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想定外の強襲(2)

頑張って書いた★

サタンが動いた。


予兆はなかった。立っていた、と思った次の瞬間には、ティオの前にいた。


ティオが剣を合わせた。当たった瞬間、ティオの体が吹き飛んだ。剣を合わせていなければ、それ以上のことになっていた。石畳に叩きつけられながら、ティオは体を回転させた。転がりながら起き上がった。腕が痺れていた。骨がひびを入れていないかどうか分からなかった。


「ティオ!」


セレナが叫んだ。杖を向け、水の槍を放った。サタンの体に当たったが、止まらなかった。水の槍が当たった場所が、少しだけ揺れた。それだけだった。ダメージになっていない。体の表面が、どこかに力を流していた。


「・・・効いてない」


ヴァルドが前に出た。剣を構えたまま踏み込んだ。サタンが向き直った。剣がぶつかった。重かった。ヴァルドでさえ、一合で体が流された。流されながら、反撃に切り返した。刃がサタンの腕に入った。


切れた。浅いが、確かに入った。


「物理系は通りみたいだ」


「なら俺が前衛を続ける」


「お前だけだと無理だ。二人で前衛だ」


ヴァルドとティオが、両側から同時に踏み込んだ。サタンが片方をさばきながら、もう片方に向けて腕を振った。その腕が、炎を纏っていた。ティオが横に跳んで外した。その瞬間、炎が地面を舐めた。石畳が溶けた。


「セレナ、障壁を・・・」


「展開してるよ!」


セレナが障壁を複数重ねた。サタンが障壁に向かって手を突き込んだ。障壁が一枚ずつ、剥がれるように消えていった。


「剥がされてる。展開する速度より、剥がす速度の方が速い・・・」


ヴァルドが再度踏み込んだ。今度は剣を使わなかった。魔法を展開した。圧縮した風の刃を、至近距離から放った。サタンの体が、少しだけ後退した。


一歩だった。たった一歩、後退した。それだけだった。三人全員で攻撃して、一歩だ。これは戦闘ではない。一方的な消耗だ。


「時間稼ぎに切り替える。騎士団に報告を」


ヴァルドが言った。


「・・・念話が封じられてる」


セレナが繋ごうとして、首を横に振った。


「サタンが?」


「そうとしか考えられない。最初から封じていたのかもしれない」


ティオが後方を確認した。


白い骨が、街道に散らばっていた。騎士団は、もういなかった。全員が、魔物の波に飲み込まれていた。報告を送る人間がいない。念話も使えない。


詰んでいた。


「一か八かで、救助の信号の魔法を飛ばす」


セレナが言った。


「届くか?」


「念話と違う系統の魔法だ。サタンが完全に封じているなら届かないかもしれない。でも、試す価値はある」


「なら、俺らは時間稼ぎだ」


ヴァルドとティオが前に出た。


サタンが来た。ヴァルドが受けた。押された。ティオが横から入った。サタンが二人を同時に相手にした。二人がかりでも、サタンの動きが鈍らなかった。


セレナが術式を組んだ。通常の念話より広域に飛ぶ緊急信号だ。念話の周波数を外れた波長で飛ばす。遮断されていても、わずかな隙間から抜けられる可能性がある。


ヴァルドが吹き飛んだ。石畳に叩きつけられた。起き上がろうとして、膝が笑った。ティオが前に立ち続けた。剣を合わせ続けた。一合ごとに、腕の感覚が鈍くなっていった。


「セレナ、まだか?」


「今!」


術式が完成した。セレナが杖を空に向けた。信号が飛んだ。


「飛ばしたよ!」


その後、すぐにオルディナシスで魔法が打ちあがった。さっきのセレナの信号に対する返答だった。








その直後だった。サタンが手を上げた。何かが来る、とセレナは感じた。感じた瞬間には、もう遅かった。


衝撃波だった。


音よりも速く来た。見えなかった。ただ、空気が圧縮されて、その圧縮が弾けた。


衝撃波がセレナの体を内側から通り抜けた。外から殴られたのではなかった。内部を直接、えぐるように通った。臓器が揺れた。肺の中の空気が、強制的に押し出された。肋骨が複数、折れる感触があった。皮膚の下で何かが破れた。腹腔の中で何かが弾けた。口から血が出た。赤いものが、石畳に落ちた。


「っ、あ…」


声にならなかった。


倒れた。立てなかった。


ティオが横で崩れ落ちた。同じ衝撃が、ティオを貫いていた。石畳に顔をついた。全身の骨が折れた感覚と痛みがする。起き上がろうとして、腕が動かなかった。指が震えていた。剣が、手から滑り落ちた。


ヴァルドは膝をついていた。剣を杖代わりにして、体を支えていた。衝撃波がヴァルドの体も同様に貫いていた。内側に何かが残っている感触があった。肺が、正常に動いていない気がした。息を吸うたびに、どこかから空気が漏れていた。


サタンが歩いてきた。急いでいなかった。ゆっくり歩いてきた。


後方から、禍兎の波が押し寄せてきた。白い毛並みの塊が、街道を覆った。三人に向かってきた。


「じゃあね♡また、何処かで、いや、天国で、()()と話せるといいわね♡」


最初にセレナの前に来た。


「・・・先で待ってるね、」


セレナは杖を持ったまま動けずに、ただ、その一言を二人に言った。魔物が集まった。


鋭い牙が肉を貫き、筋肉を引き裂く。鮮血が噴き出し、腕の皮膚がべりべりとめくれ上がった。激痛が脳天を突き抜け、セレナの口から獣のような悲鳴が漏れた。それが声になったかどうかすら、彼女自身には分からなかった。


十匹、二十匹。波が来た。セレナが見えなくなった虹の毛並みの塊が覆いかぶさった。牙が喉を抉り、頰を裂き、眼球を吸い出す。指が一本ずつもぎ取られ、腹部が引き裂かれて腸が零れ落ちた。まだ生きているセレナの体は、魔物たちの餌食となりながら痙攣し続け、焼けるような痛みの中で断末魔の喘ぎを漏らしていた。


虹の波が引いた。石畳の上に、白い骨と、赤くなった石畳だけが残っていた。


「セレナ!!!」


ティオは必死に手を伸ばしていたが指先が、わずかに届きそうで届かなかった。


その瞬間、魔物の群れが殺到した。ティオの剣が閃き、一匹の頭を真っ二つに斬り裂いた。虹色の毛皮が血に染まり、脳漿が飛び散る。しかし次が来た。また斬った。剣が胴体を斜めに斬り落とし、内臓が地面に零れ落ちる。


それでも禍兎は止まらない。数が違いすぎた。


十匹、二十匹、三十匹と虹の毛並みの波がティオを飲み込んだ。彼の姿が一瞬で覆い隠された。


牙が鎧の隙間から肉に食い込み、肩の筋肉を抉り取った。喉に突き刺さった牙が気管を裂き、血を逆流させる。腕がもぎ取られ、太ももの肉が引き裂かれ、骨が露わになった。剣を持つ手が何匹もの禍兎に食いちぎられ、指が一本ずつ千切れ飛んだ。


ティオは激痛の中で口を開けたが、声は上がらなかった。喉が詰まり、血と泡が溢れるだけだった。

虹色の毛の塊が蠢き、肉を食い散らす音だけが暗く響いていた。


音が引いた頃には白い骨と、赤く染まった石畳だけだった。


「・・・すまない、お前ら、レティシア」


ヴァルドは剣を握ったまま、歯を食いしばって立ち上がろうとした。


「アハ♡サセナイヨ?」


サタンがそう言った直後、衝撃が飛んできて、膝が不自然に折れ、激痛と共に崩れ落ちた。骨が砕ける嫌な音が自分の体内から響いた。


虹色の毛並みの魔物たちが、雪崩のように殺到した。ヴァルドの体が一瞬で虹の蠢く塊に覆い尽くされた。

牙が首筋に深く食い込んだ。喉を裂かれ、鮮血が噴水のように噴き上がる。肩の肉が引きちぎられ、腕の骨が露わになりながらもぎ取られた。腹部が大きく開かれ、熱い腸が地面に零れ落ち、禍兎たちが貪る。

太ももの筋肉が剥がされ、白い骨が噛み砕かれる音が連続して響いた。


ヴァルドは口を大きく開け、叫ぼうとしたが、既に声帯が引き裂かれ、血の泡が溢れるだけだった。


虹の波が引いた後、そこに残っていたのは、真っ白に洗われたような骨格だけだった。肉も内臓も皮膚も、綺麗に食い尽くされていた。


街道には、三か所にわたって白い骨が散らばっていた。まだ温かい血だまりの中で、二本の剣と一本の杖だけが無残に取り残されていた。













それから少しして、足音が来た。別の方向からだった。街道の後方、禍兎の波とは逆の方向から、複数の足音が近づいてきた。


「前方に反応、禍兎の大群と悪魔の気配。生存者の確認を急げ!!!」


声が聞こえた。


「突入する。散開」


魔法の音が来た。複数の属性が混ざった音だ。魔物の群れが、前方から押し返されていた。


その中に、一人が走ってきた。茶色い袈裟を着た人間だった。頭が丸かった。手に錫杖を持っていた。走り方は、どこかのんびりしていた。状況に合っていなかった。


「大変なことになってる。生き残りは・・・」


「あの時の生臭坊主か?さっさと仕事しろ」


「扱いがひどいな。俺の名前はラズロイなんだが?ちゃんと覚えておきなさい」


「貴方は教師か何かですか?」


別の声が来た。


リュート。走ってきた。足はまだ完全ではないはずだったが、走っていた。街道を見渡した。白い骨が、散らばっていた。


「セレナ、ティオ、ヴァルドは・・・」


誰も答えなかった。リュートが白い骨を見た。三か所に、骨があった。少しの間、何も言わなかった。


「・・・分かった」


それだけ言った。それ以上は言わなかった。


ラズロイが、骨の前まで来た。


走り方がのんびりしていたのが、そこで止まった。


足が、止まった。


白い骨を見た。また別の白い骨を見た。三か所分、順番に見た。


錫杖を握る手が、少しだけ変わった。力が入っていた。


「・・・」


何も言わなかった。


ラズロイにしては珍しく、何も言わなかった。


セレナとティオの担任を務めていた時期のことを、この男がどれだけ覚えているかは分からない。ヴァルドのこともかつては知っていたはずだ。でも、今この場で骨を前にして黙っているということは、全員のことを覚えているのだろう、とリュートは思った。


ラズロイが顔を上げた。その顔が、いつものあの判断のつかない表情に戻っていた。でも、目だけが少し違った。


「後で、ちゃんと弔います」


骨に向かって、小さく言った。


それから、また錫杖を振った。禍兎が弾き飛んだ。


その時、サタンが動いた。


リュートに向かって、来た。速かった。ティオやヴァルドに向かってきた時より、明らかに速かった。


リュートが構えた。でも、サタンは攻撃しなかった。目の前で止まった。


白く光る目が、リュートを見た。


それから、手が来た。リュートの肩に触れた。次に、胸に触れた。腕に触れた。頬に触れた。頭部に触れた。攻撃ではなかった。確認していた。何かを確かめるように、体中を触っていた。


「・・・なんだ」


リュートが言った。サタンは答えなかった。触れながら、何かが変わっていた。サタンの目が、少しだけ違う動き方をしていた。感情があるとすれば、驚きに近い何かだった。


「アァ」


声が来た。さっきまでの共鳴するような声とは、少しだけ違った。


「アァ!!!其ノ瑠璃色ノ瞳!其ノ目ハァ!!!其ノ目ハ!!!傲慢ノ目ジャナイデスカ!!!アァ、アァ!!!ナント!ナント美シイ!ナント恐ロシイ!コノ目ヲ持ツ者ガマダイタトハ!!!信ジラレナイ!信ジタクナイ!デモ、確カニイル!!!黒髪二瑠璃二瞳!間違イナイ!間違エルハズガナイ!コノ配色ヲ持ツ者ハ、タダノ人間デハナイ!タダノ転生者デモナイ!!!アァ!アァアァ!!!ナゼ分カラナインデスカ!ナゼ気ヅカナインデスカ!貴方様ハ!貴方様コソハ!!!()()ソノモノデハナイデスカ!!!七ツノ大罪ノ頂点!全テノ罪の根源!ソレガ!ソレガ人間ノ形ヲシテ!人間ト笑ッテ!人間ト飯ヲ食ベテ!アァ!ナント滑稽!ナント愉快!ナント、ナント!コレホド笑エルコトガアリマショウカ!!!憤怒ノ私ガ!怒リヲ忘レルホド!笑イタイ気持チニナルナド!生マレテコノ方!初メテノコトデスヨ!!!アァ!アァ!!!ソノ目ヲモット見セテクダサイ!ソノ瑠璃色ヲ!!貴方様ガ知ラナイトイウナラ!私ガ教エテ差シ上ゲマショウカ!!!イイエ!イイエ!マダ早イ!マダ早イデスヨ!貴方様ガ自分デ気ヅク瞬間ヲ!コノ目デ見届ケタイ!アァ!楽シミデスナァ!ナント!ナント楽シミナコトカ!!!」


サタンが一歩引いた。白く光る目が、リュートを見ていた。見つめていた。見定めていた。


「改メテ・・・貴方様ハ何故!人間ト共ニイルンデスカ!」


声が、街道に響いた。共鳴が増していた。


リュートは、サタンの目を見た。何が言いたいのか分からなかった。


「何の話だ?」


「貴方様ガ!人間ト!共二在ル!ソレガ!何故カ!、ト問ウテオリマスル」


「俺は人間だ。人間と一緒にいるのは当然だろ」


サタンが、止まった。


「・・・人間?」


「そうだ」


「人間、ト言ッタ」


「言った」


「自分ヲ、人間ダト言ッタ・・・」


「そうだ。何が問題なんだ」


サタンがリュートを見た。その目が、また少し変わった。混乱に近い何かが入っていた。


「貴方様ハ、人間デハナイ。人間ノ形ヲシテイルガ、人間デハナイ。ソレガ分カラナイノカ!!!!」


「俺が何なのかは、自分では人間だと思っている」


「ソレガ問題ダ」


「・・・どういう意味?」


サタンが、また手を伸ばしかけた。


その時、禍兎が来た。こちらに向かってきた禍兎の一群が、サタンとリュートに向かって流れ込んできた。


リュートは剣を構えた。


サタンが、動いた。


リュートとサタンの間に入った。禍兎に向かって、手を振った。衝撃波でも炎でもなかった。


「コレハ・・・私ノ獲物ダァアアア!!!!!!!」


声が来た。


「私ノ傲慢ダ!貴様ガ手ヲ出スナ!」


禍兎が止まった。一瞬だけ止まった。それから、禍兎が向きを変えた。サタンに向かって来た。


「貴様ラニ、傲慢ノ扱イハ任セラレン!!!」


サタンが笑った。音のある笑いだった。さっきまでの音のない笑いとは違う。


「弱イ。オ前タチハ、ココマデ弱イ。ソレデモヨク動ク。実ニ、ヨク動ク。気二入ッタ」


魔物の一群に向かって、歩き始めた。歩きながら、叫んだ。


「燃エロ!喰ワレロ!ソノクライデ、止マッテミロ!力モナク、恐怖モナク、ソレデモ動キ続ケルモノガ在ルトハ!怒リガ収マラン!笑イガ止マラン!コノ世界ハ、ナント愉快カ!」


禍兎の群れに突っ込んだ。炎が上がった。衝撃波が広がった。禍兎が吹き飛んだ。それでも波が来た。サタンを覆い始めた。でも、サタンは止まらなかった。笑いながら、叫びながら、禍兎の群れの中に消えていった。笑い声だけが、遠ざかっていった。


リュートは、その方向を見ていた。


「・・・何なんだ、彼奴は・・・てか、仲間割れか?これ?」


ラズロイが傍に来た。


「・・・分からない。だが、確実に世界の均衡は崩れ始めているのは確かだ」


その時、地響きがした。サタンが、禍兎の群れの向こうから戻ってきた。体中が噛まれた跡だらけだった。でも、立っていた。笑っていた。


「リュートを回収しようとしていたが」


サタンが言った。


「・・・時間ダ」


後ろを向いた。


何もない空間に、亀裂が入った。亀裂が広がった。縦に長い裂け目が、空中に生まれた。裂け目の向こうが見えた。赤かった。炎が見えた。骨が見えた。


地獄門だ、とラズロイは思った。根拠はなかった。でも、そう思った。


「傲慢ガ、人間ト共ニイル理由ハ、マダ聞ケナカッタ」


サタンがリュートを見た。


「次二会ウ時ニハ、答エヲ持ッテキテクレ。私ハ聞ク側ヨリモ、答エル側ノ方ガ好キダガ、貴方様ノ場合ハ、例外ニシヨウ」


「何の話か分からない」


「ソウダロウ。自分ガ何者カ、マダ知ラナイノカ?」


「俺は・・・人間だ」


「ソウカモシレナイ。ソウデナイカモシレナイ。ソレヲ確カメルノモ、マタ愉快ダ」


サタンが裂け目に向かって歩き始めた。


「マタ会オウ、傲慢ヨ」


裂け目に入った。裂け目が閉じた。音もなく、消えた。


街道に、静けさが来た。


禍兎の群れが、支配を失って散り始めた。冒険者たちが対処を続けていた。ドラゴンが方向を失って、上空を旋回していた。


リュートは、サタンが消えた場所を見ていた。


傲慢。


その言葉が、頭の中に残っていた。意味は分かる。でも、なぜ自分に向けて来たのかが、分からなかった。自分が何者か、まだ知らないのか、とも言った。


俺は人間だ。それは分かっている。転生者だが、人間だ。


でも、サタンは違うと言った。


「リュート」


ラズロイが来た。


「何だ」


「あの悪魔、また来ますよ。きっと」


「・・・そうだな」


「次に来た時には、答えを用意せよと言ってたが、答えはあるのか?」


「・・・ない」


「では、次までに考えておくといい」


「・・・人生最悪の宿題だよ」


ラズロイが錫杖を肩に担いだ。白い骨が散らばった街道を見渡した。


さっきとは違う目だった。のんびりした表情のままだったが、視線だけは、それぞれの骨の場所を、ゆっくりと辿っていた。


「セレナさんとティオさんは、よく頑張りました」


独り言のように言った。


「・・・知ってるんだ、3人を・・・」


「昔、授業を持っておりました。元気な子たちでしたよ。セレナさんはよく私の授業中に余計なことを喋っておりましたし、ティオさんは一番後ろで静かに寝ておりました。ヴァルドに至ってはよく彼女(レティシア)と抜け出しては剣を交えていましたよ」


「・・・」


「最後まで、戦っておったのか。その子たちらしい」


ラズロイはそれ以上は言わなかった。


リュートも、何も言わなかった。


ヴァルドが、まだそこにいた。膝をついたまま、動いていなかった。


セレナとティオの骨が、白く散らばっていた。


リュートはしばらく、その場に立っていた。


風が来た。


骨の間を、風が通り過ぎていった。


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