか倒すのに時間がかかりますが。さらに、虫は自然環境において重要な役割を果たしていまして、ミツバチや蝶は植物の受粉を助け、多くの植物の繁殖を支えています。落ち葉や動物の死骸を分解する虫たちは、自然界の物質循環を維持するうえで欠かせない存在でもあります。もし虫がいなくなれば、多くの生態系は大きな影響を受け、人間の生活にも深刻な問題が生じるでしょうね。虫の魅力は見た目や能力だけではなくて、季節ごとに異なる虫が姿を見せるため、自然の移り変わりを感じられることも魅力なんです。夏の夜に聞こえるセミやコオロギの鳴き声、春に舞うモンシロチョウの姿は、多くの人に季節の訪れを知らせてくれるんです。身近な公園や庭でも観察できるため、特別な道具がなくても自然への興味を深めるきっかけとなります。虫は、多様な種類、驚異的な能力、生態系への貢献、そして季節を感じさせる存在として多くの魅力を持っていて、一見すると小さく目立たない生き物ですが、その世界を知れば知るほど新たな発見があり、人々を惹きつけてやまない存在なのです。」


リュートは少しの間、クラウスを見た。


「おまけに契約魔物が虫系です。」


「何も言わなかったのか?今まで。」


「聞かれなかったので。」


それはそうだ。


う~ん・・・


公爵家の令嬢は盗賊を一瞬で制圧して拷問を「尋問」と呼ぶサディスト。

その次男は狂気的な虫好きで契約魔物も虫系。


姉弟揃って頭のねじがぶっとんでいる。血筋というのは、つくづく恐ろしい。


「・・・リュート君、何か考えてませんか?」


「何も考えていませんよ。」


「本当ですか?」


「本当です。」


クラウスは少し疑わしそうな目をしたが、それ以上は追及しなかった。


「それで、虫が平気かどうか確認したかった理由はなんでしょうか?」


「アランが重度の虫嫌いなんで」


「ああ・・・」


クラウスが少し遠い目をした。昼休みに図書室から戻ったリュートがアランに虫の情報を伝えた時の、あの引きつった顔を思い出しているのかもしれない。


「フォローしてもらえませんか?班内で一人でも虫に慣れている人間がいると、収拾がつけやすいので」


「・・・私が虫を触っていたら、余計パニックになりそうですが。」


「それはそれで囮として機能します。」


「それは囮ではなく生け贄なのでは?」


「言い方の問題です」


クラウスは少しの間、何も言わなかった。

それから、静かに頷いた。


「分かりました。ただし、虫型魔物を見て私が少々テンションが上がっても、それは許容してください」


「構いませんよ」


「本当ですか?」


「アランのパニックよりは対処しやすいと思うので。」


二人が話し終わったタイミングで、アランがやってきた。


「何話しとったと?」


「コルネットの下調べだ」


「あ、そっか。何かわかったと?」


「大体は把握した」


「虫は・・・やっぱ多い?」


「多い。」


「うわあ・・・」


アランが頭を抱えた。クラウスがそれを静かに見ていた。その表情に、微かに何かが混じっていた気がしたが、リュートは見なかったことにした。


ケルビが後ろから来た。


「アラン、大丈夫?」


「大丈夫じゃない。」


「まあ、何とかなるよ」


「ケルビはそう言うけどさあ・・・」


アランがぐずぐずと言い続けるのを横目に、リュートは鞄を持った。


三日後までにやることは、大体見えた。あとは当日どうなるかだ。





夜になった。

風呂に入り、寮の部屋に戻ると、アランとケルビはすでに帰っていた。アランはベッドに倒れ込んでいた。


「虫が・・・十種類以上・・・あああああああああああ!!!!」


「まだ言ってるのか」


「言いたくもなるやろ・・」


ケルビが「早く寝れば忘れるよ」と静かに言った。アランが「忘れられるか」と返した。

リュートはその会話を半分だけ聞きながら、ベッドに腰を下ろした。

念話を繋いだ。


リュート(セラフィナ、起きているか)


セラフィナ(起きてるよ。どうしたの?夜更かしは肌の敵だから、早めに切り上げて)


リュート(コルネット山麓について聞きたい。知っているか?)


セラフィナ(知ってるよ。研修で使う場所でしょ。私も研修の時行ったよ。何が聞きたいの?)


リュート(あそこに住んでいる仙人について)


セラフィナ(よく調べたね。本に載ってたの?)


リュート(植生の本の末尾に一段落だけあっただけだが)


セラフィナ(あー、あの記述ね。あの人は本物だよ。名前はベルグ・ムラサメ、だった気がする。あそこに七十年以上住んでるらしいよ。山麓で大規模な魔物の暴走が三回あったけど、全部あの爺さんが収めてる)


リュート(七十年・・・すげー長生きだな)


セラフィナ(私はおろか、父上ですら直接会ったことがないらしいよ。普段は奥地から出てこないから、こちらから会いに行かない限り、接触は難しいよ)


リュート(何かが起きた時に動く人間・・・ざっくり言うとそんな人間か)


セラフィナ(そういうこと。だから、普通に過ごす分には関係ない。リュートたちが余(・)程(・)の(・)こ(・)と(・)をしない限りはね)


リュート(さすがにしねぇよ)


セラフィナ(本当に?)


リュート(する気はない)


セラフィナ(まあいいけど。他に何かある?)


リュート(クラウスのことを聞いてもいいか?)


セラフィナ(弟(パシリ)の話?いいよ。何?)


リュート(・・・虫の契約魔物を持っているのは知っていたか?)


セラフィナ(知ってる。あの子が七歳の時に遭難先で自分で契約してきた。父上は最初引いてたけど、今は諦めてるよ)


リュート(ゴキブリでも素手で触れると風のうわさで聞いた気が・・・)


セラフィナ(それはデマ。本当は手袋をつけて触れてる。直接触れると病にかかりやすくなるらしいからね。あ、でも名前つけて可愛がってたよ。立場がなかったら部屋中虫だらけにしてたと思う。実際、本人も言ってたし)


リュート(姉弟揃って・・・)


セラフィナ(何か言ったか?続けてみ?)


リュート(気のせい気のせい。お前の耳がおかしいだけ)


セラフィナ(絶対何か言ったよね?私の耳は正常だけど?)


リュート(本当だ。何も言っていない。)


セラフィナ(・・・まあいいや。また、あった時に尋問するか。それじゃあ、クラウスのこと、よろしくね)


リュート(分かった)


セラフィナ(あと、コルネットの朝日は本当に綺麗だから、早起きして見てみて。損はしないよ)


リュート(虫が大量にいる場所の朝日か?)


セラフィナ(それが良いんじゃない。虫と朝日のセットなんて、そうそう見られないよ)


リュート(シュールだな)


セラフィナ(それだけ聞くとほんとにシュールな光景。でも、ホントにきれいだったから。じゃあ、おやすみ)


念話が切れた。

リュートは少しの間、天井を見た。

虫が大量にいる山麓で、七十年以上住んでいる仙人がいて、公爵家の次男が虫の契約魔物を持っていて、朝日が綺麗らしい。


三日後の行事の輪郭が、大体掴めた。


ふと、ステータスを開いた。






リュート=アルス



Lv134


HP2045

MP2045

職業 転生者 剣士

魔法 空魔法 光魔法 水魔法

加護 なし

状態 記憶封印

スキル 鑑定 アイテムボックス 副業切り替え(クロススイッチ)( 槍士 戦士 )代行思考機構(プロキシ・マインド)

職業スキル 破嵐斬(テンペストスラッシュ)(Lv83)

      無傷迎え(Lv4)

      瞬界一閃(Lv12)

      パリィ(Lv4)

副業スキル(槍士)

      天穿(Lv5)

      貫通強化(Lv21)

副業スキル(戦士)

      戦意高揚(Lv12)

      偽死回避(Lv6)










あ、パリィが帰ってきてる。「無傷迎え」は使い勝手が悪すぎるスキルだったし。

代行思考機構(プロキシ・マインド)は・・・相変わらず、鑑定できないし・・・


にしてもこの戦いで、ずいぶん上がったな。


ステータスを閉じた。


アランがいつの間にか寝ていた。ケルビも目を閉じていた。二人が寝静まっていたため、部屋が静かになった。


リュートはベッドに横になった。


コルネット・・・不安要素はあるが、何とかなる。


そう思いながら、目を閉じた。

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