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暗殺者と観測王

【ルグ・ハルフェン】




王都の城壁近くに設けられた、騎士団の仮設指揮所。


エルンスト、ルグ、そして少し遅れて合流したセレナとティオが、地図を囲んでいた。念話を通じて、外の状況が次々と入ってくる。


「本当は感動の再開・・・と行きたいが、時間がない」


「そうだね、エルンスト。それで状況は?」


「三方向から、それぞれ70から100規模。合計で200」


エルンストが静かに言った。地図の上に印をつけながら。


「意外と多いね」


セレナが眉をひそめた。


「だが、ヴァルドの姿が確認されていない」


「外側に出てこない、ということは・・・」


ルグが続けた。


「内側にいる可能性が高い。あるいは、どこかで動きを待っている」


「でもさ」


セレナが首を傾けた。


「ヴァルドって、こういう時に後ろに引っ込む人だっけ?」


その言葉に、全員が少し黙った。


「・・・確かに」


エルンストが静かに言った。


「ヴァルドは戦いが好きだ。いや、好き、というより・・・戦闘において自分を発揮することに迷いがない人間だ。あいつが後ろに下がるのは、それ相応の理由がある時だけだった」


「学校の時もそうだったよね」


セレナが頷いた。


「課題の時も、自分で動ける場面では必ず前に出てたから。誰かの指示を待つより、自分で考えて動く方を選んでたよ」


「それに、彼奴は、力を持て余したまま立ってるのが嫌いだったはず。俺はそういう性格だと、学校の頃から分かってたが」


「だから今回、前に出てこないのはおかしいよ」


セレナが言った。


「あれだけの組織を動かして、自分だけ後ろにいる。ヴァルドらしくないよ」


「そうだな」


エルンストが地図から目を離した。少し遠くを見るような目をした。


「・・・一つ、引っかかることがある」


「何?」


セレナが聞いた。


「あの事件のことを考えていた」


「どの事件?エルンスト」


「セラフィナの夕食に睡眠薬が盛られた件だ」


場の空気が少し変わった。


あの夜のことは、全員が覚えている。セラフィナとリュートとルーベルトの三人が食事をしていた時、夕飯に何かが混入されていた。三人とも眠ってしまった。


幸い、ルーベルトが眠らされる前に転移魔法でたまたまアリアの部屋に飛ばして、誘拐は失敗に終わり、犯人は捕まった。


もし二人がその場にいなければ、セラフィナは誰にも気づかれないまま連れ去られていたはずだった。



「あの夜、あの三人はセラフィナの部屋で夕飯を食べながら推理をしていた。セプテム・ルクスが犯人かもしれないという話をしている最中に、突然三人とも眠りに落ちた。三人曰く、夕飯に睡眠薬が盛られていたんだと」


「覚えてるよ」


セレナが静かに言った。


「ルーベルトが咄嗟に転移魔法を使って、三人ともアリアの部屋に飛ばしたんだよね。おかげで誘拐は未遂で終わり、犯人は捕まった。でも、あそこで睡眠薬を仕込めた人間は限られるよね?セラフィナ様専用の部屋に届けられた夕飯に手を加えられたとすれば、学園内に協力者がいたってことになるよね?」


「ああ」


エルンストが頷いた。


「しかも、ルーベルトの転移魔法を想定していなかった。だから誘拐に失敗した。普通の学生が咄嗟に転移魔法を使えるとは思わなかっただろうからな。でも、ここで一つ引っかかることがある」


「何?」


セレナが聞いた。


「あの三人が部屋でセプテム・ルクスが犯人かもしれないという推理をしていた。その会話は盗聴されていた可能性が高い。部屋に盗聴器が仕掛けられていたとすれば、推理が筒抜けになっていた。そして、それを知った誰かが急いで三人を黙らせようとした」


「それはクロカワから聞いたよ」


「でも、今回はさらに一歩踏み込んで考えている。あの睡眠薬の件に、ヴァルドが関わっていた可能性がある、ということですか」


ルグが静かに口を開いた。


「直接手を下したとは思わない。でも、関与していたとしたら?当時のヴァルドはまだ動き始めたばかりだった。組織を作り、内部に人間を配置し、必要な情報を集めていた。その過程で、三人の調査が邪魔になった。だから手を打った」


「・・・」


「ヴァルドは頭が意外と切れる」


「そうなの?」


「そうなんですか?」


「そうだ。」


初めて知りました・・・


「ヴァルドは戦闘狂でもあるが、同時に、勝てる戦い方を考える人間だ。もし今回も同じなら」


エルンストが地図に目を戻した。


「外側は陽動。本命は別にある。そして、ヴァルド本人はその本命の場所にいる」


「本命はどこなの?」


セレナが聞いた。


「分からない。でも、王都の内側で、騎士団の目が届きにくい場所。かつ、セラフィナや重要な人物に近い場所のはずだ」


「だとすれば、ガルシア王に早急に伝える必要があるよ」


ティオが言った。


「そうだ」


エルンストは立ち上がった。


「念話でガルシア王に連絡を取る」


念話を繋ごうとした、その瞬間。指揮所の外で、物音がした。


全員が目を向けた。


指揮所の入口に、数人の人影があった。騎士の格好をしていた。でも、その動きが少しおかしかった。いつもの騎士団の動き方と、何かが違う。


「・・・誰だ」


ティオが静かに言った。


人影が動いた。


「エルンスト」


ルグが短く言った。


「分かってる」


エルンストは念話を繋ごうとした。だが、その瞬間、指揮所の外に立っていた人影の一人が魔法を展開した。念話の周波数を乱す妨害術式だ。念話が繋がらない。


「・・・念話を妨害されてる」


「ヴァルドの組織の人間か」


「恐らく」


数人の人影が、ゆっくりと指揮所の中へ入ってきた。


セレナが杖を構えた。ティオが剣に手をかけた。ルグが短刀に触れた。


「エルンスト、別の手段で連絡を取れるか」


「走者を使う。徒歩で騎士団本部まで届ければ、伝わる」


「誰が走る」


「私が行きます」


ルグが言った。


「ルグが行くの?」


セレナが聞いた。


「私はレティシアの次に足が速いので」


誰も反論しなかった。それは事実だったから。


「行ってください」


ティオが言った。


「残りは私たちで対処します」


ルグが頷いた。一瞬だけ全員を見渡して、それから指揮所の裏口に向かった。人影が気づいて追いかけようとしたが、ティオとセレナが前に出た。


「此処は通さないよ」


セレナが静かに言った。






【セラフィナ・フォン・オルディナシス】




王都の市街地。セラフィナは走っていた。


念話でルグからの報告が途切れた直後、指揮所側の念話が繋がらなくなったことを察した。


何かが起きている。父上への連絡が取れないなら、自分で動くしかない。


そう思い、セラフィナはガルシア王がいると思われる、城へ向かって走っていた。


石畳を踏む足音が、狭い路地に響く。


次の角を曲がった瞬間、前方に人影があった。セラフィナは一瞬で足を止めた。人影は動かなかった。待っていたかのように。


長身。緑髪。腰に長剣。


この男がヴァルド・・・


二人の目が合った。


王都の朝の光が、石畳に斜めに当たっている。遠くで何かの音がする。でも、この路地だけは静かだった。


セラフィナは剣に手をかけた。


「闘志を感じる・・・国のお姫様とは思えないほどの闘志だ・・・」


「・・・そりゃどうも」


ヴァルドは動かなかず、ただお互いがお互いを観察していた。








【レイン・フォン・アルヴィス】




オルディナシスに着いたのは、昨日夜のことだった。


王都は静かだった。表面上は、何も起きていない。市場が開いていて、人が行き交い、騎士団が巡回している。そして、飲んだくれがいる。普通の夜の光景だった。


・・・何か、おかしい。一体なんだ?


レインはその感触を、皮膚で読み取っていた。何かが起きている、あるいは起きようとしている。


ルーベルトを探し始めて四年が過ぎた。一向にルーベルトの場所が分からない。ただ、風のうわさでここに来たのだが、人が多すぎて探すどころじゃない。仕方ない、場所を変えるか。



レインはオルディナシス城壁の歩廊に行き、背中に背負ったバックから、道具を取り出した。


帝国で手に入れた道具だ。買ったのは一年前。使い道は決まっていなかったが、念のために持っていた。

幾何光学と呼ばれる技術を使った観測用の器具だ。それが何を示しているかは分からないが。


この世界の大半の人間は、その言葉の意味を知らない。幾何光学とは、光が直線的に進む性質を利用して、遠くの対象を拡大して見るための技術だ。光は魔法とは無関係に動く。魔力が一切必要ない。純粋に、ガラスの曲面と光の屈折だけで成立する。


今から10年ぐらい前から、帝国で突如として生産され始め、これを生産している職人ですら、その原理を知わなかった。一体誰がこんなものを作ったのか・・・

そのため、使い方を知っている人間も、ほとんどいない。


レインはその器具を構え、学園の方角に向けた。


王立オルディナシス中高一貫校。建物の外観は分かっている。事前に調べた。高い塀と、石造りの校舎が並ぶ敷地だ。


器具を通して見ると、校舎の窓が見えた。中庭が見えた。


生徒が何人か歩いている。


レインはゆっくりと、器具を動かした。


一人ひとりの顔を確認する。特徴を覚えている。ルーベルトの写真は、アルヴィス家に残っていた書類から確認している。今は恐らく12歳だが、どんな顔立ちになっているかは、ある程度想像できる。


探した。ルーベルトがいるかもという賭けをするためだけに。







中庭の端に、一人の人間がいた。


いた。


間違いない。


その顔には見覚えがある。書類に残っていた写真とは年齢が違うが、目元の形が同じだ。アルヴィス家の血筋に特有の、やや丸みのある目の形。


ルーベルト・フォン・アルヴィス。


生きていた。


「・・・」


レインは器具を下ろした。少しの間、そのまま動かなかった。生きていた。それだけだ。感情は特にない。確認すべきことが確認できた。それだけのことだ。


次に動くべき方向を考えた。


学園に入り、直接確認する必要がある。ルーベルトが今どういう状況にあるかを、目で見て判断しなければならない。


レインは学園の正門に向かって、歩き始めた。

その時だった。


「動くな」


声が、横から来て、レインは止まり、声の方向を向いた。


そこに、一人が立っていた。

完璧に整えられた外見。隙のない立ち姿。見覚えがある顔だ。


セプテム・ルクスのユリウス・ノイン。


本名、ユーラー・ユーリー。


皇権極秘執行四統部の観測王。


「よく見つけたわね」


レインは声のトーンを変えなかった。


「君が来るだろうと思っていたよ。ヴァルドが動いたという話が広まれば、君は必ず動く」


「観測が仕事なら、黙って観測してれば?」


「今日は観測じゃないんだ」


ユリウスが一歩前に出た。その瞬間、空気が変わった。


笑顔が消えていなかった。でも、目が変わった。完璧な笑顔を保ったまま、その目だけが別の何かを見ていた。


「君に、学園に入ってほしくない。今日は、そういう日なんだ」


「理由は?」


「観測の邪魔になる」


レインは少しだけ黙った。


ユリウスの力は知っている。皇権極秘執行四統部の人間は、普通の人間とはわけが違う。ユリウスは工作員に位置している。


互いに手の内は、ある程度分かっていた。


「じゃあ、退かない」


「だと思った」


ユリウスが動いた。


最初の一撃は、音もなく来た。横から、踏み込みの予兆なしに腕が伸びてきた。レインはそれを、わずかに体を傾けるだけで外した。


ユリウスの腕が空を切った。その勢いを殺さず、回転させながら次の攻撃に繋げようとした。


しかし、レインはその軌道を読んでいた。

短剣を抜いた。ユリウスの第二撃を、刃の腹で受け流した。金属と骨が触れる感触があった。


「速いね」


ユリウスが言った。


「それはこっちの台詞(セリフ)


レインが返した。


距離を開き、二人は向き合った。


ユリウスの笑顔は戻っていた。でも、今のそれは作られた笑顔ではない。戦いを楽しんでいる時の顔だ。レインはそれを知っていた。


MPが2000以上ある人間だ。魔法を使えば話は変わる。ただ、MPが0のレインには魔法は通じない。ユリウスもそれを知っている。だから、今は純粋な体術と剣術の領域での戦いになっている。


その領域では、二人の差はほぼない。戦いながら、レインの頭の中に、昔の記憶が流れてきた。

それはいつも、こういう瞬間に来る。







四年前のことだ。


アレイグランド王国、経済都市アルヴィス。


その日の朝は、静かだった。城の一室の窓から、市街を見ていた。寝室のベッドで、八歳のルーベルトが眠っていた。


廊下に出た瞬間、地面が揺れた。違う、と思った。揺れたのではなかった。何かが、近づいてきていた。廊下の窓から市街の方角を見た瞬間、分かった。地平線の端まで、色んな魔物が埋め尽くしていた。


目の前にいたのは、数えられない数だった。部屋に戻り、ルーベルトを抱えた。必要なものをに詰めた。城の非常口から外に出た。


その瞬間、群れの先頭の兎が向きを変えた。


こちらに向かって、来た。


MP0の人間は魔物の目に映らない。魔物は人間の魔力を感知して標的を選ぶ。魔力がなければ、理論上は無視される。


一体の兎を除いて。


一体の兎が市街地に溢れる人間を無視して、レインだけを正確に捉えて向かってきた。


短剣を抜いた。飛んできた一匹を両断した。血が飛んだ。


その時だった。背後で、空気が引き裂かれるような悲鳴が上がった。


路地に逃げ込んでいた男が転んだ。濁流のように、魔物が向かって行った。数匹が集まった。数十匹になった。


男の呻き声は、すぐに断末魔の叫びへと変わり、そして、永遠に途絶えた。


魔物の虹色の波が、血と内臓の飛沫を撒き散らしながら引いていく。虹色の波が引いた後、石畳の上に残ったのは、白い骨だった。骨の表面には、肉片や組織がへばりつき、乾いた血の塊が点々とこびりついている。


肉が跡形もなかった。数秒の出来事だった。


市場の方向から悲鳴が複数上がった。荷馬車が横転し、その上に積まれていた野菜や果物が無造作に地面に散らばる。混乱に乗じて、人々の短い断末魔の叫びがいくつも上がった。


乗っていた人間の声が上がった。魔物の群れは、散り散りになった人間たちに襲いかかる。引いた後、また白い骨だけが残っていた。


屋根の上を走り続けながら、その光景が続いた。路地が骨で埋まっていく。石畳の上に、命の残骸が積み重なっていく。


それでも走った。


西に向かった。兎がまた襲い掛かって来た。切っても切っても兎が襲い掛かる。


ふと気づいた。

さっき切ったはずの個体が、また跳んできた。確かに両断した。胴体が分かれるのを見た。石畳に落ちるのを確認した。


それが、また来ていた。傷がなかった。完全に塞がっていた。


止まって確認する時間はなかった。でも、見えていた。切った直後に傷が無くなっているのを、視界の端に映っていた。肉が戻り、毛並みが整い、瞳に光が戻る。その速さは、数秒だった。


倒せない。その事実が、頭の中で静かに落ちてきた。切っても、また来る。何度切っても、また来る。

この兎を倒し切ることは、できない。


ルーベルトが泣きだした。


「・・・すまない」


走りながらそう言った。西の城壁が見えてきた。城壁を越えれば、街道に出られる。それしかなかった。

最後の屋根から城壁の上に飛び移った。越えた。飛び降りた。


街道に出た。

背後でアルヴィスの街から悲鳴が上がり続けていた。少しずつ、その声が減っていった。消えていく音を聞きながら、走り続けた。


振り返えれなかった。


あの後、ルーベルトを狙った魔物の群れに襲われたが、どうにかこうにかヘイトを私に向ける事が出来た。


だが、そのせいで私とルーベルトは離れ離れになってしまった。兎について調べると、禍兎と呼ばれる魔物が原因だったらしい。






「ルーベルトに会いに来たんだろう?」


ユリウスの声が、記憶を断ち切った。レインは今に戻った。


「答える必要はない」


「答えなくても分かるよ。君があの子を探してることは、前から知ってたから」


「知ってたなら、もっと早く教えてくれれば済んだじゃない?」


「それは仕事じゃないからね」


ユリウスが再び踏み込んだ。今度は低い姿勢から、足元を狙った。レインは跳んで外した。着地と同時に短剣を横に払った。ユリウスはそれを腕で弾いた。


鈍い衝撃音が響いた。互いに退いた。また距離が開いた。


あの日から四年が経っている。


あの後、ルーベルトを狙った魔物の群れに襲われ、私との暴走から四年後、ヴァルド・ハルウスがオルディナシスに宣戦布告した。それが今、この街で起きていることの始まりだ。


レインはその繋がりを、頭の中で確認していた。


あの日、逃げた。ルーベルトを抱えて逃げた。路地の骨を横目で見ながら、振り返らずに走った。


今日は別だ。


今日はここで退かない。


「今日、ここで戦う理由があるの」


レインが言った。


「あるよ」


「教えてくれれば、考える」


「観測の内容は教えられない。でも」


ユリウスが少し首を傾けた。


「今日が終われば、止める理由もなくなるし、明日以降、学園に入ることは止めないから」


「今日、中に入る必要がある」


「今日は駄目だ」


「なぜ?」


「今日ここで動くことが、観測の結果を変えるからだ。その観測の結果は、ルーベルト本人にとっても悪くない方向に向かう可能性がある」


レインは少しの間、ユリウスを見た。


嘘をついているかどうかは、判断が難しい。ユリウスは表情で嘘と本音を切り離すことができる人間だ。


「・・・確認する」


「どうぞ」


「明日、入れるなら、今日は退く。その言葉に嘘があれば、次に会った時に取り立てる」


「もちろんだよ」


ユリウスの笑顔が、少しだけ変わった。今度のそれは、作られたものではなく、少し本物に近い何かに見えた。


「君って、本当に不思議な人だよね」


「そうでもない」


「MP0で暗殺を生業にしていて、公爵家の夫人でもあり、観測王と一対一で渡り合って。普通じゃないよ」


「仕事だからめ」


レインは短剣を納めた。ユリウスはその動作を確認して、自分も構えを解いた。


「また明日」


「・・・一つだけ聞く」


「どうぞ」


「学園の中にいるルーベルトは、今、安全か」


ユリウスはその質問を聞いて、少しだけ間を置いた。


「今日のところは、安全だよ」


「今日のところ、とは?」


「明日以降のことは、今日の観測が終わらないと分からない」


「・・・分かった」


それ以上は言わなかった。


レインは背を向けた。ユリウスの視線が背中に当たっていた。観測している目だ。何かを記録しているような目だ。


振り返らなかった。


今日の結果は、何も変わっていない。でも、明日、学園に入れる。それだけは確かだ。


空は澄んでいた。

オルディナシスの王都の石畳が、夜の光を受けていた。


どこかで鐘が鳴った。

レインはその音を聞きながら、宿への道を歩き続けた。


頭の中に、骨が白く散らばった石畳の光景が、まだ残っていた。

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